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Un re di demone  作者: クドウ
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10

「お主らは何故冒険者に?」


「稼げるからに決まってんじゃん」


即答したのは茶髪のくせ毛、剣士の男だ。


「僕たちは孤児だから、良い職業につけない」


カナトはこの世界については意外ともの知らずだ。

この世界の良い職業が何なのか、良くわからないのである。


「何の職に就きたかったのだ?」


「騎士」


くせ毛剣士はバカっぽい軽い感じから一転。

無表情で冷たい目線で、カナトを見た。


「オレは騎士になりたかった」


「僕も、騎士になりたかった」


「でもオレたちには身分がない」


流石にカナトも騎士になるには身分が必要なことくらいは知っている。

カナトは今の騎士団に身分は要らないと思っているので関係ないのだが。

ヲウルは品位を下げるようなマネは控えろという。

そんなもの、あとで礼儀作法の教育でもすれば良いんじゃないだろうか。


とにかく、実力を見てからだ。

ただ騎士になりたいというのは、ガデス神国のであってガデス王国のではないだろう。


「お喋りは終わりよ。森へ入るわ」


森の中は鬱蒼としていて、差し込む光がなければ見通しが悪いことこの上ない。

足場が悪いので戦い辛そうだ。


「戦闘になるのはおそらく開けた場所よ。ヤツら体が大きいから」


今回の討伐依頼はゴーレムだ。

ゴーレムから取れる素材は一級品。

良い武器や防具の素材となるらしい。


先日ゴーレムが大量発生していたというポイントに着いた。

数があまりに多く目撃者はすぐに逃げ帰ったという話で、そのため最低人数が6人となっていたのである。


突然、最後尾の弓士が倒れた。


「イツキ!?」


一見外傷はなく、突然意識を失ったかのように見えた。

脈をとる、動いている。



「しまった!眠り粉よ!」



魔法使いの言葉に、皆一斉に鼻を口を塞ぐ。

しかし気付いた時にはもう遅い。

次々と倒れて行く冒険者。

そして、ゴーレムの出現。


「っく、」


起きているのは薬物に耐性のある魔法使いとカナトのみ。


「アンタは急いでこれを皆に飲ませて!私は迎え討つわ!!」


「わかった」


魔法使いがゴーレムと対峙している間にカナトは気付け薬をメンバーに飲ませる。

気休めにしかならないが木陰に移動させ、カナトも魔法使いに合流する。


「飲ませたぞ。どれくらいで目が覚める?」


「10分程度よ」


戦闘中に10分は命取りだ。

そのため眠りの粉を撒くモンスターが出るエリアでは、事前に予防薬を飲んでおく。

しかし今回はエリア外であり、完全なるイレギュラーだ。


「10分間、持たせるのよ。何が何でも!」


「わかった」


片をつけるではなく、持たせる。

出現したゴーレムは2体である。それならば倒せば良さそうなものだが。


カナトは腰の剣を抜き、ゴーレムに対峙する。

魔法使いはすでに風魔法を繰り出している。


ゴーレムの防御力は非常に高い。

ついでに力も強い。

スピードはそこそこ。

魔法を使ってくることはなく、純粋に体術で来る。

なので動きは読みやすい。

持久戦を覚悟すればそう難しい戦闘でもないのだ。





カナトがゴーレムを倒し、素材を剥ぎ取り終えた時。

魔法使いは地に伏せ、眠っているメンバーに、ゴーレムが近付いて行くところだった。

まったく気付かなかった、というか見ていなかった。

魔法使いはBランクで、一対一。まさか負けるとは思っておらず、噂のゴーレムとの戦闘を楽しんでしまっていた。


「あーまずったなぁ」


距離が離れているので走っても間に合わないだろう。

魔力の塊をゴーレムに放つ。

衝撃でゴーレムはガラガラと崩れ落ちた。


「生きてるか?」


「・・・い、き・・・て、る・・」


魔法使いに回復魔法を掛けていると、眠っていたメンバーも目覚め始めた。


「くっそ、大失態だぜ」


頭を振りながら身を起こすくせ毛剣士。


「Fランクに助けられるなんて・・・」


「は、悪態つけるなら大丈夫だな」


「・・・助けてくれて、ありがとうございます」


「良い子は一人か」


最初に倒れた弓士の頭を撫でる。


「わわっ!」


犬みたいだな。

飼いたいな。


「それはそうと・・・まだ2体しか出てないぞ?」


「まだいるかもしれないわね・・・」



「来るわ」


「一体か。オレが行く!おっさんにオレの剣を見せてやるぜ!!」


くせ毛剣士がゴーレムの前に飛び出した。

他のメンバーはまたか、と呆れ顔。


「中々だな」


「ふん。そんじょそこらの騎士には負けないわよ」


「いいな・・・そこの剣士たちも腕は良いのか?」


「BランクとCランクだもの、腕は立つわよ」




◇◇





しばらく待ってもゴーレムは出現せず、3体分の素材を持って帰った。


「はぁ・・・仕方ないわよね・・・」


報酬の3分の1を渡された。


「な、何よ。私達がいなかったらアンタは参加できなかったんだから!」


倒した数で言えば3分の2だが、元々参加資格がないのだから、ということらしい。

カナトにしてみれば金銭は問題ではないので良いのだが。

それよりもランクが上がったことの方が意外と嬉しい。


「報酬はいらん。その代わり、俺の元で働かないか」


「はぁ!?オッサン、何やってる人?」


「・・・神国が王国に変わったことを知っているか」


「当り前よ、町はその話で持ち切りだったんだから」


「どう思う?」


「僕たちには関係ありません。僕たちは自分たちの生活でいっぱいいっぱいですから」


「そんなに?Bランクならそれなりに金は入るだろうに」


成功報酬を見るからに、そんないっぱいいっぱいになるほどのものではないような気がするのだが。

Eクラスくらいだとさすがに生活は困窮しそうだが・・・。


「私達には色々事情があるのよ・・・何、もしかして王を討つとでも言うの?それならお断りよ」


「いや逆だ。王宮で働く人間を探している」


「王宮で働く人間をこんなところで?」


魔法使いは訝しげにカナトを睨む。


「端的に言うと王を怖がって使用人が集まらない」


「なるほどね・・・そうね、給金次第では考えても良いわ」


納得したらしい魔法使いはにやりと笑った。


「仕事内容にもよるが・・・住み込みで三食食事・風呂付き、給金は一月でこれくらいかな」


その金額を見て全員が目を見張る。


「すっげ!良いじゃん!さすが王宮!!」


「でも・・・殺される危険性は捨て置けません」


「それは冒険者でも一緒だろー」


「ですが・・・」


「殺さない。反逆でもしない限りそんなことにはならん」


カナトは殺しはしても嘘はつかない。

反逆でもしない限り殺す理由がないのも本当だ。

カナトは決して快楽殺人犯ではないのだから。


「詳しいことは城で話そう。お主らの”色々の事情”も出来るだけ考慮する」


「・・・本当に?」


「その事情を詳しく話して貰えれば何らかの手助けは出来るかも知れんが」


「わかったわ。案内して頂戴、詳しい話をしましょう」









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