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Un re di demone  作者: クドウ
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闘技場は城下町から石畳で繋ぐ。

祭りの間はその通り沿いに屋台を並べるのだ。

魔物除けも施さなくてはならない。


闘技場は蟻地獄状に作った。

全体的に掘り下げて作り、観客席から闘技場を見下ろす形になる。

元の世界で一般的な造りだ。


専門的な知識はないが、魔法という裏ワザがあるので比較的楽に出来る。

例え造りが粗末でも強力な固定魔法をかければ良いだけだ。



ニイナの作った弁当を食べながら一息吐く。

三角形になりそこねたおにぎりはおかかと鮭。

おかずは巻き損ねた玉子焼きと肉じゃがだ。


「肉じゃがは旨いな」


玉子焼きもおにぎりも、味は普通なので問題ない。

食後の麦茶を飲んで再び作業に取り掛かる。

夏は麦茶だと思う。

日本でいうとまだ4月あたりだが、こうも日差しが強いと暑く感じる。



この調子でいけば近日中に骨組みは終わりそうだ。

仕上げもまだ2ヶ月以上あるので充分間に合う。


闘技場には控室やシャワールームも作る予定だ。

ついでにトレーニングルームも作り、合宿も出来るようにしてしまおう。

今は王宮で十分間に合っているが、将来人数が増えた時に使えると便利である。

増えるかどうかは不明だが。





さてもうひとつ、進めておきたいものがある。

闘技場の客層は、成人男性がメインだろう。

独身であるならば良いのだが、家族を持った父親だとすると、配偶者やその子供が暇になる。

そこで、女子供に受けそうなものを併設したい。

パチンコ屋の漫画本や競馬場の公園などといった役割を果たすものが欲しいのだ。



カナトのせいではあるのだが、神教の力が弱まりつつあり、国が弱体化する恐れがある。

一番の打撃は経済だ。

国の収入の低下が予想されている。

そのためにワインや珈琲豆の輸出を進めているが、それだけでは弱い。

大神殿以外に集客が見込めるものが欲しいのだ。



すぐに思いつくものといえばアスレチック公園やテーマパークの類だが、カナトはそれらにほとんど行ったことがない。


「次回の議題にするか……」


この世界ルード・ミルの娯楽は少ない。

他国ではそれなりに発展しているところもあるが、さすがにテーマパークまではいっていないだろう。

一番進んでいるのは恐らくイスフェリアだ。

詳しく知らないが、リリスフィアにも現代人がいるようだから発展しているかもしれない。


娯楽がなければなんでも受けそうな気もするが、実績がないので傾向もわからない。


「まぁ、やってみるしかないか」









辺りが暗くなって来たので、本日の作業は終了。

明日は会議があるので作業が出来ない。


途中城下町でローレル用にお土産を買い、城へ戻る。

ローレル用というよりも子供用だ。

まだ生まれていないのに、ローレルの部屋はベビー用品で溢れている。


「また……ですか」


ローレルが呆れたように呟く。


「これはまだ持ってないだろ?」


カナトが今回買って来たのはぬいぐるみだ。

くたくたとした感触の柔らかいものだ。


「そういう問題では……」


「ようやくぬいぐるみの入荷が始まったしな」


カナトが最近常連と化している雑貨屋は、品揃えが豊富になったと評判になりつつある。

南の大陸の4カ国で一番大きい商会と契約し、委託販売を始めたのだ。

何故委託販売なのか詳しいことは聞いていないが、双方の利害の一致、らしい。

商会と直接取引きも出来るのだが、店で取り扱っているものは出来るだけ経由して購入することにしている。


「かわいらしいですけど……まだ半年は生まれないんですよ?」


ローレルが困惑気味に首を傾げる。


「腐るものでもないし、いいだろ別に」


部屋はベビー用品で溢れ返っているが、さすがに食品は置いていない。


「部屋が手狭になればベビー用品を置く部屋を作る」


「……買うのを自重すればよろしいのでは」


「それは無理だ」


ベビー用品を買うのは実は結構楽しいのだ。

自分の子供ではないが、子煩悩になりそうな気がする。

性別が判ったらすぐに服を買い漁りたい。

しかしこの国の技術では性別が判るのは生まれてからだ。

残念すぎる。


「そんなに子供がお好きなら、生んで貰えば良いのでは」


「そうだな……」


欲しいという気持ちがないではないが、精神年齢はともかく、見た目は成人していない。

まだ早いのではと思う。

その前に相手がいない。

仮にも王という立場なので、政略結婚になるのだろう。

しかしその辺りの感覚は前々世のままなので、出来れば恋愛結婚が良い。


「……今は無理だな」


「そうなのですか? 彼女は欲しそうに見えますが」


「ん?」


彼女?


「誰のことだ?」


「え?」


きょとん、とカナトを見上げる。


「ニイナ様ですわ。……えぇと、お二人はそういうご関係では?」


「違う」


ニイナは妹である。

現世で血は繋がっていないとはいえ、記憶がある以上妹としか思えない。

世界で何よりも大切だが、それとこれとは別である。


「そうなのですか……てっきり……ご挨拶に見えられたものですから」


「ご挨拶……?」


「えぇ、カナト様がお世話になってます、と」


「………………」


うん、考えないようにしよう。






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