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Un re di demone  作者: クドウ
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17

「そういうわけで、神殿から神官を借りることにした」


「・・・・・は?」


翌朝、食堂にて。

シバの作ったしおむすびと魚介スープを食しながらの一言である。


「妊婦がいたら何かあった時に困るだろ?回復魔法の得意な神官が当番制で城に駐在する」


「またそういう勝手なことを・・・!」


「いいだろ、別に。あ、普段は騎士団の面倒見させておくか。ついでにナカに魔法教えてさせよう」


「だから・・・!というかいつの間に!!」


「昨日、買い物行った帰りにちょっと寄っただけだ」


「また大神官に無理を言いましたな・・・」


怒っているのか、呆れているのか。

ヲウルはぐったりと脱力してしまった。

おっと、老体は労らねば。


「今日から来るぞ。回復してもらうか?」


「誰のせいだとッ!」








午後は後宮へ行くことにした。

勿論ローレルの部屋である。


「調子はどうだ?」


「変わりありませんわ。お気遣いありがとうございます、陛下。」


「”陛下”は止めてくれ。苦手なんだ」


様付けも王と呼ばれるのも平気だが、陛下だけはどうも馴染まない。

それもあって王宮内の人間のほとんどはカナトのことをカナト様と呼んでいる。


「カナトで良い」


「・・・はい、カナト様」


「そうそう、今日はこれを持って来た」


「何ですか・・・、ベッド?」


「ベビーベッドだ。籠が主流みたいだけど一応な」


ベビーベッドが売ってなかったので、今日の午前は制作に打ち込んだ。

上から吊るすがらがらしたやつはまだ製作途中なので、とりあえずベッドだけ持ち込んだのだ。


「布団とか枕とかも揃えないとな。他は何がいるんだ?書き出しておいてくれ、買ってくる」


「え・・・へい、カナト様が、ですか?」


「そうだが。・・・もしかして自分で見たいのか?歩くと疲れないか?商人を呼ぶか?」


「いえ、疲れる距離でもないですが・・・」


「そうだな、商人を呼ぼうか。リリスフィアの商人が良いかな」


「リリスフィア、ですか」


「あぁ。ファッションの国だとか言ってたからな。かわいいベビー服が欲しいしな。知ってるか?」


「えぇ、勿論。私の持っているドレスの半分はリリスフィアの職人のものですわ」


「そうか。有名なのだな」


カナトは別段衣服に拘りはない。

それに平民の間ではドレスの話など出ないから、前世でも聞いた覚えはなかった。


「ではリリスフィアの商人が良いか。日時が決まったら知らせよう」


「・・・ありがとうございます」




◇◇



カナトは早速商人を手配すべく、ヲウルがいるであろう執務室へ向かった。

執務室にはヲウルとナカが机に齧りついていた。

ヲウルは当番制神官の書類化だろう。


「じーさん」


「何ですか」


「リリスフィアの商人を手配してくれ」


「リリスフィア、ですか?」


「あぁ。ベビー服が欲しい」


「・・・・・は、ベビー服、ですか」


「城下町のベビー服はかわいくない。かわいいベビー服を揃えてくるように手配してくれ」


「カナト様、意外と子供がお好きなんですね」


ナカが書きものをしていた手を止めて、呟く。


「いや?別に好きじゃないが」


「ベビーベッドをわざわざ作ったり、ベビー服を他国から取り寄せたりするくせに?」


首を傾げて訊ねてくるナカに違和感を覚える。


「・・・妬いているのか?」


「・・・違います」


「なんだ。お前も子供産んでみるか?」


「違いますってば」


「はいはい。今日の夜部屋に来い。・・・じゃあじーさん、後は頼んだ」


「畏まりました。ベビー服ですね」


「あ、ついでにイスフェリアの商人も呼べるか?ダイが言っていたんだが、珍しい調味料があるみたいなんでな」


イスフェリアで暮らしていたダイによると、城下町の食堂で醤油と味噌を使った料理が出されていたという。

米はあるが醤油も味噌も随分御無沙汰だ。

無かったから我慢していたが、あると知ったら無性に食べたくなる。

今日の朝食もしおむすびに味噌汁だったらなお良かった。

醤油があるなら肉じゃがとか刺身とか、むしろ目玉焼きでも良いくらいだ。


「畏まりました。同じ大陸の国ですからな、1人の商人でも取り扱いがあるでしょう」


「頼んだ」


よし、それじゃあ次は騎士団の様子でも見に行くか。

まだカナトには仕事がほとんどない。要するに暇なのだ。



◇◇◇



「よぉ」


どうやら丁度、休憩中のようだ。

芝生の上に座り込み、水分補給の真っ最中である。


「おい、カナト様!団長鬼過ぎるんだけど!」


「まぁ頑張れ?」


「がんばれねーよ!いたわれよ!」


「労れねぇ・・・マッサージ師でも呼ぶか?」


「まっさーじし?なにそれ?」


「あぁ、こっちにはいないのか」


疲れを取るなら温泉かマッサージだろ。


「温泉」


「は?」


「温泉か。そうだな、温泉だな。うん、掘ろう」


掘ればどこでも出てくるってわけでもない。

火山があるわけでもないので、おそらく出ないだろう。

しょうがない、大浴場で我慢だ。

ジャグジーとか露天とかサウナとか色々作れば良くないか?

女湯は後宮に作って、男湯は騎士宿舎に作ろう。


「早速工事だな。じゃあ残りも頑張れよ!」


くせ毛が何か言ってたが、聞こえない。

今ある風呂は大人数では入れないし、良い考えだ。

休日前は日本酒もサービス、普段は瓶牛乳か?


勝手に作るとヲウルがまた煩いからな、今回は事前に相談しよう。

で、反対されたら強行突破だな。


思い立って、即、行動。

数日後、大浴場が完成する。

王になってから一番働いたのはこの件なのではないだろうか・・・。










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