独壇場
膝が折れ、地面に手をつく。吐いた血が、冥界の水面に広がった。
「……ルイーナ!?」
「来ないで」
駆け寄ろうとするモラを制し、私はゆっくりと立ち上がった。視線を上げた先には、無数の魂の群れがこちらを見ていた。
スパティアは、魂を操る能力を持つ。つまり――
「冥界は我の独壇場なのだよ」
スパティアが、そう言い放った。
魂にも能力がある。なら、この場にいる魂は、すべて敵になり得る。さっきまでの数の優位は、もう存在しない。
「ルイーナ、前!」
モラの叫びに反応し、私は正面から迫る光を拳で叩き砕いた。次々と飛んでくる攻撃を避けて、叩き落とす。だが――距離が詰められない。
操られている魂は10体ほど。おそらく同時に操れる数には限界がある。一体一体は、簡単に倒せる。だが――キリがない。
私は迎撃しながら、ネブラの側へ寄った。
「どうするの?このままだと、あいつに触れない」
「スパティアに圧をかければ、操る余裕は消えるはずだ」
ネブラは即答した。
「なるほどね……分かった」
私は頷き、モラの元へ駆け寄った。
「スパティアに突っ込む。援護お願い」
「……無茶言うなぁ。頑張るけど」
その言葉と同時に、モラの魔力シールドが前方に展開された。シールドが壁のように押し出され、迫っていた魂をまとめて弾き飛ばした。
私は地面を蹴った。一直線に、スパティアへ走り出す。魂の攻撃を最小限の動きで避け、間に合わないものは拳で砕く。勢いを殺さず、そのまま突き進んだ。
背後では、モラが次々にシールドを展開し、ネブラが魂を薙ぎ払っている。
その時、スパティアが薄く笑った。次の瞬間――空間が裂けた。
「気に入ってるんだよね、これ」
現れたのはアニムスだった。次の瞬間、奴が手を振るった。その直後、私は身体を弾き飛ばされ、地面に手をついた。
違和感を覚え、視線を落とすと掌が血で濡れていた。ゆっくりと顔を上げる。視線の先ではモラが、倒れていた。
「……モラ……!」
腹部が深く裂けている。わずかに息はあるが、このままでは――
「ルイーナ、前を見ろ」
顔を上げると、ネブラが前に立っていた。
「このままだと、全滅する。やるべきことをやれ」
「……分かってる」
私は立ち上がった。
スパティアは、もう魂を操っていない。その隣に、アニムスがいる。もう、十分ということだろう。
――私の今やるべきこと、それは、こいつらを殺す事だ。




