表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Frange ruinam   作者: S
スパティア編
43/47

第四十三話 尋問

次の瞬間、視界が切り替わった。雲海の向こうまで広がる、澄み切った景色。ここは――御稜威山だ。


「なるほど。女神に治してもらえってことか」


ネブラがそう呟いた。


「どうしてスパティアが、私達にそこまでするの?」


「……して悪かったな」


私がそう呟いたその時、不意に声が響いた。振り向くと、遠くの方でスパティアが地面に倒れたままこちらを見ていた。


再び視線を前に戻すと、女神パナケイアが私達の前に立っていた。


「人の子と悪魔か。我に何用だ?」


「えっと……治してほしい人が二人いて」


そう言って、私はネブラとモラへ視線を向けた。


「……良いだろう」


その瞬間、私の身体に走っていた痛みが消えた。腹や肩にあった傷が、跡形もなく塞がっている。モラの腹部の傷も同様だった。


「えっ、ここどこ……?」


モラが起き上がり、不安そうに辺りを見渡す。


「感謝する」


ネブラも先程までの苦痛は、すでに消えているようだった。


「それより、神々の間で問題になっていた悪魔は――そこの者だろう」


パナケイアはそう言って、倒れているスパティアを指した。


「こちらで引き取ろう」


「えっと……後でも良いかな」


モラが少し躊躇うように言った。


「何でまさか見逃す気?」


私は眉をひそめた。


「違うよ……。でも、何か事情があったのかもしれないじゃん。それに、聞きたいこともあるし」


「それらは全て、神々の間で処理しよう」


パナケイアが冷たく言い放った。


「それだとダメだよ。何も聞かずに殺しちゃうでしょ。それに……少しだけでいいから、話をさせて」


モラは不安そうに、それでもはっきりとそう言った。


「我も同意見だな。元より、こちらが確保した者だ」


ネブラが淡々と続ける。


「……安心しろ。もう暴れさせはせん」


「……責任は持てよ」


パナケイアは短くそう言い残すと、姿を消した。


静寂が戻る。


「正気なの?」


私はネブラに問いかけた。


「ああ。聞きたいことがいくつかある。……それに、あの状態では何もできん」


ネブラは倒れているスパティアへ視線を向ける。


「回復されたらどうするの?」


「魔力切れを起こしている。すぐには動けん。それに、回復する前に話は終わる」


「ごめんね、ルイーナ。命がけで倒してもらったのに」


モラが申し訳なさそうに言った。


「……別にいいよ。私も、聞きたいことはあるし」


私はそう答えた。


「ここでは人目につく。我の城へ戻るぞ」


そう言って、ネブラはスパティアを担ぎ上げた。

私達はネブラの後を追い、空へと飛び立った。


「あれ?モイラ様、いないよ」


モラは広間を見渡しながら言った。


悪魔の城にいるはずのモイラの姿は、どこにもなかった。


「魂が戻り、ここを立ち去ったのではないか」


ネブラが淡々と言った。


「そういえば前に、碑を渡したよね」


モラはハッとしたように目を見開いた。


「でも、何でここが分かったの?」


「失物神の力だろうな」


「なんか……本当に、いろんな神がいるんだね」


モラが小さく呟いた。


「……それで、スパティアに聞くんでしょ」


私がそう言うと、二人は視線を地面に横たわるスパティアへ向けた。


「……何だ」


スパティアが、掠れた声で言った。


「聞きたいことがある」


ネブラが一歩前に出た。


「……なぜ答える必要がある?」


スパティアは乾いた笑みを浮かべた。


「君達は勝ったんだ。さっさと殺せばいいじゃないか」


それ以上、何を問いかけてもスパティアは答えなかった。


「もう……意地が悪い人だね」


モラが呆れたように言った――その時だった。スパティアの目が、不意に見開かれた。


「……ーレ」


「えっ?」


数秒の沈黙。


やがてスパティアは、小さく息を吐いた。


「……答えられる範囲でなら、答えよう」


そう言うと、どこか遠くを見るような目をした。


「じゃあ、私達が一番気になってることを聞く」


私は一歩踏み出した。


「――何故、こんなことをしたの?」


スパティアはわずかに目を伏せる。


「……それか。少し長い話になるが――」


「じゃあ座るね」


モラは軽くそう言うと、躊躇いなく玉座に腰を下ろした。


「あれは、600年前のことだった」


スパティアはそう言い、ゆっくりと語り始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