連携
「模擬戦?」
「神々を屠る前に、スパティアを討てるようにする」
「そのために、もっと訓練をするってことね!」
モラは元気よくそう言った。
「お前ら二人で我に膝をつかせたら、勝ちにしてやる」
「上から目線だな……でも、頑張ろうルイーナ!」
モラはそう言うと、私を見た。
前にも勝てなかったネブラに、膝をつかせることなんてできるのだろうか。それに、ネブラは前よりも格段に強くなっている。――でもそれは、私達も同じことだ。
「そういえば、魔界ホテルも泊まった宿も休業中だね」
「また宿探しかな」
「私達、疫病神かなんかでしょ」
私達は話しながら宿を探した。
翌朝、私達は荒野に立っていた。
「始めるぞ」
ネブラがそう言うと、ハルバードを顕現させ、地面を蹴った。
「っ!?」
一瞬で距離を詰めてきた。鋭い風切り音と共に、ハルバードが振り下ろされる。
私は咄嗟に横へ跳んだ。地面が大きく抉れる。
「速すぎ……!」
モラが目を見開いた。
ネブラは間髪入れず踏み込み、横薙ぎに振るった。振り抜かれた刃を、魔力を纏った腕で弾く。衝撃で腕が痺れた。
「くっ……!」
だが、その間にモラが前へ出た。
「任せて!」
私の前に、垂直の魔力シールドが展開される。
ネブラの突きがシールドにぶつかった。私は地面を蹴り、拳に魔力を集めた。そのままネブラへ突っ込む。
「遅いな」
ネブラは冷静だった。体をわずかに捻り、ハルバードで私の拳を逸らした。そのまま刃が迫る。再びシールドが展開された。刃がぶつかり、火花が散る。
「二人がかりでこの程度か?」
ネブラが口元をわずかに上げた。
その瞬間――モラのシールドから魔力が爆発的に放出された。
「ルイーナ!」
私は全力で踏み込み、拳に魔力を集中させる。拳を振り抜いた。ネブラの腹に――直撃したはずだった。
次の瞬間、目の前からネブラの姿が消えた。
「ルイーナ、上!」
理解するより早く、首筋に冷たい刃が当てられた。
「勝負アリだな」
「それは……どうだろうね?」
私は首元のハルバードを掴んだ。力を込めると、
ハルバードは粉々に砕け、霧散した。
ネブラの表情がわずかに歪む。その隙を逃さない。私は踏み込み、前蹴りを叩き込んだ。
ネブラは腕で受け止める。その背後から、モラの魔力が連続して放たれた。だがネブラはすべて避け、前へ進んだ。
そして静かに口を開く。
「キロプテラ」
その瞬間――視界が暗闇に閉ざされた。耳障りな羽音が、四方八方から迫る。
「えっ、何?」
モラの戸惑う声が響く。
無理もない。この技は、初見では回避しにくい。
だが――私は何度も見てきた。
次々とコウモリを打ち落としていく。だが、いつまで経っても視界は晴れず、攻撃も止まらない。
その時、かすかに足音が聞こえた。ネブラが近づいてきている。どうする――そう思った瞬間。
周囲にドーム状の魔力シールドが展開された。
モラだ。この暗闇でシールドを張るなんて、至難の業のはずなのに。私は足音の方向へ踏み込んだ。
拳を振るう。その瞬間――視界が晴れた。目の前で、ネブラが私の拳を受け止めている。
勝てるかもしれない。
――そう思った瞬間だった。
「ここまでだな」
ネブラが静かにそう言うと、私の背後に、ハルバードが顕現した。次の瞬間、私は弾き飛ばされた。
「ルイーナ!」
顔を上げると、モラの背中に刃が突きつけられていた。
「負けた……」
モラは、溜息をついた。
ネブラはハルバードを消し、口を開いた。
「少しばかりは強くなったと思うぞ」
「ネブラが褒めるなんて珍しい。もしかして魂が違う?」
モラはそう言うと、眉をひそめた。
「慰めてやってるだろ。それに、お前らは厄介なほど連携が取れている。それは、後々生きるだろうな」
「……もしかして、ネブラって本気でやってなかった?」
私が問いかけると、ネブラは不敵に笑った。
「どうだろうな?」
ネブラがそう言った瞬間、轟音が響いた。音のした方向を見ると、悍ましい黒い影――アニムスが立っていた。
「……また」
モラは小さく呟いた。
「あれって土地神のアニムス?」
「そう感じるな」
「どうする、逃げる?」
「いや、あれは無差別に人を襲う。放っておくと多く死ぬだろうな」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「やむを得ない犠牲として土地神を屠るとしよう」
次の瞬間、アニムスが腕を振り上げた。光が一直線にこちらへ放たれる。
「来るよ!」
モラが叫んだ。私は地面を蹴り、横へ飛ぶ。光は地面を抉り、荒野を一直線に裂いた。大地が割れ、土砂が崩れ落ちる。
「威力は上がってるな」
ネブラが淡々と言う。
「でも、当たらないと意味がない」
私は、アニムスへ駆けた。
「モラ、合わせて」
「分かった!」
私が正面から飛び込み、注意を引く。その隙にモラが背後へ回り込む。アニムスが腕を振り下ろす。私は軽く身をひねり、それを避けた。
「遅い」
私がアニムスを蹴り飛ばす。同時にモラが魔力を撃ち放った。黒い体が、抉れる。だが、まだ倒れない。
「所詮はこの程度か」
ネブラが一歩前へ出た。その瞬間、アニムスの体が大きく裂けた。
ネブラはすでに斬っていた。
私達には、その一撃が見えなかった。
アニムスはそのまま崩れ落ち、身体が霧となって消滅した。




