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Un re di demone  作者: クドウ
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孤児院から連れて来た2人の少年は取り敢えず門番にした。


肉と魚が食いたいと思っていた方・シバにカナト流の料理の仕方を教えた。

シバ自身も自分で作れば自分の好きなものが食べられるとあって喜んでいる。

もう一人の少年・アズマには馬の世話を任せてある。

馬はまだ一頭しかいないが、謁見に来るものがいれば預かるだろうし、ヲウルやサイが買い出しに出る際に使うのだ。

サイは小間使いのままなのだが、肩書きとしては王付きの近衛となる。

ヲウルがシバに買い出しを頼むのは危険があるというので、買い出しはサイの仕事だ。

他に草取りや掃除といった雑用はすべてサイに頼んである。

謁見も何もない今は、サイに仕事はない。

元娼婦のナカは侍女である。

侍女服に身を包み、カナトの身の回りのことをする。

サイと若干被るのだが、カナトがナカに求めているのは見栄えと夜伽なので割とどうでも良い。

ヲウルは宰相なのだが現時点で政も何もないので、経理や総務を頼んでいる。これは徐々にナカとサイにシフトさせるため、2人はヲウルから教育を受けている。

少年2人にも少しずつ勉強を教えている。


他にもカナトは全員に護身術を教え、宝物庫から漁った値打ものの武器や防具を与えた。

カナトに敵は多い。

用心に越したことはないとの判断である。





いよいよ納税の時期がやって来た。

領土を持つ貴族が王に謁見し、税を納める。

税の内容は基本的に金だ。

偶に献上品を持ってくる者もいるらしい。

門で馬車を預け、ヲウルが一貴族ずつ王座の間へ通す。

そこで納税し、ヲウルはそこで金額を確認。

献上品はカナトが調べ、サイが言われたとおりに部屋へ運ぶ。

カナトの横には身の丈よりも大きな死神の鎌があるわけで、貴族たちは皆一様に青ざめている。


カナトが王になり初めての謁見とあってか、献上品が多い。

要するに殺されないためにご機嫌取りをしようというのである。

貰えるものは何でも貰う主義のカナトは内心うはうはだ。

心の内など読んでしまえばわかるのだし、何の問題もない。

毒を潜ませるやつがいれば殺せば良いだけなのだ。

そんな怖いもの知らずはいないようだが。


献上品は馬や宝石、武器防具、ワインなど様々だ。

正直それよりも使用人が欲しいので、それとなく漏らしてみたりした。

効果はあるかわからないが、次回に乞うご期待。


納税は日が暮れるまでというのが暗黙の了解らしい。

日も暮れたのでそろそろ終了だ。


「2人ほど、来ていないようですね」


「そういう場合はどうするんだ?」


「一先ず遣いをやるのですが・・・正直人手不足です。文だけ遣しましょう」


「頼む」


「文の返事次第ではありますが、大抵罰則として重税ですね。滅多にないことですが途中で事故にあったりしていると遅れることもありますから」


「わかった。取り敢えず返事を待てば良いんだな」




◇◇




税金は使用人への給金と生活費、城の維持費に使われる。

使用人数が少ないこともあり、出費は少ない。

カナトが調度品や美術品に興味がないこともある。

そもそも家具は買うものじゃない、作るもの、がカナトの持論。

前世はそれが当り前の平民、前々世では趣味がDIYである。

書類の仕分けがしやすいように書類専用の棚も執務室に作ったくらいである。

魔法の存在もあって以前より各段に作業がやり易くなった。

鋸要らず。その分やりがいは減ってしまったのだが。


他には国を良くするために使うはずの税金なのだが、如何せん使い道がない。

前王も大神官の要請で各国の要人との会見以外、仕事らしい仕事はしてなかったようだ。

嘆願書の処理やサインなど、ほんの数時間で終わってしまうし、やることもない。

当座は使用人の教育という地盤固めに労力を注ぐ。いずれは騎士団や教育機関の設立を考えている。


両方一気に設立は難しい。まずは騎士団を作ろう。

騎士団があれば門番や近衛をローテーションで回せるし、急な魔物討伐や災害にも対応出来る。

現在警察のような機関は神兵が担っているが、自衛隊や消防といった機関は存在せず、ギルドに依頼を出して対応するしかないのだ。


取り敢えず名ばかりの騎士団を設立。

団長は不在。副団長も不在。

小隊長も何もなく、サイ・シバ・アズマが騎士団の一員。

3人とヲウル、ナカには、腕の良い人間を見かけたらスカウトするように言ってある。

ただ悪名高いカナトの下で働くことになるので中々難しいだろう。


ヲウルに頼みギルドにも騎士団員募集を知らせてもらう。

噂が広まっている今は難しくても、そのうち少しずつでも集まるだろう。

特に金が必要な人間はどこにでもいるものだ。


「カナト様、夕食のお時間です」


「あぁ、すぐ行く」


使用人の数も少ないので、6人全員で食事をしている。

ヲウルは使用人と王が同じテーブルで食事を取るなどと、と苦い顔をしていたがそこは捻じ伏せた。

この日の夕食はサラダに焼き魚のチャイン掛け、すまし汁と白米といった和食風だ。

カナトの知る限り醤油や味噌といった調味料はなく、これが精一杯の和食なのである。

元々ガデスは洋食の国なので、シバは頑張ってくれていると思う。

3日に1度は和食風にしてくれる。


「そういえばカナト様、文が届いております」


アズマから文を受け取る。

来ていなかった貴族の一人のようだ。

当主が急に亡くなり、こちらに来るのが難しいという。


「ヲウル、こういう場合はどうすれば良い?」


「重税、取り立てに行くってところでしょうが、人がいません。来月まとめて払ってもらいましょう。文を出しておきます」


「頼む」


「しかし、あのモーガン伯爵が亡くなったとは・・・」


「・・・モーガン伯爵?」


それは聞き覚えのある名前だった。

文をもう一度確認する。

ヨハリア・モーガン伯爵家の刻印の押された封書。


「エン・ヨハリア・モーガン伯爵が亡くなった?」


「えぇ、そうですが」


「じーさん、ヨハリアに行ってくる」


「はぁ!?」


「ヨハリアに行かないと。数日俺がいなくても支障ないだろ。ちょっと行って来る」


「何を言ってるんですか!!」


「伯爵夫人は俺の妹だ。伯爵が亡くなったとあれば権力者の味方はおるまい。迫害されてからでは遅いんだ」


「妹・・・?そんなに若くありませんよ、伯爵夫人はとうに20を超えています」


「前世の妹なんだ、ニイナ・フリュイは」








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