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Un re di demone  作者: クドウ
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神殿に任せたおかげか、人数もそこそこ集まった。

まだ人手が足りないが、期間に余裕がないのですぐに作業に入る。

約二ヶ月。

この間にプールを完成させ、屋台の準備や剣術大会の準備も進めなくてはならない。

物資の調達は基本的に屋台出店者個人なので、カナトの手配はとプール内と闘技場内の屋台だ。

町民は基本的に元々の店舗の前、地方の人間は空いているスペースに申し込み順に場所を選ばせている。

皆良い場所を取りたいので申し込みは早い。

まだスペースが空いているので随時募集中である。


剣術大会の参加者はまだ申し込みを切っていないが、それなりの人数は確保できた。

自国からは騎士団が強制参加、後は自由だ。

例外として騎士団兼任であるサイやナカは参加せず、運営に回る。


「さて、プールの様子でも見に行くか」


まだ作業が始まったばかりで、あまり進んでいない。

地面に杭を打ち込み印をつけ、土台を作り、石材を積み上げていく。

カナトには詳しいことがわからないが、本職の人間に任せているので大丈夫だろう。

ヲウルの旧友でもあるらしく、信頼が置ける。


「王」


作業中の若い男に声を掛けられた。

カナトが声を掛けられるは稀。

機嫌を損ねたくないからか、自主的に話しかけようとする人間はいない。


「お初にお目に掛かりマス」


漆黒の目に金色がかかり、珍しい色彩。

長い黒髪を一つに束ねている。

貴族以外で長い髪は珍しい。

ナカが好きそうな顔立ちをしている。


「お会いしたかっタ」


ゆっくりと目を細め、唇が弧を描く。


こいつ、気持ち悪い。

根拠はないが、何か嫌な感じがする。


生理的嫌悪だろうか。

見慣れないせいか、長髪の男が好きでないからか。


警戒心が働くと、半ば反射的に精神を覗く。

深くではなく、こちらに害意があるかどうか、その程度だ。


「……お前は何だ」


読めなかった。

理由はわからないが、何も感じ取れない。

こんなことは今までなかった。


「何だなんて酷いデスネ」


かくりと首を傾げ、酷いといいながらも笑顔のまま。


「ずっと貴方を待っていたのに、我らの王ヨ」






作業にどれだけ追われていても、納税を欠く月はない。

人手を使いたくないので、カナトとヲウルだけでさくさくと済ませる。

貴族たちも心得ているようで無駄話はほとんどなく、軽い足取りで立ち去っていく。

民と変わらず浮かれているようだ。

良いことである。



納税を1日で済ませ、騎士団の訓練を見学する。

何故かニイナが混じっているのだが。

真剣そのもの、むしろ鬼気迫っているような気がしたことは見なかったことにしてと。

さすがにダイには勝てないようで、悔しそうだ。

自国の優勝候補はダイであるが、他国の情報はあまりない。

優勝とまではいかなくても、それなりの成績であってほしいものだ。


「優勝はちょっと難しいかもしれないですね」


「何だ。自信がないのか?」


「イスフェリアの騎士団のやつなんですが、相性の悪いヤツが参加するみたいで」


ダイと相性が悪いといえば、技術派だろうな。

少々単純なところがあるのでフェイクの類に弱いことは見てわかる。


「10回に1回勝てれば良い方だったもんで」


元々それで、今は自身より強い人間がいないとなれば確かに勝算は低いだろう。


「魔術なしって言ってもなぁ」


ダイがぼやく。

ああそうか、魔法騎士団か何かだっけ。

よく覚えてないが。



訓練を見学したあとは、ローレル(というより赤ん坊)の様子を見に行く。


「ローレル、調子はどうだ?」


「ふふ、順調ですわ」


愛しげに腹部を撫でる。

膨らみが目立ち始めている。

腹の中に生命体が入っているなんて不思議だと思う。

自分だったら気持ち悪いとすら感じるかもしれない。

女、というより母親ってすごいな。


「女の子だと良いな」


嫁にやるのは嫌だが、女の子の方がかわいい気がする。

いや男でもかわいいだろうが、それはそれ。


「楽しみだ」


ローレルの腹を撫でる。

早く出て来い、そう思いながら。






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