1話
いつも通り、このペンションの主人である山下貴理子が客を出迎えた。
いつも通り六人の比較的若い男女が入ってくる。
彼らが入ってきた時、いつも通り俺の心はおどった。
いや、正確に言えばドアが開いたときぐらいから心がおどった。
探偵同好会である。
名前は別にあるはずだが、俺は勝手に彼らのことをオーソドックス探偵、メイド探偵、手品探偵、無口探偵、画家探偵の5人がメンバーだ。どれも見た目などから主観的に決めた。
。ミステリーを楽しむうえでは必要なメンバーである。紹介をしておこう。
一人目オーソドックス探偵。彼はヨーロッパ系のクォーターなのか日本人離れしたハンサムな顔立ちをしている。そしてタバコを好むところからシャーロックホームズのような探偵を象徴を連想させたため。タバコはシガレットタイプではない。キューバ産の葉巻である。この団体のリーダーは彼らしい。
二人目メイド探偵。彼女はこれはもう見た目だけであだ名をつけた。カチューシャとメイド服を着ているのだ。私服なのか?俺はそんな服について詳しくないため上手く語ることができないが。
三人目手品探偵。彼は職業がマジシャンだと得意げに語ることがあったからこのあだ名にした。シルクハットをつけている。その中には鳩が入っていたり、クラッカーが入っていたりさまざまである。ゲーム中、稀にやる手品がうまくいった時メイド探偵と無口探偵の方をチラチラ見ていることを俺は知っている。
四人目無口探偵。彼女はこの5人の中で一番寡黙。この集まりでは珍しくこれといった特徴がない。前前回くらいに鮮やかにトリックを解いていた時は驚いた。実はこの五人の中で一番推理力がある。
そして最後、五人目画家探偵。彼はベレー帽を被っている。この集まりに積極的に参加しているということはそこまでお金に困っていなさそうだ。一度彼の作品を見たことあるが抽象画なのだろうか。はっきり言って何がいいのか分からなかった。
俺が知ってる登場人物は以上の五人である。
しかし、いま入ってきた客は六人。
見慣れない顔のやつが一人いた。
巫女だ。と第一印象で俺は思った。
なぜなら、彼女は神事や祭りで使えそうな白を基調とした袴を着ている。
貴理子はオーソドックス探偵に聞いた。「そちらのお嬢さんは?」
「ああ、彼女は……」といいかけたところで、その女は口を開く。
「これから新しくメンバーになります。美心です。」
何だ新しいメンバーか。と俺は嫉妬の眼差しを向ける。
せっかくだし名前をつけよう。どうせ名前は覚えられない。
それなら、こいつのあだ名はは巫女探偵だな。我ながら安直である。
貴理子は納得すると彼らを部屋に案内した。
彼らはそれぞれ一人一つ部屋を頼んだようだ。推理ゲームはいつもそうだ。
去り際に貴理子は言った。
「今日はお客様以外このペンションを使わないのでいつも通りご自由にロビーを使ってください」
このペンションは山奥にあり、滅多に人が来ない。
彼らが何度もここを利用する理由はそれだろう。
各自部屋に荷物を置いたあと、ロビーに集まった。
ロビーには十人くらい座ってもまだ座れるくらい大きなテーブルが中央にあり、そのテーブルの中央にはお茶のパックや人数分のカップが置いてある。また、テーブルの奥には二つの棚がある。天井にくっついた高い位置にある棚と上に何かおけるくらいの低い位置にある棚である。そして、その間には給油ポットと砂糖の入った瓶が置いてある。
探偵どもはテーブルの奥を見るようにしている。何か既に事件のための細工があるのか見ているのだろう。それを見るために俺は彼らに向かい合うように、棚を背にして浮かぶ。
ここを初めて見たはずである巫女探偵はほかの探偵以上にロビーを観察している。首をゆっくりと左から右へ動かすのだ。例えるのなら、扇風機である。そして上の棚を見ようとしたのか少しずつ目線を上げていく。そして、ほんの一瞬巫女探偵の目線が止まった。その時、巫女探偵の目は俺の方を向いていた。かと思えばすぐに目線が外れる。
全員が集まると、オーソドックス探偵はプラスチックケースとカード配り機を取り出した。オーソドックス探偵は六枚のカードをプラスチックのケースから取り出して、シャッフルをした。そして、右にいた手品探偵にカードを渡す。ポカンとした巫女探偵に手品探偵はいう。「これはね。探偵役か犯人役か決めるカード。誰かが意図的にカードを操らないようにみんなでシャッフルしてるんだ。」なるほどと巫女探偵は答える。こうしてそれぞれが六枚のカードをシャッフルしていった。
そして順番的に最後になった巫女探偵はそれらをカードを配り機械にセットした。
こんなもの売ってるのか。心の中でそう思ったがこの話には関係ない。
ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッと吐き出すように、カードが配られた。
メンバーはそれぞれ並べたカードを引いていった。この中の誰かが犯人役になる。
俺は一応、カードを見ている彼らがいる方と逆を向いた。
すべて真相が犯行時に分かってしまうとはいえ、少しでも犯人は誰だというドキドキ感を残して置きたい。
全員がバラつきはありながらもカードを見る。それぞれ、ポケットにしまった。このカードは毎回使い捨てである。
俺は全員の顔を見る。当たり前だがそれだけでは誰が犯人か分からない。全員ポーカーフェイスである。まあ例え「うわっ」という顔をあからさまにした人間がいたとしても、それは誘導や演技かも知れないし、単に犯人役をやりたかった可能性があるため、あまり参考にならないが。
