争奪
「もう!」
モラは頬を膨らませながらそう言った。
「……いつまで不貞腐れている」
ネブラはそう言うと溜息をついた。
私は、ふとこの三日間のことを思い出した。
「正面から戦えば、お前は必ず負ける」
ネブラはモラに迷いなく言った。
「上手く立ち回れ。それが、火力で劣るお前にできる戦い方だ」
ネブラは三日間、同じことを言い続けた。モラがどんな顔をしても、言葉を変えることはなかった。
だから今も、モラは拗ねているのだ。
話しながら歩いていると、闘技場前に辿り着いた。女の悪魔がこちらを手招きしている。
「おっ、来た!」
悪魔はニコニコと笑った。
「今回、参加者少なめなんだよね。個人戦で、四回戦しかないけど頑張ってね」
そう言うと悪魔は向こうへ走っていった。
「個人戦ってことは、私達が勝ち残ったら……」
「戦うことになるな」
ネブラは淡々と言う。
「確か、ニ位まで魔力がもらえるんだっけ」
モラがそう言うと、ネブラは頷いた。
「じゃあまたな、ルイーナ」
そう言い、ネブラは笑った。
「私もいるから!」
モラがそう言ったが、ネブラはすでに歩き出していた。しばらくして、モラも闘技場へ向かった。
《一回戦目の6ブロックの参加者は、闘技場にお入りください》
アナウンスを聞き、私は小さく息を整え、闘技場へと入った。そこには、狐が一匹いた。
「野生の狐がいる……」
思わず呟くと、狐はこちらを睨んだ。
「失礼ね。私は高貴な妖狐よ」
狐の体が揺らぎ、次の瞬間、女の姿へと変わる。
「こっちの姿の方が、人間には馴染み深いかしら」
合図と同時に――妖狐は消えた。視界から完全に消失する。消えた?いや、違う。いる。
次の瞬間、背後から魔力が放たれた。咄嗟に拳を当て、魔力を弾く。
――硬い。衝撃が腕を軋ませる。このまま受ければ、折れる。私は力の向きを逸らし、横へ受け流した。
見えないまま、魔力だけが放たれる。避けることはできる。
だが――このままでは、攻撃できない。
違う。存在は消えていない。気配はある。
魔力が再び放たれた瞬間、私は踏み込んだ。
「――ここでしょ」
空間を、拳で殴ると、手応えがした。何もなかったはずの場所から、妖狐が弾き飛ばされ、地面に倒れた。
《勝者――ルイーナ》
淡々とアナウンスと拍手が響いた。
妖狐はよろよろと立ち上がり、こちらを見る。
「あんたなかなかやるわね。強いじゃない」
そう言って、妖狐は笑った。
闘技場を出ると、モラが地面に座っていた。
「その様子だと勝ったの?」
モラの問いに、私は頷く。
「モラも?」
「勝ったよ!」
モラはそう言って、嬉しそうにガッツポーズをした。
「でも、やっぱり見えづらいな」
モラはそう言うと、闘技場の中にいる魔を見つめた。
確か、モラは魔力が少ない。そのせいで、魔が半透明にしか見えないのだった。しばらく話した後、モラは立ち上がり、闘技場へ向かった。
《二回戦目の3ブロックの参加者は、闘技場にお入りください》
アナウンスを聞き、私は小さく息を整え、闘技場へと入った。
そこには、青白い肌に鋭い牙を持つ男が立っていた。――吸血鬼。
「我の相手は人間か」
吸血鬼は、口元を歪めて笑った。
合図と同時に、吸血鬼が踏み込む。速い。
反射で拳を受け止める。そのまま引き寄せて体当たりを叩き込んだ。
吸血鬼の体がわずかに揺れる。だが、すぐに体勢を立て直した。
次の瞬間――私は吹き飛ばされた。背中から地面に叩きつけられる。衝撃が全身に伝わった。
痛い。やはり、俊敏性が明らかに違う。
――だが、見える。まだ追える。
次の瞬間、吸血鬼の姿が消えた。――来る。
必ず仕留められる距離まで近づいてくる。なら――そこを狙う。吸血鬼が再び踏み込む。私は避けず、逆に一歩前へ出た。
「なっ――」
吸血鬼の目が見開かれる。その瞬間、私は胸元を掴んだ。逃がさない。吸血鬼は振りほどこうとする。だが、遅い。
「終わりです」
全身の力を乗せ、拳を叩き込む。鈍い衝撃。
吸血鬼の体が浮き、そのまま地面に叩きつけられた。
《勝者――ルイーナ》
アナウンスと拍手が闘技場に響いた。
吸血鬼はふらつきながら立ち上がり、私を睨んだ。
「本来であれば……我が勝っていたぞ」
舌打ちする。
「運が良かったな」
そう言い残し、吸血鬼は去っていった。
《三回戦目の2ブロックの参加者は、闘技場にお入りください》
アナウンスを聞き、私は小さく息を整え、再び闘技場へと入った。




