絶対負けない!
第1話
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、おまけに女子からも男子からも人気なヒロイン(だと思われる)森田 美紅さん
同じく容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、
女子からも男子からも人気な王子(と思われる)新井 悠希くん
「はぁ〜」なんてため息をつきながらいつもと同じく窓からグラウンドを眺める。
私、杉井 梨花 趣味は読書、顔はブスでも可愛くもない。成績だってスポーツだってぜーんぶ普通。
「…い 、…ぎい 」「杉井ぃぃー!!!」
「はぃぃー!!」やばいこの先生怖いの忘れてた。「この問題解いてみろ!」私はつかつかと黒板まで歩いて行くと、白チョークを持った。「…できました。」というと私は、自分の席に戻った。「正解だ」先生が言うとみんなは何故か拍手した。まあいいや、と思い私は席に着き教科書を見た。教科書は、落書きだらけだ。キーンコーンカーンコーン、チャイムと共に隣のクラスの女子と男子が教室に入ってきた。まあ、毎日のように見ているから驚かないけど。なんてことを考えていた私はバカだった。なんと今日は、購買に幻のパンが売っているのだ。私はそれに気づくと一目散に教室を出て、廊下を暴走したかのように走った。廊下で「廊下は歩く」と書いてあるポスターがあったが、そんなの気にしない。人混みの中私は叫んだ。「パン!パン1つーーー」そんな私の叫び声は、みんなの声で打ち消された。いよいよ私の番だ。ワクワクしながらパンを受け取ろうとすると…。
購買のおばちゃんが「売り切れだよ」と言った。はい?私の聞き間違いかな?なんて考えながらもう一回聞き直すと、おばちゃんが「売り切れだよ!!」と言った。チーン。私は今日このパンのために生きてきたと言っても過言じゃない。なのに売り切れ…。手に入らないなんて…。私は泣きながら教室に向かうと、学校一のモテ男悠希くんにぶつかった。
「あ…。ごめんなさい」私はそう言うと再び教室に向かった。「杉井さん!」え?「あの、もし良かったらこのパン食べる?」私は悠希くんの手を見るとなんとあの幻のパンがあったのだ。「いいの?」私はそう言うと、悠希くんは静かに頷いた。その時見せた笑顔が頭から離れないのは何故だろう。