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Frange ruinam   作者: S
魂編
24/40

土地神

宿に戻ると、ネブラはすでに椅子に腰掛けていた。


「あれ、もう帰ってたんだ」


モラが先に声を上げた。

私は扉を閉めながら、ネブラを見る。


「それで、何してたの?」


ネブラはゆっくりと私達を見上げた。その表情は、いつになく真剣だった。


「実はな」


短くそう前置きすると、ネブラは悪魔との会話について語り始めた。


土地神の魂が各地で奪われていること。神々との連絡が次々に断たれていること。そして、その裏にスパティアとアニムスが関わっていることを。


話を聞き終えたとき、私達は無意識に息を呑んでいた。


「あのさ――」


モラがそう言いかけた瞬間、宿の外で地面を揺らすような轟音が響いた。


「……何?」


嫌な予感が、背筋を撫でる。私達は急いで外へと出た。


鼻を刺す、濃い腐臭。視界に入ったのは、倒れ伏した魔たちの姿だった。地面は赤く濡れ、血溜まりができている。


その先に、悍ましい黒い影――アニムスが立っていた。


「ひっ……」


モラは涙を浮かべ、震えている。


私は倒れている魔の一人へと駆け寄った。顔を覗き込むと、闘技イベントで戦ったあの妖狐だった。かすかに息がある。


「大丈夫ですか?」


妖狐の唇がわずかに動く。


「あ……」


直後、光が妖狐の首を真横に切断し、首が跳ね飛んだ。断ち切られた首からドロリと血が噴き出し、熱い飛沫が頬に触れた。


妖狐の生首が、目を見開いた表情のまま、ゴロリと地面を転がった。


ゆっくりと振り返ると、すぐ後ろにアニムスがいた。モラが小さく嗚咽を漏らした。


ネブラが怪訝そうにアニムスを見ている。


「どうしたの?」


疑問に思いネブラに問いかけた。


「魂が以前見たものと違うな」


「どういうこと?」


「この感じ、魂は――」


ネブラがそう言いかけた瞬間、アニムスがこちらへ光を放った。反射的に私はモラを突き飛ばした。


光が地面を抉り、衝撃波が走る。


「モラ、大丈夫?」


「う、うん……」


声が震えている。あんなものを見せられたら無理もない。


「そこにいて」


「……嫌、私も戦う」


モラは真剣な眼差しでこちらを見た。私達は顔を見合わせ、立ち上がった。


次の瞬間、アニムスが再び光を収束させた。


「来るぞ」


ネブラはハルバードを振り抜いたが、アニムスに触れた瞬間、通り抜けた。


――アニムスには"魔力を反発させ、霧散させる”という性質がある。


つまり――魔力を帯びた攻撃は無効化される。

なら、純粋な武力で叩き潰すしかない。


アニムスから、一直線の閃光がこちらに放たれ、肩を掠めた。


「ぐっ……!」


私は、地面に打ち付けられた。起き上がった瞬間、光が視界を覆い尽くしていた。


「……死ぬ」


「ルイーナ!」


そう思った瞬間、モラの叫びと同時に、私の周りにドーム状の魔力シールドが展開された。

直後、光がシールドに当たり、激しい衝突音が響いた。


「ありがと――」


そう言いかけた瞬間、濃い気配を背後に感じた。後ろを振り向くと、アニムスがこちらを見下ろしていた。


そして、アニムスから光が放たれた。


「あ……」


その瞬間、眩しい衝撃が私を襲った。恐る恐る目を開けると、痛みも怪我もなかった。


直後、パキッ……と、何かが割れたような音が響いた。


「ボケっとするな」


ネブラが淡々と言い放った。


私は、アニムスから距離を取った。

ポケットに手を突っ込むと、ムリエルから貰った黒い石が粉々になっていた。


――私を守ってくれたのだ。


「ネブラ、魔力は使わずに」


「分かっている」


アニムスが再び光を収束させる。私はアニムスめがけて走った。


「ルイーナ!?」


モラの声を背に受けながら、加速する。閃光が放たれる、ギリギリまで引きつけ、身体を沈める。光が頭上を通り、熱風が髪を巻き上げる。


懐に入り、右拳を叩き込む。硬い。拳の皮が破け、血が滴り落ちる。体を回して、後ろ回し蹴りをした。


アニムスは体勢を崩しながらも、再び光を放つ。


「退け」


私はその言葉を聞き、咄嗟に後ろに飛び下がった。


入れ替わるように踏み込んだネブラが、放たれた光を紙一重でかわし、アニムスを蹴り飛ばした。巨体が宿の外壁に叩きつけられ、激しい音と共に壁が抉れる。


アニムスは、即座に起き上がりこちらに光を飛ばした。


――まずい。


先ほどの着地で足を挫いて避けられない。


その瞬間、モラが口を開いた。


「任せて!」


私の周りにまたドーム状の魔力シールドが展開された。直後、光がシールドに当たり、激しい衝突音が響いた。


――だが今度は、シールドの表面に大きなひびが入った。


「……早く、お願い!」


モラが息を切らしながら呟く。


「上だ」


ネブラに言われるより早く私は跳んだ。空中で身体を丸め、回転をする。落下の勢いを乗せてアニムスの脳天へ踵落としを叩き込んだ。



アニムスが絶叫するように光を乱した。衝撃波が迫る。両腕で顔を庇いながら踏み込んだ。衝撃で皮膚が裂け、血が飛ぶ。


「終わりだ」


ネブラが背後からアニムスを腕で弾き飛ばした。


アニムスはそのまま崩れ落ち、身体から黒い光が引き抜かれるように溢れ出し、霧となって消滅した。


「終わった?」


「あぁ良くやったな、お前ら」


「大丈夫、ルイーナ?」


「平気、それより魂が違うの?」


ネブラは頷くと淡々とこう言い放った。


「今戦ったものは、土地神の魂の集合体だ」


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