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日々は忙しなく過ぎる。
祭りもいよいよ目前となり、プールも完成間近。
水着や魔玩具も大量に搬入された。
麻のような素材の一見普通の下着に見えるが、どうも魔道具の一種らしい。
勝手に外れない、透けない、溺れない、とかなりの凝りようだ。
女性用はセパレートタイプ一択、デザインはシンプル。
カラーバリエーションは五色程度。
男性用もシンプルなバミューダタイプでこれもまた五色程度だ。
納期が近すぎてあまり凝ったデザインは難しかったようである。
まぁ男のブーメランなんぞみたくないので構わない。
祭り直前の納税が終わると、一気に町も活気付く。
貴族は納税が終わりそのまま滞在することが多く、それに合わせ人が動く。
他国からも人が流れて来始めた。
宿は大盛況である。
ただし屋台はまだ出ていない。
そのため飲食店も繁盛し、町民は大喜びだ。
貴族でも大神殿のすぐ近くとあって大柄な者も特になく、暴れ回るような粗暴な者もいない。
酒が入り始めるとそこそこ喧嘩が起きたりはするのだが、神官や神兵の見回りで抑えられる程度のものだ。
元々宗教の祭りだからか、この点大神殿関係者が強い。
最後の調整として、カナトは執務室で書類と向き合っている。
剣術大会の参加者リストを見ながら、トーナメント表を作成するのだ。
序盤に出来るだけ同じ国同士が当たらないようにし、腕が良いと評判の者も出来るだけばらけるようにする。
優勝候補はダイ一押しのイスフェリアのオウザイアス・モーズィズ・リフレクトだ。
参加者の情報は出来るだけ集めているが、情報が出てこなかった者や当日参加者も募るので、あくまでもダイの目から見て、である。
「カナト様、会場の準備は順調のようです!」
「それからプールの最終確認の要請が来ております」
基本的に剣術大会はサイ、プールはナカに管理してもらっている。
「最終確認か……」
「えぇ。せっかくですし、ちょっと遊んでみたいです」
「そうだな。それも良いか」
表向きは出来上がったプールの試運転だ。
結局希望者を数名連れての試運転となった。
ドーム内に入ってすぐ、受付と男女別の更衣室がある。
更衣室はカーテンで仕切りを作っており、シャワーも完備。
ロッカーは本人しか開けられないように魔術式の鍵を設置した。
カナトは更衣室で水着に着替えた後、ロッカーやシャワーを使ってみた。
元々馴染みのあるカナトはともかく、サイはまったくの初めてで戸惑っていた。
当日は係員を置いた方が良いかもしれない。
更衣室を抜ければ開けた場所があり、屋台の骨組みがある。
休憩用のテーブルとイス、浮き輪や魔玩具の貸し出しもここだ。
その先に流れがあるドーナツ状のプールや、海に見立てた波のあるプール、子供用の浅いプールやスライダーなどがある。
魔道具がまだ追いついていないので、精霊の協力により稼働となる。
「すごい、広いのね! カナト、早く!」
ニイナがはしゃぎ、カナトの腕を取る。
柔らかい胸の感触。
しかしニイナは妹だ。美味しいシチュエーションなのに美味しくない。
ガデスは夏でも涼しいからか、泳ぐことを娯楽としていない。
泳ぐのは魚介を採る時ぐらいなのだ。
そのため泳ぐこと自体が初めてのサイや、泳げないナカなどもいる。
浮き輪がとても役に立ちそうだ。
泳げなくても浮き輪を使い波や流れに乗るだけで楽しめるだろう。
ニイナは泳げるが、浮き輪を使って流れに乗っている。
「ふふ……カナトとこうしていられるなんて、夢みたい」
「ニイナ……」
「これからずっと一緒よね? もういなくならないわよね?」
「あぁ、約束する」
ニイナの濡れた髪を撫で、額に口付ける。
国を追われようが、反乱が起きようが、暗殺者が来ようが、ニイナは手放さない。
ニイナを傷付けるものは許さない。
「約束よ」
ニイナは嬉しそうに目を細めた。




