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Frange ruinam   作者: S
スパティア編
35/39

未来

今回短めで申し訳ないです。

「人間界で、神々にネブラを護衛してもらうっていうのはどう?」


私は二人にそう提案すると、ネブラがすぐに眉をひそめた。


「……何故、我が守られねばならん」


「私達がスパティアより弱いからでしょ……」


モラが苦笑いをした。


「いくらスパティアでも、神と正面から戦うのは厳しいと思う」


ネブラはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……もっとも、神々がその要求を呑むとは限らんがな」


「でも、このままだとまた同じ未来になるよ」


私は二人を見て言った。その言葉に、場の空気がわずかに重くなる。モラは少し考え込んでから口を開いた。


「でも、どの神に頼む?モイラ様は無理だし……私が知ってて、今会えるのは鬼神くらいしかいないよ」


モラは困ったようにそう言った。


「確かに……鬼神は、要求を素直に呑むタイプじゃないね」


するとネブラが、静かに口を開いた。


「他の神も知ってはいるが、スパティアに正面から対抗できる神となれば、鬼神はその一柱だな」


そう言うと、ネブラは踵を返し、歩き出した。


「行くぞ」


突然の行動に、モラが目を丸くする。


「えっ……ネブラが……?」


信じられない、という顔でネブラを見る。


「私達の話、ちゃんと聞いてる……」


ネブラは振り返りもせず、呆れたように言った。


「お前は、我を何だと思っている」


そして、小さく溜息をついた。

私達は、鬼神がいる旧糾縄集落跡へ向かった。


 


私達は、鬼神――ダイモーンに、起こったはずの未来と、スパティアの計画、そして冥界での出来事を話した。聞き終わったダイモーンが鼻で笑った。


「……妄言だな」


「違うよ。本当だよ!」


モラが食い下がる。


「お前には特別な天啓がないだろう。それぐらいしてくれてもいいのではないか?」


ネブラが一歩前に出て、そう言った。ダイモーンの目が、わずかに細められる。


「何故、俺がそんなことをしなければならない」


「そこを何とか、お願いします!」


モラは手を合わせ、そう言った。


「貴様らの妄言に、俺を巻き込むな」


「もう、話が通じないよ……!」


モラは頬を膨らませた。

私は一歩前に出た。


「私は……時間遡行をしました。その先で、魔界と人間界の境界は崩壊しました。人間が滅べば、神もまた消滅します。これは、私達だけの問題ではありません」


私は深く頭を下げた。


「どうか……力を貸してください」


「ルイーナ……」


モラの小さな声が、背後で聞こえる。


やがて――


「時間遡行か……」


ダイモーンが低く呟く。何かを思い出すように、目を細めた。


「……待て。それは――」


ダイモーンは目を見開き、口を閉じた。しばらくの沈黙のあと、ダイモーンは小さく息を吐く。


「……いいだろう。ただし、こちらにも協力してもらう」


「……分かった。感謝する」


ネブラが短く言った。


「そこの人間二人に、仕事をしてもらう」


「何?」


モラが眉をひそめる。


「そこの陰陽師の血の話では、奪われた魂は、悪魔の棲家の中の空間にあったのだろう?」


ゆっくりと言い放つ。


「それを回収してこい」


「でも……前はなかったよね?」


モラが私を見る。


「……今は、開かれていないと思います」


ダイモーンが鼻で笑う。


「見逃していただけの可能性もあるだろう」


そして、一歩踏み出す。


「協力するのだろう?」


その圧に、言葉が詰まる。


「……分かったよ」


モラが息を吐いた。


「行こ、ルイーナ」


そう言って、ネブラの前に手を差し出す。


「鏡、貸して」


「……無くすなよ」


ネブラは静かに鏡を渡した。


モラはそれを受け取り、指先で触れる。次の瞬間、鏡の表面が水面のようにゆらりと波打ち、私達は鏡の中へと吸い込まれた。

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