とりあえず、一時解散となった。
主に犯人のトリック準備のためである。
去り際、巫女探偵はもう一度天井を見た。丁度俺がいる方向だ。
もしや。と俺は思った。
普段なら、まぁ天井くらい誰でも見るよな。考え事をしていたのかもしれないと流しているところだ。だが、巫女探偵はロビーの様子を観察する際にも俺の方を向いた。今回で二度目である。その時俺は偶然ではないという期待をしてもいいのではないかと思った。それでもである。期待が裏切られる時は苦しいしな。やらない理由の方が思いつく。
だが、俺は彼女の後ろについていくことにした。袴というその格好から俺は無意識に期待していたのかも知れない。
思い切って俺はちょっかいをかけた。
「おい、見えてる?おーい」
目の前で手を振る。巫女探偵は右に曲がり、廊下を進んでいく。
もしも、俺が見えていないのなら、突っ切ってくるだろう。しかし、巫女探偵は俺を避けていった。幽霊にぶつかりたくないからではないだろうか。
いや、まだだ…たまたま彼女がその時地面にシミだとかゴミだとか、そこを通りたくないようなものがあったのかもしれない期待が裏切られるのはやっぱり……………
彼女の部屋に着く。部屋は一人には少し広く、二人だと少し狭く感じる広さである。中にはベッドと細長い机、椅子が置いてある。
彼女は荷物を置いた。
もう一度だ。俺は再び声をかける。
「実は見えてるんだろう?」
チッ、と舌打ちをして俺の顔を睨む。
はち切れんばかりの感情が俺に振りかかる。こんなにも舌打ちで気分がよくなったことはないはずだ。生前の俺がマゾヒストでなければの話だが。
間違いない彼女は俺が見えている。
嬉しい。嬉しく思った。いままで、霊感がある奴はいたが、ここまでTheプロフェッショナルという人間に会えるとは。しかもこの探偵同好会のメンバーときている。なんて運がいいのだろう。幸運!ラッキー!棚からぼた餅!僥倖!全部似たような意味だがそんなの関係ない。
「やっぱりだ。気づいてるな。お願いがあ…」
「めんどくせえな」
巫女探偵は俺が言い終わる前に遮り、トランクを漁りはじめた。
取り出したのは、神主とかがよく持っている四角い紙がたくさんついた大幣だった。
それを俺を振り下ろした。あわてて、俺は避ける。
「おいおm……」
いいかけで大幣で殴られる。俺は体を捻るが足に大幣がぶつかる。当たった場所から自分の足砕けていった。痛覚はないが、これはまずい。
彼女は交渉をする気がない。
嬉しい気持ちを抑えて天井裏に逃げる。ここで成仏されたら、おじゃんだ。
さすがの彼女も人間、壁をすり抜けて俺を追うことはできない。
「クソっ!逃げたか」
そう悔しそうに言った。あくまで「悔しそう」にだ。
どういうことか?
その後、天井から見るとバレてしまうため、反対側の壁まで移動して顔だけをだしたのだが見てみると、彼女は天井をみながら大幣を振りかぶっているではないか。
どうやら奴は負けず嫌いというべきか、天井から顔を出した俺を成仏す気満々らしい
普通に話しかけようとしたら、あの大幣で昇天させられてしまうだろう。
ルビが同じなのに漢字が変わっている?どっちみち同じだからな。
どうすればいいかと迷っていたのがよくなかった。巫女探偵は振り返ったのだ。
巫女は俺を射程圏内に入れようと急接近する。
まずい。
慌てて壁を突き抜け逃げようと考えた。しかし、その考えはそこで終わった。逃げてどうするのだろう。逃げているばかりではこの巫女探偵と交渉することなど不可能だ。次を待つ?次っていつだ?俺はいつからここにいたか忘れてしまうほど長い間ここにいた。一方で幽霊が見える人間は数えられるくらいしか出会うことができていない。もしかしたら、幽霊が見える人間は厄介ごとに巻き込まれぬように無視していたのかもしれない。今回はたまたま、無視するのが苦手な巫女だった。それにである。例え再び無視するのが苦手な幽霊が見える人間に会えたとしてもその人間がこの探偵同好会に関わろうとする人間でなければ、意味がないのだ。こんな三つの条件があう人間に今後会うことができるだろうか。できるはずがない。
俺は巫女探偵に向けた背を振り替える。
そして彼女に向かって言った。
「俺を成仏させると損するぞ」
巫女探偵は大幣を持った手を後ろで止めた。巫女探偵に?マークが浮かんだように見えた。
「お前、ミステリーに興味ないだろ。」
ここから先、策はない。祓われてもいい。
「何をいう?」
「『探偵パーロット』って知ってるか?ルイス=ロビンソンによって書かれた、大昔からある限られたミステリーファンだけが知っている作品なんだがな。」
「『パーロット?』ああ、知っている。私はその作品にハマったからこうやって探偵同好会に来てみたんだ」
「………カマかけだ。そんな探偵も小説家も存在しない」
巫女は頬を赤らめた。
「ほら、お前はなんにも探偵に関して知りやしない。あいつら探偵共は勘や推理力がある。絶対にバレるぞ」
巫女探偵は息を呑む。
「そこでだ。俺は推理ゲームがやりたい。この気持ちに嘘はない。だから俺を使ったほうが潜入調査がしやすいんじゃないか」
巫女探偵は手を顎あたりに置き、考える様子だった。
「分かった。貴様の口車にのろう。」
よっしゃああああああああああああああああああああ。この時の俺の感情を表したら、これが一番近いだろう。上手く行った上手く行った上手く行った上手く行った上手く行った上手く行った上手く行った!
