表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Frange ruinam   作者: S
悪魔編
7/42

封印の地

次回新章です。

ひとまず私達は、天使が使っていた部屋を調べることにした。


部屋の中には、壁一面を埋め尽くす大きな本棚と、書類が山のように積まれた机があった。無造作に積まれた紙束を手に取って確認すると、そのほとんどは《魔界ホテル》や冥界、魔界全体の管理に関する報告書だった。


「……これ、ほとんど業務報告だね」


モラが本棚から一冊引き抜き、ぱらぱらとページをめくりながら言った。


「見た感じ、封印に直接関わるものは無さそう」


私は本棚を眺めながら歩いていたが、その中で一冊だけ、妙に目を引く本があった。


【魔力について】


表紙にそう記された本を手に取り、ページを開く。そこには、魔力を多く持つ者ほど精神が凶暴化しやすい、という記述があった。理性よりも本能が前に出る――そんな内容だ。さらに読み進めると、この世で最も魔力を有するとされる存在として、「破壊神ペルデレ」の名が記されていた。


次のページをめくろうとした、その時。


「こっち来い」


ネブラの声がした。顔を上げると、机の方で手招きをしている。私は本を閉じ、そちらへ向かった。


机の上には、一枚の紙と、小さな小包が置かれていた。紙の表題には、はっきりとこう書かれている。


「封印について」


内容を読むと、本来、封印はそれを施した本人でなければ解除できないらしい。だが例外として、この“鍵”を用いれば、封印を極限まで緩めることが可能だと記されていた。


私は小包に手を伸ばし、そっと開ける。中に入っていたのは、くすんだ青銅色の鍵だった。


「……極限まで、緩めるってことは」


私が呟くと、ネブラが頷いた。


「ああ。完全に解けるわけじゃないだろうな」


「じゃあ、どうするの……?」


モラが不安そうに言った。


その言葉に、ネブラは私へと視線を向ける。


「そこで、お前の力が鍵になる」


「……私?」


思わず聞き返すと、ネブラは小さく笑った。


「考える時間はなさそうだな。スパティアが辿り着く前に動くぞ」


部屋を出て、私たちはすぐに移動の準備を整えた。


「東へ約1200km……」


モラが遠い目をして呟く。


「……めちゃくちゃ掛かりそう」


「三日もあれば着く」


あっさり言うネブラに、モラは目を丸くした。

私は思わず立ち止まる。


「そんなに飛べない……私達、ネブラほど魔力もないし」


「適度に休憩を挟めばいいだろ」


それだけ言って、ネブラは先に歩き出す。


「ここがインフェリア領、北がヴルペス領、南がセラフィス領、西がノクスヴァル領、そして東がシニステル領だ」

ネブラはそう言って、魔界を大まかに説明した。


「シニステル領は、かつて我が住んでいた領地だが……最東端まで足を運んだことはなかったな」


私とモラは顔を見合わせ、そして黙ってその背を追った。こうして私たちは、封印の地へと向かうことになった。


――スパティアよりも先に封印を解くために。


夜、私たちはついにシニステル領へと辿り着いた。辺りは不気味なほど静まり返っている。


「……疲れたぁ……」


モラが、今にも溶けてしまいそうな声で呟く。


「大丈夫?」


そう声をかけると、モラは力なく肩を落とした。


「どこに泊まるの?」


私は前を歩くネブラに問いかける。


「この近くに顔見知りがいる。今から泊まれるか聞くつもりだ」


「いきなり……」


思わず苦笑が漏れる。けれど、この領地で当てのない宿を探すよりは、よほど現実的だった。


案内された先にいたのは、悪魔の夫婦だった。

外見は威圧的で、最初は身構えたが、実際の対応は驚くほど穏やかだった。私たちを拒む様子は一切なく、人間である私にも気遣いを見せてくれた。


彼らは、人間でも食べられる料理を用意し、簡素ながらも清潔な寝床まで整えてくれた。


「ありがとうございます……」


私達は揃って礼を言った。胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなった。


その夜、私は布団に身を沈め、まぶたを閉じた。

どれくらい眠っていたのだろう。


ふと意識が戻り、目を開ける。そこは、完全な暗闇だった。


夜であることを差し引いても、異常なほど暗い。

灯りが消えているだけでは、ここまで何も見えなくなるだろうか。その暗闇の奥に、微かな光が揺れているのに気づいた。引き寄せられるように、私はその光へと近づく。


次の瞬間――


「……っ」


頭が、砕かれるような激痛が走った。思考が一気にかき乱され、視界が歪む。意識が、遠のいていく。私は、そのまま気を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