第四十一話 尽力
次の瞬間、視界が白く弾けた。
「――っ!」
反応するよりも先に、体が吹き飛ばされた。地面を激しく転がり、背中を強く叩きつけられる。――何が起きた?
ゆっくりと目を開けると、そこには――
「……ネブラ……?」
ネブラが倒れていた。目立った外傷はないはずなのに、荒い息を繰り返している。
スパティアがネブラを見下ろしながら、口を開いた。
「君を蹴り飛ばして、自分自身も避けたんだよ。器用なことするよね。まあ……少し当たってしまったようだけど」
「……っ」
「我は、計画外の殺しは別にやりたくないからさ」
スパティアはそう言うと、空間を開いた。
「帰っていいよ。君にもう用はないし」
「……帰るわけないだろ」
「何で?」
私はゆっくりと立ち上がる。
「私のやるべきこと――任されたことは、お前を殺すことだ。今度こそ、みんなを殺させない」
言葉が自然に零れた。
一人で倒せるか不安はある。けれど、私は前より格段に強くなっている。それに――こんなに面白いことから、手を引くわけにはいかない。
「かっこいいこと言うね。もう二人とも死んでると思うけど……まあ、邪魔だから死んで」
次の瞬間、空間が無数に裂けた。そこから岩石が、雨のように降り注いだ。
「――っ!」
咄嗟に地面を蹴る。落下の軌道を見極め、隙間を縫うように走り抜ける。避けきれないものは拳で砕いた。視界の端で、地面が次々と抉れていく。直撃すればただでは済まない。それでも、私は速度を落とさず、一直線にスパティアへ向かった。
「……うん?」
スパティアの目が、僅かに細まる。その隙を逃さず、腰を落とし、そのまま全身のバネを使って拳を叩き込んだ。
「チッ」
確かな手応え。スパティアの身体が後方へ弾かれた。だが、倒れない。直後、空間が横に裂けた。そこから現れた何かが私の脇腹を掠め、血が噴き出した。
――まだいける。
スパティアは、すぐに体勢を立て直した。私は距離を詰めて、蹴りを叩き込んだ。防御に回した腕ごと押し込むように、連続で打撃を重ねた。
「……っ!」
スパティアの足が、わずかに滑る。
「余裕じゃなかったの?」
スパティアが、薄く笑った。
「……ふふ」
その瞬間、空間が一気に歪む。上空に、巨大な赤い光の塊が現れた。――あれは、かつて皆を殺したものだ。
だが――
「はぁっ!」
私は地面を強く蹴り、一直線に跳び上がる。落下してくる直前、拳を叩き込んだ。衝突の瞬間、赤い光が歪み、亀裂が走る。
「っ……!」
続けて拳を叩き込んだ。内側から砕けるように、光の塊が崩壊した。赤い粒子が四散する。
スパティアの目が大きく見開かれた。
私はそのまま着地をし、スパティアの腹部へ蹴りを叩き込んだ。受け止められるが、その衝撃でスパティアの体勢が崩れた。間髪入れず、拳を顔面へ。さらに横蹴りで弾き、懐へ滑り込み、腹部へ全力で拳を叩き込んだ。
「……っ、げほっ」
スパティアが血を吐いた。
――やはり、純粋な身体能力は高くない。それに、かなり消耗している。
「お前……奴と関わっているのか?」
「……奴?」
「……やはり殺す」
次の瞬間、足元の空間が裂けた。
「またか……!」
即座に飛び上がる。――ここから離れるわけにはいかない。だが、その一瞬の隙を突かれた。背後からの衝撃。スパティアの蹴りが、背中に突き刺さった。
「――っ!」
身体が前へ押し出される。――まずい。そのまま、私は――空間の裂け目の中へ、叩き落とされた。