しかし、それを遮るようにして巫女探偵は言った。
「ただし、ただでとは言わせない。制約をつくらないなんてことをしたら、体を乗っ取られてしまうかも知れないからな。そこでだ」
巫女探偵は再びトランクを漁る。
そして、ボロボロの茶色の紙のような布のようなものを取り出した。
「羊皮紙だ。」
俺の考えを見通しているのか、巫女探偵はいった。
いや、そう言われても分からない。
「羊皮紙?」
「ああ、本当は悪魔との契約に使われるものなんだが……まあ、いい。簡単に言えば、ここに書いたことは絶対に果たさなければならない」
「果たさないとどうなるんだ。」
「消滅する。」
……まあ、それくらいしないと得体の知れない幽霊のことは信用できないか。でも別にそんなこと恐れることではないか。
「あと、プラスアルファで時間制限もつけておく。分かったら、ここにサインを書いてくれ。拇印でもいいぞ。」
「まぁ、それは万が一のことを考えたら妥当か。………いや、ちょっと待て。俺はどうやってこれに書けばいいんだ?」
俺は幽霊、物には触れることができない。
「それはこうだ」
「!!何をする」
俺は叫ぶ。
巫女探偵が指に針を刺してペンションに常備されているカップに血を流したのだ。明らかに故意である。
「巫女だとか、陰陽師だとかそういう職についている奴らがなぜ幽霊に触れることができるか知っているか?理由は『血』だ。電気みたいなものと捉えておけばいい。流れている血が皮膚という伝導体を介することによって幽霊に触れることができるのだ。」
俺は探偵についての知識はあるがSFだとか超常現象については詳しくない。そのため、終始自分が理解できているのかも理解できていない。
「…………この理論を逆から考え、使うことによって幽霊は巫女、霊媒師、陰陽師たちの血液を使うことによって物に触ることができるのだ」
…よくわからないがつまり、巫女=幽霊を触れることができる。巫女=血液、血液=幽霊を触れることができる。幽霊も触られていて触ることができるため、逆の式も成り立つ……………………………というわけだろうか?
何にせよ、契約のために血を躊躇なく流すなんて、大和撫子のような見た目からは想像できないほど勇ましい探偵だ。
「しかし、そこまでしてやる必要があったのか?」
「何?嫌ならやめるぞ。体を貸すのも、お前を成仏するのをやめるのも。」
「いやいや、そういうわけじゃない。」
「私は嫌いなんだ。一度決めたことを変えるのが。」
「でも、それを言ったら俺のはなしたメリットを考えて俺を成仏するっていうことをしないと変えたじゃないか」
「それは私が決めたからいい。」
よく分からない。一貫性が全くないように感じられる。
俺はなぜそこまでメリットのないこの契約をしたのか聞きたくなった。しかし、貸してもらえなくなる危険を考えたら何も言えなくなった。
俺はカップに張ったに指を浸す。血はゆっくりと指に滲んでいった。
俺は人の血で拇印を押した。
その時、羊皮紙は光った。そして炎上したかと思えば、何事もなかったように火が収まり、ただ机の上に羊皮紙が置かれているだけになった。
「契約成立だ」
そういうと巫女探偵は羊皮紙を手に取り言う
「それじゃ入れ。」
昔テレビでちらっと見たドラマで悪党が取引相手をアジトに招き入れるシーンを彷彿とさせた。
とても巫女がいうセリフには思えない。俺は巫女探偵の頭から飛び込んだ
だんだんと馴染んでいく感じがした。例えるなら、
思っていたよりも肌寒く感じる。
かすかに自分の体が震えているのに気がついた。それは鼓動だった。
やがて体が地面に引っ張られる。俺は久しぶりに重力を感じたのだった。体が重く感じる。いや、重く感じるのは巫女探偵の体重のせいか?
