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Un re di demone  作者: クドウ
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大神殿の人間は、半数が死んだ。

新しい王である、カナト・シューベルト(と名乗っているが、恐らくは偽名)に殺された。

各神殿から数人ずつ、神学校からも数人、増やすには増やした。

だがしかし、不慣れな場所で、経験も少なく、仕事も3割ほど増えているので追いつかないのが現状だ。

どれもこれもカナト・シューベルトのせいである。

殺したのもカナト・シューベルトだが、仕事を増やしているのもカナト・シューベルト。

王宮には王である本人と、数日前から働きだした少年が一人のみ。

本来なら王が処理していた筈の書類はすべて大神官宛に回って来ている。

迷惑過ぎる。

しかもその上ッ・・・!





『”王宮で働いた経験のある者、責任感があり従順な者、仕事の出来そうな者”


以上の条件を兼ね揃えた候補者を連れて来い。

失敗しても文句は言わん、とりあえず早急に。』



と、書かれた文を受け取り、大神官は身悶えた。


「無茶だっ・・・!」


そもそも働き手になりそうなものなどいるものか!

あやつは自分の仕出かしたことを分かっていない。


神国は神教によって、儀式によって成り立っていた国。

それをぶち壊した王に仕えようなどと、遣いの少年くらいだろう。

この遣いの少年、何が嬉しいのか始終にこにこ馬鹿みたいに笑っているが。


「何が可笑しい」


「えへへ、仕事らしい仕事って初めてなんすよー」


文を届けることがか。


サイがここ数日でやって来たことと言えば、茶を淹れる、食事を城下で買ってくる、草むしりくらいだ。

カナトは書類整理をしているのだが、サイは手伝わせてもらえない。

たぶん最初に書類の束を崩してしまったからだ。



「・・・とにかく、人を見つけるには時間が掛かる。見つかり次第、連絡する」


「わっかりましたー!」






王宮を頂いてからまず、隈なく散策した。

趣味に合わない調度品は一室に集めた。後日売る。結構良い値になると思われる。


3階にある王の執務室はそのまま使う。隣の仮眠室もどきをそのまま寝室にしてしまう。

2階に謁見の間を兼ねた王座があり、王族用の食堂もある。

1階には厨房や食堂、使用人や騎士の使う部屋や施設。

地下にワインセラー、宝物庫、牢屋。

こちらは早々に使えそうだとカナトは思う

別館は二つ、騎士の宿舎と後宮があった。

こちらは当分使わないだろう。


賊などいないだろうが、万一を考えてすべての鍵はカナトが持ち歩く。

至る所に秘密通路や魔法、罠も仕掛けておこう。

サイが引っ掛かりそうなので、そこはどうにか対処しなければならないが。


サイには本宮一階の使用人の部屋を与えた。

生家では自分一人の部屋はなかったそうで、大喜びだった。

カナトも前世では自分の部屋どころか子供部屋もなかったので、この世界ではそれが普通なのかもしれない。


散策が終われば書類整理だ。

王の印は大神官の印で代用出来るので、大神官にすべて押しつけている。

その他の書類を仕分けしていく。

この世界にはファイルや付箋、インデックスなどが存在しないので、紙で適当に代用品を作り、仕分けする。


書類のほとんどは所謂嘆願書というやつだ。

日付はすべてカナトが就任する前のものだ。

目を通し、急を要するものや重要だと思うものに対して対策を行う。

ここにあるのはすべて領主が無視しているものなので、本当に緊急のものは少ない。

ただ領主がボンクラだとこちらにすべて回って来る。

念の為すべてに目を通し、はねたものはすべて地域、日付別に穴を開け、紐で閉じていく。


新しい日付の嘆願書は少ない。

儀式を再開しろという内容しか見当たらないのだ。

すべて匿名希望、根性ないな。


嘆願書が終われば既存の書類の仕分け。

ほとんどがどうでも良い書類だが、中には貴族一覧や税の内訳もあり、重要なものだけ手の届く場所に置く。

貴族一覧と貴族からの税一覧は頭に叩き込む。

毎月初めに先月分の税が納められる。

その税で王族は生活し、家臣に給金を与え、必要とあらば国を良くするために使う。

ガデスは特に裕福でも貧困でもない。

神教の金はすべて神殿のものなので、城には関係がないところだ。

今月の税収はカナトの就任前に終わっているので次は来月になる。




◇◇




数日後、1人見つかったと知らせが入った。

この時点で書類の整理は終了。

カナトは宝物庫の整理整頓や仕掛け、サイは草むしりという日々を送っているところだった。



「ヲウル・ライスと申す」


やって来たのは昔この城で宰相をしていたという初老の男だった。


「カナト・シューベルトだ」


白髪混じりの長い鬚、頭の毛はない。


「何故此処に来た?」


「大神官に泣き付かれたんじゃ、1人もいなかったら殺されるかも、と」


ヲウルに怯えはない。

噂を信じていないのか、肝が据わっているのか。


「そんなんで殺すかよ」


「ふん、今まで何人殺した。そんなやつの言葉なぞ信じられるか」


「言うねぇ。自分が殺されるかもとは思わないのか?」


「殺したいなら殺せば良かろう。この通り老いぼれじゃ、誰も悲しまん」


覚悟と自信。

言葉に嘘はないが、魔力もそこそこあるので腕に自信もあるのだろう。

カナトの敵ではないが。


「良いだろう、宰相として存分に腕を揮え。サイ、部屋に案内してやれ」


「あいさー!」



カナト、宰相ゲット。








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