その布
「…う、うわぁぁぁん!」
我慢していたのかだんまりと静かにしていたシャイナの号泣にセヴィルは驚き焦った。
「どうした?!何で泣き出すんだよ」
「グス…だって、ここに来るまでセヴィルに殴られる覚悟で来たのに……感謝されるなんて夢にも思ってなかったし……そんな急にありがとうって言われても……困るよ」
「……礼を言ったのに困られるなんて初めてだよ」
それでもグスグスと涙を拭くシャイナがたまらなく可愛くて愛しくて綺麗に艶めく白髪を「もう泣くな」と言いながら優しく撫でてやった。
その日はセヴィルの部屋へ泊めてもらう事にした。
用も済み帰ろうとしたら…
「街の夜は危険だ。危ないから外に出るな」
と止められてしまった。
とりあえずシャワーを借り1日の汚れを落とした。
浴室もよく掃除しているのだろう。どこもかしこもピカピカでカビもない。シャンプーやリンスのボトルまで磨かれていた。
「…こんなに磨いてもすぐ汚れちゃうのに」
典型的な掃除が出来ない女の意見だ。
濡れた髪を拭きながら貸してくれた服を着てみる。
「わぁ、おっきい!下は着なくてもいっか」
女性にしては背が高いシャイナであったが、それでも上着を着ればちょっと丈の短いワンピースと思えば十分だった。
「お待たせー!」
「暖まったか…!?ゴフッ!!」
浴室から出てきたシャイナの姿に飲んでいたワインを噴き出した。
「?どうしたの?」
「ゴホッ!ゴホッ!おま…ゴホッ!何で下着てないんだよ!」
「え?だって、これだけでも隠れてるからいいかなーっと思って。…変?」
「変とかそういう問題じゃねぇよ」
白く長い脚も丸みを帯びた太腿も……この女は自分が女でセヴィルが男である事を理解していないのだ。
「下を穿け」
「えー、嫌だ。邪魔だし暑いし」
「いいから穿きなさい!」
渋々ズボンを穿く姿は思春期の子供のようだ。
「これで満足?」
「うん、それでいい」
セヴィルがシャワーを浴びている間、部屋の中をうろつき回った。法律書や軍の原則書、地形書、隣国の言語書など見た事もない難しい本が沢山あった。
「ふーん…軍界の重役さんって大変ねぇ」
ピラピラと軽く目を通し本を閉じた。
「………ん?」
ふと部屋の隅のテーブルに置かれた赤い布に目が留まった。
近づき手に取ると微かに生臭い匂いが漂ってきた。
「何これ…」