(失礼だな。貴様)
うわっ。驚いた。そうだった。そういえば取り憑いた相手との意識は共有されるのだった。
取り憑くというのは、とどのつまり意識の同居である。
貸す人間、今回の場合巫女探偵と貸してもらう俺がシェアハウスするみたいな感じだ。
他の人の人生というものに確かに興味はある
しかし今の俺、すなわち推理ゲームに参加することができる俺にとってそんな事はどうだっていいため、割愛する。
巫女探偵の(ほっ)とする感情が頭に流れた。彼女は勇ましいだけではなかったようだ。
ロビーに着くと俺たち以外の探偵は到着していた。
このゲームでは部屋でだけかが殺された時、殺人の存在がそのまま誰にも気づかれず時間がたってしまうことを防ぐため数時間に一回ロビーに集まることになっているのだ。
画家探偵は食器を各自の席にコーヒー、無口探偵はスプーンを並べていた。
メイド探偵が瓶を持ってきた。何かと思ったらコーヒーにかけ始めた。砂糖だと気づいた。
こいつらは探偵のくせにブラックが飲めないのかと思った。
画家探偵が俺に砂糖の瓶を回してきた。俺もブラックコーヒーが飲めないと思っているのだろう。
(ちょっと私の分も頼む)
巫女探偵の奴が俺に向かって言っている。味覚も共有されるからだ。
嫌だね。俺はコーヒーを口にする。
………………これが憧れのコーヒーか。
とりあえず、俺は黙って砂糖の瓶を引き寄せてスプーン1杯をコーヒーに混ぜた。
メンバーはクスりと笑った。あまり愉快ではない。
コーヒーを口にした途端に全員がコーヒーを飲み始めた。俺は目を丸くする。すると、隣にいるオーソドックス探偵が言った
「実はですね。かつてメンバーの1人がコーヒーにインクを入れましてね。ゲームでいわゆる毒殺が起きたんです。それから、誰かが飲むまで皆人の顔色をうかがうようになったんですよ。誰も退場なんてしたくないからね」
そういえばそんな事もあったな。
(……………………)
巫女探偵は軽くひいているようだった。
危ないこれで殺されてしまったら、せっかくのチャンスを無駄にしてしまうところだった。次からは気をつけよう。
回りを見回す。ひょっとしたら、今もトリックの準備が進んでいるかも知れないと思ったからだ。だがその様子はない。
案外もうトリックの準備は終わっているのかもしれない。
せっかく食事をすることができているのに飲み物だけでは口が寂しい。なんかないのかと巫女探偵に向かって尋ねる。
(私は何も持ってきてないぞ)
残念だ。コーヒーをすする。
隣から音が聞こえた。
横を見ると座っている画家探偵がビスケットを食べていた。
ゴクッ。唾を飲み込む。せっかくなら食べてみたい。
個包装なら毒だのなんだの大丈夫だろう。
(お前、貰う前提で話を考えてるんだな……図太いな。)
「そのビスケット1枚くれないか?」
巫女探偵を無視して、俺はいう。
画家探偵は回りを見る。自分以外にビスケットを持っている人間はいないと確認する。
「ああ、おまえだ」
画家探偵は目を見張る。そして、俺に向かって、個包装のビスケットを手渡した。
「…………………どうぞ。」
画家探偵は砕けた物言いだが、手品探偵のように人懐っこいわけではないなと思った。
(もらっておいて失礼だな)
早速、右手をスライドさせて個包装を開く。
口に入れ、歯に触れた時、さくっといい音がなった。そして口に広がる風味と甘み。
覚えていないが、俺はこういった料理が好きだったのではないかと思った。
これがコーヒーなら良かったのに。………いや、何でもない。
しばらくメンバーは談笑していた。
何か違和感があった。ほかのメンバーは特に何もないのか?と疑問に思う。
やがて具体的な違和感に気づく。
何だ。これは。まぶたが重い。考える事に霞がかかってくるようだ。
ああ、思い出した。これは………
眠いんだ。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
(おい!)
怒鳴るような声が聞こえた。声の主は巫女探偵だった。
まだ、俺はぼんやりとしている。
手を見る。白く細い手だった。そうだ巫女探偵に体を貸してもらっているんだ。
結局俺は寝てしまっていたのか。久しぶりに取り憑いたんで興奮して疲れてしまったのだろうか。そんな子供みたいなと自分で呆れる。
それにしても何だっけ、何か大切なことが…………
推理ゲーム!
俺は飛び起き、体を見た。よかった。ペイント弾が体についているわけではない。まだ、死亡はしていないよかった……………………
時間制限!
慌てて時計を見る。いけない。あと1時間しかない。あと1時間で事件、会議、犯人当てをしなければならない。間に合わないかも知れない。
そんな懸念はやがて消える。
なんだが騒々しいことに気づく。自分以外の探偵はだいたい起きている。画家探偵は震えながら指をさしている。
「!!」
指がさしているものを見て、俺は目をかっ開く。
体にインクが飛び散っていた。つまり、手品探偵は死んでいた。…ゲーム的にではあるが。
「えっ?はっ?はっ?え」
と手品探偵も起きたばかりらしく、現実を受け入る事が出来ず、パニックになっている。
そこに「はいはい。死人に口なし。何も話すな」メイド探偵はとてもメイドとは思えない乱暴な口調で言った。
それから、推理ゲームの為に死んだ時のままにする必要があるため、手品探偵は首から「死人」と書かれたプラカードをさげたまま椅子に座った。不服そうな顔をしているため、お仕置き中の猫のようで滑稽である。
彼はゲームで被害者として死亡した。そのため、この先議論に参加することができない。
俺が殺されなくてよかったと言う思いで手品探偵を見る。
ペイント弾は彼の体全体に飛び散っていた。
俺はオーソドックス探偵に質問する。
「どうして、こんな急に人が……誰も見ていなかったのか?」
「いや、すまない。実は私も寝てしまっていたのだ。正確には全員だろうが」
全員が寝てしまった。そんな偶然あるものか。
つまり、誰かが自分以外に睡眠薬的なものを盛ったのだ。
俺は机の上を見る。少しコーヒーがのこっているものもあるコーヒーのカップ、砂糖の瓶、クッキーの空き箱が置いてある。その時、残念なことに眠る前と特に変わったことは見つからなかった。
しばらくして、俺以外の探偵はアイコンタクトをし始める。
その様子を見て、きょろきょろしている俺に向かってオーソドックス探偵は言った。
「そろそろ意見の交流でもしましょう」
俺たちは会議フェーズに入った。ここからがこの推理ゲームの肝である。全員で相談していき、事件の真相、犯人が分かり次第手を挙げて推理を披露するのだ。今、犯人が分かっていればどれだけ気持ちの良いことか!
