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プロローグ
天を割り、地を震わせる者達がいた。
その姿を見た瞬間、敵の心は折れ、戦場に立つだけで勝敗を決めてしまう。歴史が彼らの足跡に合わせて形を変えていった、そんな存在。
名を『勇者』。
剣を抜かずして一国を一夜で滅ぼし、流れゆく時の速度を”遅い”と言い切る者たち、まさに戦神の継承者。
魔王軍の侵攻をことごとく撃ち破り突き進む彼らは全ての魔物から恐れられる存在であり、全ての人類から英雄視される存在だった。
しかし、魔王が討たれた日___
彼らは自ら国を作って王と名乗り、魔王の侵攻の脅威に恐れる必要がなくなった平和な世を支配し始めた。
信頼から服従へ。世が移り変わるのにそう時間はかからなかった。勇者の肖像は国の至るところに飾られ、彼らに歯向かう者、その一族は圧倒的武力の元で虐殺され、気づけば誰も彼らに逆らわなくなった。時が更に経てば支配される世が“平和”だと、誰もが信じ込んでいた。
そしてここはアレミア王国ストル伯爵領『ミレナ村』__
「白い馬車。黒毛色の馬。シオン薬処の看板。やっと見つけたぜ」
黒いローブに身を包んだ黒髪の青年は歩み始めた。視線の先で薬を売る男と少女を見つめながら。
これは勇者が支配する歪んだ世界で生きる全ての種族の物語。




