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カナトは5人を連れて城門前までやって来た。
「えーと、どちら様?」
こてん、と首を傾げてアズマが問う。
しかしアズマ・・・。
そんな応対で良いのか、門番って。
「は?アンタ城の人じゃないのか!?」
「変装戻すの忘れてた」
変装の魔法を一気にとく。
「あ、おかえりなさい、カナト様。ヲウルさんが探してましたよー」
「わかった」
この時間なら恐らく執務室だろう。
「何をしてる?こっちだ」
5人がぽかんと間抜けな面を晒している。
「わ、若返った・・・!」
「若いと舐められるからな」
「オッサンじゃなかったんだな・・・むしろ年下!?」
「まぁそうだろうな」
「また勝手に出て行きおって!!」
予想通り執務室にいたヲウルにいきなり怒鳴られる。
「おかえりなさいませ、カナト様。そちらの方々は?」
「スカウトしてきた冒険者。今から交渉」
「へぇ~・・・」
「無視するでない!!・・・しかし、スカウトか。よく着いてきたな。まぁ汚いところだが、好きなところに座ってくれ」
掃除はされているが執務室は物でいっぱいだ。
主に書類と書物と魔道具で。
5人はそれぞれ開いている椅子に座る。
「Bランク3人、Cランク1人、Dランク1人だと。騎士団に入れようと思う」
「またそんな勝手なことを・・・!」
「良いだろ別に。王なんだし」
「はぁ!!??王!!!???」
「気付くだろ普通、気付いてなかったのお前だけだぞ」
叫んだくせ毛剣士に言う。
他のメンバーは城門辺りからとっくに気付いていたというのに。
鈍いというか馬鹿だな、コイツ。
「え、なんで!!??」
「まぁとにかく人手不足なんだし、いいだろ別に。給金はさっきの通り、部屋はあとで案内するけど1人1部屋使って良い。食事は出る。風呂も自由に使え。仕事内容は門番・近衛・教育・・・礼儀作法は受ける方な。どうだ?やらないか?」
「私からも頼む。慢性的な人手不足でな・・・」
「あ、そうだ事情とやらを聞いてなかったな」
魔法使いがメンバーに目配せし、頷く。
「私達は・・・コスタの出身です」
ヲウルが、ナカが、ひゅうっと息をのむ音が聞こえた。
カナトには全く何のことかわからないのだが。
「生き残ったのは7人・・・うち2人は、神殿で保護されています」
うん、まったくわからない。
「すまんが、意味がわからん」
「申し訳ない、王はこの13年間の記憶が欠如しておる」
「・・・簡単に説明します」
ガデスの西の果て、コスタ。
10年前、そこで謎の疫病が流行った。
生き残ったのは7人の子供のみ。
うち2人は生き残ったものの意識が戻らない。
その2人の生命の維持に、大金がかかる。
それを5人は必死に稼いでいるという。
「まだ儀式があった頃だろ?それなのに疫病?」
「そう、だから私達は生贄の儀式など信じていないわ。だからアンタが儀式を中止してもどうも思わない」
「なるほどね」
どういった疫病かはわからないが、疫病ではないのかもしれない。
人工的な何かとか・・・。
詳しい事情を此処で聞くのは無神経だろう。
後で調べることにする。
「よくわからんが、ヲウル、頼めるか」
「畏まりました」
「こちらで最善の策をとろう」
「・・・ありがとうございます、よろしくお願いします」
◇
ナカに部屋へ案内させ、その後シバの作った夕食を食べた。
食べながら仕事の話をする。
本来なら王と家臣が同じテーブルに着くこと、仕事の話をそこで話すことはおかしい。
(とヲウルに言われた)
しかしカナトは王だ。法律だ!と言い張り、朝食も夕食も報告などが飛び交うようになってしまっている。
「まずシバは、門番はもうしなくて良いから料理に専念してくれ。空き時間は勉強するようにな」
「はーい・・・」
勉強という単語に嫌そうな顔をするシバ。
「早く文字を覚えて料理書読めるようにな」
「そっか!料理書読めたら色々レパートリー増えるもんな!」
「あぁ。がんばれよ」
「はーい!」
「アズマも門番はしなくて良い。引き続き馬とドラゴンの世話を頼む。空き時間は勉強と、余裕があれば草取りな」
「はい」
「じーさんとナカはそのまま。・・・奴隷の方はどうなっている?」
「明日の午前中、候補を連れて来てもらいます。面談は王に頼みます」
「あぁ。空けておく」
奴隷は女を数人買い取る予定だ。
メイドをしてもらうので、明日能力とやる気、心を読んで決める。
隙あれば逃げる奴隷はいらない。
「当分の間は礼儀作法を習ってもらう。2人ずつ、門番と礼儀作法をローテーション組んでやってくれ。公平になるよう好きなように組んでくれてかまわない。詳しいことはシバとアズマに聞けば良い」
「わかった」
「魔法使いはナカについて礼儀作法と文官の仕事の補助を。それからナカに魔法の基礎を教えてくれ」
「わかりました」
「それじゃ夕飯終わったやつから戻って良いぞ。風呂も自由に使って良い。ナカ、魔法使いに女湯の場所を教えておけ」
「はーい」
こうしてカナトは一気に5人、使用人をゲット。
しかし名前すら聞いていないことを、翌日ヲウルの指摘で気付くのだった。