探偵は全員ロビーにある机に集まった。
「今回の事件は非常に分かりやすい。」
そういってオーソドックス探偵は、事件の概要をまとめていく。彼は仕切りたがりなのである。
「我々全員寝てしまうまでここでお茶をしていた。そしてその後、全員が眠ってしまい目が覚めたら、彼が死んでいた……これは偶然だろうか。犯人は自分以外が昼寝を始めたからチャンスだと思い事件を起こした………とてもそうとは考えられない」
一拍呼吸をおく。これは、おそらく全員分かっている。
「つまり誰かが意図的にコーヒーに睡眠薬を盛ったんだ。」
オーソドックス探偵はそう言った。
すぐさま画家探偵は反論する。…無口探偵の方を見ながら。
「いや、コーヒーとは限らない。睡眠薬はスプーンに塗られていたのでは」
皆、無口探偵の方を見る。確かにスプーンを配ったのは彼女だった。
「それなら…………コーヒーカップ………にも……できる」
と小さい声でいった。こいつは分節ごとに区切らないと話せないのか?と俺は思った。
彼女の言い分は確かにそうだ。
オーソドックス探偵は会話の主導権を自分に戻す。
「つまり、今回のカギは犯人はどうやって自分以外の人間に睡眠薬を飲ませたのかということだ」
無口探偵や画家探偵が言った通り、食器類に睡眠薬を塗れば飲む人間を指定することができる。しかし、それでは疑われやすくなってしまう。
犯人は何かトリックを使ったはずだ。
「そういえば、あなたビスケットを食べていたよね」
「ああ。そうだ」
メイド探偵は画家探偵に向かって言った。新しい考えを思いついたようだ。
「ビスケットに気付け薬的なもの混ぜて睡眠薬を無効化したんじゃないの?」
そういう手もあるのか。筋は通っている。
しかし、彼は違う。なぜなら、俺は彼からクッキーをもらったからだ。
「私も食べた」
俺はそう伝えた。「私」と言ったのは念の為である。彼女の一人称に統一することにしたのだ。
メイド探偵が画家探偵を指摘したのを最後に、会議は完全に止まってしまった。探偵どもは考えることができるトリックをみんないってしまったのか。押し黙ってしまった。
皆、突破口を考えているのだと思った。
それからしばらく静寂が続いた。俺は考えても考えても何も出てこないため脳が膿んでいるのではないかと思った。一言で言えば、くるしい。分かる、分からないよりも分かりそうで分からないのが一番苦しいと思った。〈もちろん、一番幸せなのは分からないことが分からないことである。〉
沈黙を破るように…正確に言えば俺の心に向かって言ったため、まだ場は沈黙だったはずだが巫女探偵は言った。
(何で皆コーヒー豆や砂糖に入っているとは考えない?)
さっき言った通りそれは犯人が分かりやすいからであっ…
ん?
ん!
そのセリフを聞いた途端一つ思いつくものがあった。
レバーに引っかかっていた紐が外れ、スイッチがつく。奇妙な例えだが、本当にそんな感じがしたのだ。脳に血液がドバっと流れる。
思わず俺は手を挙げて全員に向かって言った。
「犯人が分かった。」
探偵共はこちらを向く。そして言い訳をする。次の言葉に使うための布石だ。
「失礼ですが、私はこれだけはやってみたかった。」
そして本当なら、オーソドックス探偵がいうべきセリフ、手垢がベッタベタなセリフだが俺は一人に指を指して言った。
「犯人はお前だ」
指の先にいたのはメイド探偵である。
時計を見る。当たり前だが時間は少し進んでいる。
(…………………………………………………………………………………………明度?)
