表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/19

2-2 謎の村人たち

 確かに、絵の中の人々の動きは、ブリューゲル独特の筆致で、疑いの入り込む余地がないほどにリアルに描き出されている。まさに、それぞれの動作の本質がそこに掬い上げられて定着させられている。だが、だからといってその意味するところは全く不明のままだ。のみならず、そういった、明らかに何かをしている連中の回りにいる、その何倍かの男や女は、その動作を見る限り、やはり何をしているのかよく分からない。

 仕方がないので、さらに近づいてその表情を読み取ろうとするとなると、さらになぞは深まっていく。まるで仮面のように、そいつらの顔はこわばったまま停止している。そこに、何がしかの意思、心の動きを読み取ることはほとんど不可能だ。

 一体、喧嘩や博打をしている連中も含めて、なぜこんな寒くて暗くて気が滅入りそうな広場に集まってきているのだろう。それぞれはお互いのことを知っているのかいないのか、いつごろから来て、どのくらいの時間そうしているのか、何か用事なり目的なりがあってそうしているのか、そもそもそんなことをしていて楽しいのか、楽しくはなくてもそうせざるを得ない何かがあるのか、そのうちにはそれぞれの家に帰っていくのか、そうすれば普通の生活らしきものに戻って行くのか、そんなことを思っていると、本当にわけが分からなくなる。


 その絵の前には、どのくらい立ち尽くしていたのだろう。

 薄暗い美術館の中で、その大きな画面に離れたり近付いたり、左下から丁寧に辿ってみたり真ん中から渦巻状に目で追い掛けてみたり、疲れて部屋の中央にあるソファに座り込んでそこから眺めたりして、何とかその絵を理解しようとした。

 だが、たとえ彼らが「何を」しているのかはおぼろげに見えてくることがあっても、「なぜ」、「何のために」そうしているかは見当もつかなかった。そんなことをしているうちに疲労を感じてきて、結局なにも分からないままその美術館を出てしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