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Un re di demone  作者: クドウ
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国外の奴隷商がやって来たのは朝食のすぐ後だった。

ガデスでは違法扱いであり、裏通りで密売されている例はあるものの、表だって王宮に入るのは初めてだ。


簡素な服、というよりも布を巻いた少女たちが20名ほど、カナトの前に並べられる。

全員従順な素振りを見せている。

諦めきって本当に従順な者もいれば従順な振りをしている者もいる。


容姿はそれぞれ十人並みから極上まで様々。スタイルも同様。

別に性奴隷にするわけではないので、そこに拘りはない。

全員を直線上に歩かせた。

歩き方で大体運動神経がわかる。

運動神経が良い方が礼儀作法が身に付き易そう、仕事が出来そうというのがその理由だ。

メイドの仕事は主に掃除や洗濯、人数が多いと意外と重労働なのだ。


「まずは待遇を説明する。ヲウル」


「はっ。・・・まず職種はメイド、主に掃除や洗濯・雑務を担当してもらう。部屋は2人で1部屋、3食付き。勤務時間はローテーション、休みは週に1日。給金は当分の間小遣い程度。これは、君たちを買った代金分働き終われば、まともな給金になる。奴隷証も外す。もちろんこの代金が払い終わっていれば、王宮からでることも可能だ」


少女たちがざわめく。

メイドであることも、休日があることも、お小遣い程度でも給金が出ることも、奴隷でなくなることも、すべて有り得ないことだ。

甘い言葉には裏がある、疑って当然である。

ただ裏があるとしてでもその待遇が真実ならばこれほど良い条件はない。


「何か質問は?」


途端、シンとなる。


「ないならば・・・王」


「ここで働きたいと思うものは一歩前へ」


そろそろと足を踏み出す少女たち。


「少しでも魔法が使える者は挙手を」


1人の少女が手を挙げた。


「どんな魔法を?」


「水魔法を、少しだけ・・・」


魔力はナカよりも少し多いくらいだ。

心を読んでみても、他より少しは安全かも知れないという程度の考えのようだ。


「よし。お前はとりあえずあちらへ。他、剣や弓を使える者は?」


これも1人、挙手。

少し大柄な少女だ。


「何が得意だ?」


「剣を扱えます」


思考を読んでみる。

一番逃亡しそうな気がしたがそうでもないらしい。

諦めているというよりも、ここなら奴隷から脱出できるかもという前向きな考えのようだ。

待遇を全く疑っていないようで、騙され易そうなタイプだ。少しは疑えよ。


残り7人の少女の思考も読んでみたが、特に逃亡しそうな感じはない。

ただ待遇に関しては半信半疑。

まぁこれに関しては半信半疑だろうが何だろうが、カナトには関係のないところである。


「よし。言っておくが、反逆は死罪だ。反逆しなければ命の保障も生活の保障もしよう。・・・改めて聞く。ここで働く意思があれば、挙手」


結局、9人の少女を買うことになった。

ヲウルに商人に支払いをさせ、ナカには少女たちを部屋に案内させる。

まずは風呂に入らせ、メイド服を着てもらう。

昼食を摂った後は礼儀作法から入る。

一応王宮のメイドなので、見栄え良くしていないとヲウルがうるさいのだ。


礼儀作法と文字が書けない者は文字の勉強を組み込みつつローテーションを作る。

主な仕事は王座と各私室の掃除と洗濯。

執務室と宝物庫の掃除はナカかサイの仕事だ。


魔法を使える少女はナカと一緒に訓練、剣が使える者もシバやアズマとともに訓練を組み込む。

腕次第では騎士団に所属させる。本人たちには騎士団に所属した方が給金も上がると説明。

特に剣の少女はやる気満々だ。





サイが戻って来たのはその翌日だった。


「何だ早いな」


「それが・・・」


走って来たサイが言うには、件の貴族がこちらに向けてやって来ている、と。

しかも武装済み。人数は50人ほどと多くないが、こちらの人数を考えると・・・。


「って何か人数増えてる・・・」


「お前がいない間に14人増えた」


「すっげー!」


「・・・お前シリアスな雰囲気でもそれなのな」


貴族の位置は走り通せば2日程の距離にいると。

馬が疲れるので休みを挟むとしても3日。

因みにサイの乗った馬には魔法を掛けてなおかつ魔道具使用でスピードもスタミナも段違いだ。


「まぁ50人くらいどうってことないだろ・・・ただ城下町の人間が巻き込まれるとアレだな。じーさん、どうする?」


「到着予定日は大神殿に避難してもらいましょう。大神官に話は付けておきます」


「頼んだ。・・・戦闘訓練にちょうど良い気もするんだが・・・」


「辞めておいた方が良いでしょう。折角出来た使用人が逃げてしまいますよ」


「そうだな。俺だけで十分だ。っていうか、その貴族馬鹿か?俺が大神殿で殺した人数より少ない人数で来てどうするんだ?」


「もしかしたら何か策があるのかもしれません。油断しない様」


「分かった」


「・・・あれですよねぇ、その貴族って隣国と繋がりの深い」


「可能性はありますね。ただあそこもそんなに強い軍事力は持っておりませんが」


そもそも隣国との間には海がある。

もしも兵を借りているとすれば見える筈だ。


「逃走経路の確保をしているのかもしれませんね」


それぐらいなら問題ない。

逃げられる前に殺せば良いだけだ。

カナトの魔力は膨大。

おそらく世界中探してもカナトを上回る人間などいないし、よほどの策がない限り、何人束になってもカナトを殺すことは出来ないだろう。


「まぁ大丈夫だろ。サイ、ご苦労だったな。今日は休め。当日は王宮の人間も全員大神殿に避難しておけ」


「はーい」


「畏まりました」



◇◇



カナト唯一の弱点は、ニイナだ。

進軍は西から。ニイナは北。

ニイナの存在も知らないだろうから、今回のことは全く問題ない。

念のため大神殿には魔法の防御を何重にも掛けておき、入口付近には腕の立つものを配置しておこう。


謀反の理由は聞かないとならない。

熱心な神教徒であれば謀反くらいしても不思議ではない。

しかし1月以上経ったこの時期に?

兎に角明後日か明々後日になればわかるか。

カナトは久しぶりに独り寝を堪能することにした。









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