巫女探偵は意外だったのか聞き返してくるようだった。俺は張り切った
それにしてもメイド探偵は明度という名前だったのか。少年誌のように名前がそのままだ。このあだ名で正解だった。
しかし、時間がない。早く推理を終わらせなければ事件を解決出来ずに
「なんでそう思うんだ?」
そう切り出したのはオーソドックス探俺は早口で言う。
「えーまず、スプーンをすでに砂糖に突き刺しておく。この時スプーンは砂糖が入るように深く刺しておく。ここが結構大切になってくるから、覚えておいてくれ。そしてその上から睡眠薬を振りかける。上というのはスプーンとかが刺さったあとの砂糖の層の上になるようにっていう意味。決して、スプーンにかけるとかそういう意味じゃない。この時、えー睡眠薬は混ぜたりせずあくまで砂糖の層と睡眠薬の層が分かれるように、したんだ。つまり犯人はコーヒーに砂糖を一番最初に入れた人間だ。つまり、一番最初にコーヒーに砂糖を入れ始めたのは誰か。メイド探偵だ。だから犯人だ」
「ちょっと待ってくれ。」
「ちょっと………説明が……わかりにくい………」
「順序を追って説明してくれ。あと、メイド探偵ってなんだ?あだ名か?」
時間がないのに!
そう言えるのであればそう言いたかった。本当に。
まずいのは、他の誰よりも言いたいという気持ちが抑えきれず、「犯人はお前だ」とカッコつけて言ってしまった。
このままだと犯人が明らかになったところから逆算してトリックを解く奴が出てくるかも知れない。
こうなったら、巫女探偵に推理の内容を話すしかない。
ほかの人間に推理をとられるのは癪だが他の探偵に言われるのはもっと嫌だ。
いや、そう考えても巫女探偵に推理を話すのは嫌だな。
そうだ。今、俺と巫女探偵は例えとかでなく一心同体。彼女が事件を解決しようが実質俺が事件を解決したことになる。
(なんでそれを一心同体であることを考えないとそう思えないのか)
丁度巫女探偵が俺に向かってツッコミをいれた。もとより、俺はボケているつもりはないが。
おい、巫女俺の推理を聞け。
俺は巫女探偵のためにこの事件の全容をすべてを教えた。
睡眠薬の場所、犯人だけが睡眠薬を飲まなくていいようにするトリック、それらから導き出すことができる犯人は彼女しかいないこと。
分かったか?
俺は巫女探偵に確認をとる。
彼女はイエスともノーとも言わない。大丈夫かともう一度聞き返そうとした、その時だった。
まずい。時間だ。
俺は巫女探偵の体から弾きとばされた。イメージとしては憑依した時と逆のような感じだ。体から熱い寒いといった感覚が消えて、重力が消えふわふわとした感覚に戻ってしまった。
あとは彼女だけでうまくやれるだろうか。
さあ、事件の回答編といこう。残念ながら俺は事件を補助するいわばワトソンだ。
ああ、ワトソンっていうのはコナン=ドイルって人が書いたシャーロックホームズシリーズの登場人物で………
この彼女のために実際に口にだした言葉は途中で詰まって出てこなくなった。なぜなら彼女は「バカにするな」といった表情で俺のことを睨みつけている。おかしい。もう憑依はしていないのに。
場には変な空気が流れていた。犯人が分かったといった探偵がおかしな挙動をみせたのだ。もしかしたら、偽物のそれらしいトリックを話してメイド探偵を疑うように仕向けた…………と思われたのかもしれない。
仕切り直すかのように彼女はわざとらしく咳をした。
俺は考えた。えーっと、自分の推理をどうやって伝えればいいのだろう。
彼女もきっとそうだろう。まずどこから言えばいいか分からないはずだ。
俺はアドバイスを出そうと「まずはみんなの意見」のまとめから始めるか?
そう思っていたら、
「私が犯人だと思うんでしょ?教えてよ」
と犯人のようなセリフをメイド探偵が言ってくれた。
巫女探偵は説明を始める。
「まず、この事件の肝はどうやって自分以外の人間に睡眠薬を飲ませたかというものです。それについては先ほど議論しました。コーヒーに睡眠薬を塗っただとか、食器に睡眠薬を塗るだとか。確かにそれを使うことができれば睡眠薬を飲む人間を簡単に操る事ができます。」
巫女探偵は息継ぎをする。意外にスラスラと舌が回るなと思った。
「しかし、それらの考えには一つ大きな問題があります。それらのトリックを使ったら犯人が限定されてしまうという部分です。ここにいる皆さんはゲームのプレイヤーです。なるべくゲームには勝ちたいでしょう。」
「では、どこに犯人は睡眠薬を入れたんだ?」
オーソドックス探偵が横から割り込んでくる。いい質問である。
「それは………砂糖です。」
「砂糖は皆、飲んだはずだ。砂糖に睡眠薬を入れたら犯人も飲んでしまうぞ?」
画家探偵も会話に入ってくる。
「ある方法を使えば、自分だけ睡眠薬を飲まずに済みます。信じられないなら、トリックは実際に私がやってみましょう」
巫女探偵はキッチンに向かって歩き出す。「そこの下の三段目の棚だ」と俺はトリックの証明に必要なものが入っているところを教える。癪だがここは俺がアシストしよう。一応言っておくが、他の五人は俺の声が聞こえないため、巫女探偵が棚をあさっているだけにしか見えない。推理に支障はない。
