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ギルドに入ると厳つい男でいっぱいだった。
偶に魔法使い風の細身の男や女もいるが、大多数が戦士風の男だった。
うん、非常に目に優しくないな。
受付窓口で登録をしてもらう。
出掛けに大神殿から身分証を頂いて来たので問題なし。
「カナト・フリュイ様、職業剣士、ですね」
「あぁ」
単純に前世の名前を使用。
”カナト”という名前は滅多にいないが、それでも探せば見つかるだろう。
使って怪しまれるような名前ではない。
「登録完了です。単独ですとFランクからしか受けられませんのでご注意を」
「わかった」
自分よりランクの高いメンバーとパーティを組めば上のランクも受けることが出来るが、知り合いが全くいないカナトには、組む様な相手がいるわけもない。
単独でFランクを受けつつ、上位のモンスターでも狩ればレベルも上がる。
それで十分だ。
元よりランクの上昇や稼ぐことが目的ではない。
腕の良い、使いやすそーな冒険者を探すことである。
Fランクで1時間くらいで終わりそうな採取系依頼を受けることにした。
本当は討伐系にしたかったのだが、Fランクの討伐系は滅多にないようだ。
場所は竜の森の入口。
早速向かうことにした。
あまり長い間城を空けると、ヲウルにばれてしまう。
◇
竜の森の入口付近で薬草を採取する。
入口付近には滅多にモンスターは出ない。
ただ全く戦えない人間からすると、もしかしたらモンスターが出るかも知れない場所で薬草採取などするくらいなら、依頼してしまえという感じなのだ。
早々に採取を終えたカナトは森の中を探索する。
冒険者の気配のする方へ歩を進め、様子を窺う。
竜の森のモンスター討伐系は、最低でE、最高でSSと差が激しい。
エリアによって出現モンスターが違うので、このエリアだとおそらくD辺りだろう。
戦闘中のパーティは若い剣士が2人、弓士が1人。魔法使い人口はそう多くないので、いないパーティは多い。
「悪くはないが、平凡だな」
カナトは戦いぶりを見てそう評す。
他にも冒険者の気配はあるのでそちらも見学してみよう。
こちらもおそらくDランク。
魔法使い1人、剣士が4人。
魔法使いは回復に徹しているようだ。
「こちらもまずまず」
近衛や門番なのだから、剣術に長けている者が欲しいところだ。
それから数件覗いてみたがどれもぱっとしない。
「出直すか」
ギルドへ戻り換金し、本日は終了。
また次回探すことにしよう。
◇◇
数日後、ギルドで面白そうな一団を発見した。
討伐依頼や護衛依頼には、ごくたまにだが最低人数制限が設けられていることがある。
その一団が受けたいらしい討伐依頼はその危険度のせいか、人数制限が6人からとされていた。
だが一団の人数は5人。Bランクの依頼とあって、参加したいという冒険者はいないようだ。
通常Bランクの依頼を受けるには、半数がBランクに達していれば良い。
このパーティメンバーのランクはBランクが3人、Cランクが1人、Dランクが1人。
もしもうち1人がAランク以上であれば人数制限を無視出来たのだが、同等ランクの依頼になるので、制限人数は無視出来ない。
つまりはあと1人、ランクは問わず。
もしも2人入れようとするならば1人はBランクでないとならず、中々厳しい条件だ。
先方が本当にランク問わずであればFランクであるカナトにも、参加資格はある。
「お主ら、この依頼のメンバーを探しているのか?」
「そうだけど・・・オッサン、参加すんの?」
話しかけると答えたのは、茶髪のくせ毛の男だった。
腰には片手剣。剣士のようだ。
「ランクを問わぬのであれば参加したいのだが」
「ランクはいくつ?」
「Fだ。まだ登録したばかりでな」
「F~!?無理無理、死ぬよ絶対、止めた方が良い」
「これでも、昔は騎士として活躍していた。冒険者としてのランクは低いが、腕はそれなりだ」
「え~・・・でもなぁ・・・どうする?」
「死んでも責任取れないけど、良い?報酬もそのランクなら10分の1よ」
・・・いざとなったら肉壁ね。
眼鏡の女が答える。
紅一点、魔法使いのようだ。
心の声が面白いな。
他に弓士が1人、剣士が2人。
バランスの取れたパーティだ。
これは良い。このまままるっと城に欲しい。
「かまわん。元より上位レベルを見て勉強したかっただけだ」
「交渉成立。出発は明日の早朝。集合は城下の門で」
場所は竜の森なので時間もそう掛からないだろう。
早朝からならば午後には戻れるだろうし、それくらいならヲウルもうるさくない。
勝手に裏通りでふらついていると思われているようだ。
言うだけ無駄だということにようやく気付いたのだろう。
「わかった、よろしく頼む」
明日が楽しみだ。