告・永遠にしりとりしていたい!
私、三原カナは、いたって普通の女子高校生。
もうずっと隣の席な島地くんのことが好きなんだけど、想いを伝えることはできないまま時間だけが流れてしまっていて、いまだにただの友達みたいな関係を続けているんだ。
いつか想いを伝えなくっちゃ。
分かっているけど言えないんだ。
想いを伝えるなんてできるわけがない。
そんな勇気、私の中にはないよ……。
だってさ、想いを伝えたら、そこで終わってしまうかもしれないんだよ? ここまでずっと上手くやってきたのに。良き友人として関係を築いてきたのに。恋愛的感情がある、って知られたら、根っこの部分からぽっきりいって、すべてが壊れてしまうかもしれないんだよ? そんな怖いこと、できると思う? 無理だよそんなの! ってことで、そんなだから、私はいつまでもこんなところでぐずぐずしてしまっているんだ。
――けどそんなある朝まさかの事件が。
「ねえ島地くん、ちょっと来てもらっていい?」
隣のクラスの女子が島地くんに話しかけてる!
私もあまり喋ったことのない子!
「え、ああ……何か用事?」
「話したいことがあるの」
「ここでじゃ駄目なのかな」
「そ、それは……ちょっと、困るっていうか……」
「もしかして、財布の中身を渡せ、とか言う系?」
「そんなのじゃないのっ。でも、大切な話があるから、廊下で。島地くん……駄目、かな」
き、きき、ききき、気になるゥ~~ッ!!
でも私はただの隣の席の人でしかない。
だから今ここで二人の会話に入っていくことはできない。
「廊下? だったらいいよ。でも短めに」
「ありがとう……! もちろん。早めに終わらせるね。じゃあ行こ……!」
もやもやしているうちに、島地くんは女子と一緒に廊下へ出ていってしまった。
隣の席の人がいない。ただそれだけなのに、信じられないくらいもやもやしてしまう。やっぱり好きだからかな、と思いながらも、すぐには動けなくて。ただ、心が重い。得体の知れない憂鬱感に押し潰されてしまいそう。
このままじっとしていたら駄目になってしまう。
ということで、少しでも何かしていようと考えて。
お弁当箱を包んでいるハンカチを頭部に巻いて、廊下へ……GO!!
席を立ち、静かに扉を開けて、なるべく足音を立てないように廊下へ出る。そうしてきょろきょろしてみるけれどすぐに二人を見つけることはできなかった。が、少ししてあの女子の声が耳に入り、そちらの方向へと歩き出す。気づかれないようにしないと、と思いながらも、ここまで来ていまさら足を止めることはできなかった。
「島地くんのこと、好きなんだけど……」
「財布の中身をください、って言う?」
「ち、違うよっ。そんなこと言わないっ。でね、その……良かったらなんだけど」
「お金くれない? とかかな」
女子は不安げに瞳を揺らしながらも真剣な強さが滲む面持ちで目の前の彼を真っ直ぐに見つめる。
「付き合ってくれない!?」
ぎ、ぎえええええ~~!!
で、でで、出たァ~~!!
薄々そんな気がしていたけれど、まさか、本当にそうだとは……。
――と、思っていたら。
「あ、三原さん」
あばばば……。
覗き見してるのバレた……。
「ハンカチ被ってるとか珍しいね」
「ぁ……う、うん……新しい流行を作りたくて……」
よく分からないことを言ってしまった。
「流行? まぁいいや。しりとり、だよね」
「え……あ、うん、まぁ……」
「いいよ。しりとりしよう。それって、もしかして、今日は『こそどろ』からスタートっていう意味?」
いやそうじゃない、んだ、けど……でもこれはチャンス!?
「う、うん。じゃあそうしようかな。こそどろ、からで」
告白していた女子は意味が分からず固まっている。
「てことで、ごめん。忙しいから帰るよ」
「ちょっと待って、告白への返事は……!?」
「断るよ」
「ど、どうして!?」
「どうしても何も、そういうことにはあまり興味がないんだ」
「……そ、そっか。分かった。……ごめんね、迷惑かけて」
言って、女子は走り去った。
「良かった……の?」
「うん、いいんだ。じゃあ始めよう。しりとり」
去り際、女子の瞳には涙の粒が浮かんでいた。
「じゃ、私から。こそどろ!」
「老人会長すぎるだろ、かな」
「ろ返し……! ろ、ろ、ろ……六枚目見て!」
「手羽先、かな」
「キムチ!」
「チンゲン菜、だね」
「意気地なし!」
「島の名産品を売っている店、だね」
「銭湯!」
「運動会、とか」
「イルカショー!」
「商売人の集まり、とか」
一時はどうなることかと思ったけど、またこうしていつもと同じように関われて、本当に良かった! ラッキー!
……と、ハンカチを被ったまましりとりをして、そう思うのだった。
◆終わり◆