巫女探偵が取り出したのは砂糖、コーヒーシュガー、スプーン、コップである。トリックの説明をする。
「まず、さすがに睡眠薬を私は持っていないのでこのコーヒーシュガーを睡眠薬のかわりだと思ってください。このトリックには準備がいります。といってもそこまで難しくありません。まずスプーンの皿部分を砂糖に挿しておきます」
そう言うと彼女はコップに砂糖を入れて、そこにスプーンを挿した。
「次にこのコーヒーシュガー、つまり睡眠薬を砂糖の上にふりかけます。そうすると、この通り砂糖の層と睡眠薬の層に分かれますね」
「そしてこのままスプーンを持ち上げてみてください。すると、」
彼女はスプーン、砂糖、コーヒーシュガーという順番になっているコップからスプーンを取り出す。
「このようにスプーンには元々砂糖が入っているためコーヒーシュガーはスプーンからずり落ちてはいらなくなります。」
スプーンからはコーヒーシュガーだけが落ちた。スプーンにのこっているのは白い砂糖だけである。
「つまり、このコーヒーシュガーを睡眠薬に置き換えたら、最初の一杯は睡眠薬を飲まずに済むんです。」
名探偵共は感嘆の声を漏らした。素直に驚いてもらえるのはうれしい。あとはまとめをしてから、犯人に結びつけるだけだ。
「最初に砂糖を使った人は誰でしょう?明度さんです。なので犯人は明度さんになります。」
全員がメイド探偵の方向を見た。もはや、犯人は確定した。ように思えた。
「ちょっと待ってー。そのトリックを使った証拠はどこにあるの?」
メイド探偵は言い返したのだ。俺は無駄なあがきだと思う。
「砂糖瓶を調べるのです。きっと睡眠薬だという反応が出るはずです。」
すると、画家探偵が手を挙げて言った。
「それは無理じゃないか?だって今から誰かがこの砂糖を舐めたって狸寝入りをするかも知れない。この推理を当っていることにして巫女探偵を犯人に仕立て上げる。こういった手も使えるわけだ。しかし、だからといって全員でこれを舐めるわけにはいかない。もし推理が本当なら、犯人は舐めたふりをして全員を眠らせた後、砂糖を処分してしまうんはじゃないか。」
………あ。そんなこと全く考えていなかった。どうしよう。
「いや、これは一つのことをすれば分かります」
!?俺は何も言っていない。つまり彼女は自分自身の力でその謎を解いたということだ。そうなると彼女は事件の肝を解いた「探偵」になってしまう。そうなると、事件を俺が解くという契約内容に反することになってしまう。
間違っていてほしい。
「それはなんだい?」
オーソドックス探偵はいう。俺も知りたい。
いや、知りたくない。
俺が謎を解くのだ。考えよう。こうなったズルである。この推理ゲームを見下ろしていた経験を生かすのだ。証拠証拠証拠である。まず俺の推理は前提としよう。俺の推理が正しくなければ?俺の推理は正しい。
普通に考えて瓶に砂糖が入ったままということはないはずだ。探偵の誰かが睡眠薬の有無を判別できる技術を持っていたら犯人がバレるまでは行かなくとも、真相にかなり近づかれてしまう。彼らはTPOをゴミ溜めに放り込んだような服装をしているが頭はマトモだ。ミステリー、トリック。そういったことに関しての妥協は一ミリもないはずだ。
分かった。まだ彼女は何も話していない。ぎりだ。ぎりぎり引き分けだ。
……しかし遅くないか。文章にして約300字、原稿用紙にして四分の三枚、こうやって絶え間なく考え続けていたのにも関わらず遅すぎる。
彼女は俺の方を見ている。俺を睨んできている。……………そうかそうか、分からなかったのか。調子にのっていたのか、はたまた俺の尻に火をつけるためのカマかけだったのか。
やはり俺でなければこの謎を解くことはできなかったのだ。
俺は巫女探偵に向かって、そっと答えを教えてやった。
荷物検査だろ?
「荷物検査です」
俺が言った途端に話し出した。やはりな。
オーソドックス探偵は言った。
「荷物検査?全員の荷物を確認するあれ?」
そのままの意味である。巫女探偵は「はい、その通りです」と皮肉のように言った。
オーソドックス探偵は言い返す。
「言っておくが、それは不可能なんじゃないか。睡眠薬はカバンから見つかるはずはない。犯人は犯行後にすべて捨てたりしてしまったと思うぞ」
「カバンから探すのは睡眠薬ではありません……砂糖の瓶です」
ここからの解説は俺がしよう。
犯行時、全員寝ていた。いや、眠らせられていた。そんな証拠隠滅にふさわしいタイミングで、ここにいる相手を出し抜こうと考えている人たちなら睡眠薬の有無を確かめる方法を知っている人がいるかもしれない。砂糖だけ捨てて新しい砂糖を入れる。それならカバンに砂糖が入っているはずだ。
ほかのパターンを考えてみよう。砂糖の処分は簡単だ。しかし砂糖の瓶は処分できない。割ったりしたら大きな音が鳴るし、ゴミ箱から見つかったらそれがトリックに関係しているとバレてしまう。そこで考えられる物はすり替えしかない。このパターンを使ったのなら鞄に砂糖の瓶が入っているはずだ
つまり、どのみちカバンには砂糖の瓶があるはずだ。
その時である。
「せーかい」
