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Un re di demone  作者: クドウ
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14

カナト2回目の納税一日目は、結論からいうと期待通りだった。

各領地から人手不足と耳に入りまして・・・と人材が遣されたのである。

ほとんどが平民、元々貴族の屋敷で下男や下女をしていた者。

中には貴族の三男なども混じっている。

先日の件で皆殺しにしなかったこと、民を大神殿に避難させておいたこと、買った奴隷がすべて生きていることで無暗矢鱈に殺されることはないと判断したのでしょう、というのはヲウルの見解だ。


貴族の三男は剣を扱えるので騎士団に、下男下女は男は庭師や料理人、馬番に、女は掃除や洗濯ということでメイドにした。

元々いたメイドは剣と魔法を使える2人は騎士団に専念、頭の回転が速そうな者は文官、残りは侍女や後宮専門のメイドに配置換えだ。

騎士団の人数は10人ちょっととまだ少ないが、それも少しずつ増えるだろう。

順調だ。



2日目。


「お初にお目にかかります。ケン・ヨハリア・モーガンと申します」


「表をあげろ」


ケン・ヨハリア・モーガン。

ニイナの義理の息子である。

エン・ヨハリア・モーガンの死別した前妻との長男。

30前半。ニイナよりも年上である。


「問題ありません」


ヲウルがヨハリア領の納税をチェックし終えたらしい。


「そうか。・・・どうだ?領地経営は問題ないか?」


「問題ありません。お心遣い、ありがとうございます」

・・・成り上がりの王に心配されるとは・・・この俺も落ちたものだ。


「・・・エン殿の御子は貴殿だけか?」


「いえ、弟と妹がおりますが。・・・父と、面識が?」


「ヨハリアは俺の出身地と近いからな。・・・惜しい人物を亡くしたものだ」


エン・ヨハリア・モーガンが生きていればニイナの身は安泰だったのだが。


「そうですか・・・どちらのご出身なのですか?」

・・・帰ったらすぐ身元を確認しなくては。


「もう捨てた家だからな。多くは語るまい。下がって良いぞ」


「はっ」

・・・ちっ。




「サイ」


「はいよー」


「もう一回、ヨハリアに飛んでくれ」


「あいさー!」








謁見の申込があったのは納税がすべて終わってからだった。


「珍しいな」


「騎士志願のようです」


「お。良いねぇ」


半ば忘れていたが、騎士募集は随時行っている。

最もこれが初の志願者であるが。



「御目通し、ありがとうございます。ダイ・ベイカーと申します」


「聞かない名だな」


「・・・平民の出でございます。身分は問わない、と・・・」


「腕があるなら平民でも構わん。志願理由は?」


「・・・私は、9歳まで神国で育ちました。生贄にされる前に、他国の貴族に腕を買われ国を出ました。この度、侯爵様がお亡くなりになったため、名を返上しました。そして儀式を失くしてくださった王に仕えるため、王宮に参りました」


嘘はないようである。

イスフェリアの魔法騎士団に所属、侯爵の援助があったと言えど平民出で、20代後半という若さで小隊長まで務めている。

騎士団ではなく魔法騎士団というのがさらに良いな。


「採用!」


「は?」


「王!簡単に決めすぎですぞ!」


「いいじゃねぇか。お前、騎士団長な」


「はぁ!?」


「王!!」


「魔法も剣もどっちも使えるんだぞ。しかも腕も一番たつし、年齢的にも上だし。決まりだろ」


「王~~~~!!」


「うるせぇなぁ。ナカ、部屋に案内と、待遇の調整も頼む」


「畏まりました」






◇◇





「ダイ・ベイカー団長。私はナカと申します。騎士団の魔法部門に所属しております。普段はカナト様の侍女・文官も兼任しております。以後お見知り置きを」


「あ、あぁ・・・ダイ・ベイカーだ。よろしく頼む」


「それではお部屋に案内致します」


騒がしい王座の間を出て、騎士団専用の宿舎へ移動する。

騎士団発足とともにこちらの別館を開放することにしたのである。

とは言っても、こちらの宿舎には後から来た男性従業員しかいない。

騎士専用とは名ばかりである。

カナトとしては宿舎と後宮を男性用宿舎と女性用宿舎に変更したいのだが、ヲウルに反対されているため、変更に至っていない。

それでも気付いたらしれっと変わっているのがカナトのやり方であるが。


「こちらをお使い下さい」


木製の机と椅子、ベッドがあるだけのシンプルな部屋だ。


「必要な家具などがございましたらお申し付けください。掃除・洗濯・買い出しは毎日、係のものがやってきます。必要がなければ断ってくださってかまいません。ここまでで質問は?」


「特にない」


「食事は3食付きます。本館1階の食堂に鐘が鳴ったら集合してください。湯浴み場所は共同、前の廊下突き当たりですね。いつ使っていただいてもかまいませんので」


それでは、とナカは書類の束を机の上に置く。


「こちらが労働契約書です。目を通してサインをお願いします。面倒だったら読まなくても良いですが、後で苦情は受け付けません」


「あ、あぁ・・・」


「何か質問は?」


「特には・・・あ」


ダイは書類を手に固まる。


「なんです?」


「・・・文字が読めん」


「なんで!?アンタ騎士だったんでしょ!?」


「・・・イスフェリアのな」


「盲、点!今日から文字の勉強も組み込みます!!」


「スマン」


「そうよね、イスフェリアなら習って4カ国だもの。ガデス文字なんか習わないわよね」


「こっちにいたときは平民だったもんでなぁ」


「はぁ~・・・そうよね、ガデスの平民は文字あんまり使わないものね。しょうがないわ」


書類をナカに読み上げてもらいダイがサインをするころには、日がどっぷり暮れていたのである。




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