メイド探偵はスマホをしながら会話しているんじゃないかと疑うくらい腑抜けた声でいった。俺は今更だが彼女がとんでもない奴に見えた。まぁ、最初から冷静に考えたら、いや冷静でなくても考えたらこの女はイカれている思うが。全員に睡眠薬を盛るなんて。危ないったらありゃしない。
その言葉を聞いて少し間をあけてから巫女探偵は口を開いた。
「なんで告白した?」
そして、メイド探偵はその質問に回答した。
「だって、もうほぼ詰みだったじゃん。私にも見せたくないものくらいあるからね。」
こうしてゲームは終了した。
終わった後は意外とあっさりとしていた。他の探偵共は悔しそうにして、手品探偵はプラカードを外した
その後、メイド探偵はオーソドックス叱られた。「このペンションにおいてある砂糖瓶に睡眠薬を入れるなんて何事だ」と言ったようなことを言っていた。個人的には「人に睡眠薬を使うな。危ない」と思ったがここにいる奴らは筋金入りのミステリーファン、そこにツッコミを入れる人間はいなかった。
ちなみにその後悪びれもせずメイド探偵は言った。
「この瓶は近くの百円ショップで買ったものです。ゲームが始まる前にすり替えて置きました。だからペンションの備品には一切問題はありません。」
睡眠薬の入った偽物を最初から本物とすり替えておき、犯行後に本物の砂糖の瓶を置いておいたというわけだった。
何十年ここで暮らしている俺も気づかないほどそれは本物そっくりだった。ひょっとしたら貴理子は百円ショップで買ったものを使っているのかも知れないと思った。
今回彼女と組むことができたのは彼女に目的が他にあったからで、次回にはもう彼女はいなくなってしまってもおかしくない。もう、このゲームも俺が「探偵」になることができたゲームも終わりかと思うと悲しくなってきた。
これはどうにもならない。柳の下にいつもドジョウはいないというが俺には願うことしかできない。
しかし、この事件の最後の謎を知る権利くらいはあるはずだ。まだ一つ疑問がのこっている。
俺は巫女探偵の部屋へ向かう。そして、壁を貫通して巫女探偵に向かって言った。なるべく悲しさを悟られぬように。
「お前、人に説明する才能があるよ。普段から説法とかするからか?」
「説法をするのは僧侶、巫女とは関係があるようでない」
入ってきた途端に突っ込まれてしまった。
まぁ、もちろんこれはのこっている疑問ではない。本題に入ろう。まわりくどいのは苦手だ。単刀直入に聞く。
「ところでなんでこの同好会に入ったんだ?」
「推理してみろよ。」
そう来たか。それは推理しておいてよかった。
「残念ながら、この探偵には何か成仏しなければならない幽霊を探しているということしか分からない」
俺は勝ち誇ったようにいう。
なんせ、俺が見えている。カバンになぜか入っていた大幣。推理小説のことも分からないのに入った理由。常に着ているおかしな服装(メイド探偵だとかほかのメンバーの話はするんじゃあない。彼らはきっと趣味と仕事だ)それらを考えたら、これしかない。
巫女探偵は眉間にしわをよせたかと思えば、諦めたように巫女探偵は言った。
「この中の六人誰かが悪霊だ」
巫女探偵は続ける。「悪霊?」と俺は聞く
「ああ。お前は幽霊のくせに遭ったことがないのか?悪霊は取り憑いた相手の負の感情を増幅させ、大事件を起こしてしまう、まぁ早い話よくない方に強化された幽霊だ。それを止めるために私は本部から派遣された。」
かなり面白そうなことをやっているらし
「なぜ、お前にこんなことをわざわざ話したか分かるか?もう契約は終わったのだから自分は関係ない。と思っただろう?」
なんのことか分からない。
「その理由は今に話してやろう。契約はまだ終わっていないからだ。」
……?契約内容は俺が謎をとく代わりに体を貸すというものだったはずだ。
といいかけたところで気づいた。
俺は謎を一切解くことができていない
俺は推理終盤で体から弾き飛ばされてしまった。俺は巫女探偵にトリックの概要を教えたあとで。
他の探偵共に事件の真相を伝えたのは誰だ?他でもない。巫女探偵だ。事件を解いたのは巫女探偵だ。
「今回の推理ゲームでは全員が眠らされて想像とは違う形でゲームの時間が長くなってしまった。少なくとも次の推理ゲームまでは契約が延長になってしまったのさ」
そうはいっているが、彼女の狙いは俺を欺き、俺に言われたこと(このままでは疑われる)を一理あると思い、そのまま俺を利用したのではないか。
考えすぎだろうか。底の知れない分そう感じてしまう
俺が契約した相手はとんでもない食わせものだったのかも知れない。
何から話せばいいか俺は言葉に詰まっていると巫女探偵は言った。
「こっちの落ち目だ。そっちに問題はない。問題なのは、この話を聞いて逃げ出すことだ。……逃げ出したら、契約によりお前は消滅するからな」
「悪魔が」と幽霊がいいそうになった。
「そういうわけでしばらく交流することになるわけだが、お前呼びじゃあ忍びない。名前は?」
「分からない。」
「そういうタイプか。それなら、そうだ。お前の名前は『ルヴナン』だ。」
「ルヴナン?どういう意味だ」
「フランス語で幽霊さ。」
彼女は澄まし顔でそういった。
続く




