あっ、やっぱり違うのか
転生とループとパラレルワールド
私には幼馴染がいる。
「でね。学園に入ったら悪役令嬢に邪魔をされても愛を育んで幸せなENDを迎えるのよっ♪」
幼馴染は【私】と同じ異世界で暮らした【前世】の記憶があり、幼馴染は【乙女ゲーム】のヒロインで私は【サポートキャラ】だとずっと言い続けてきた。
【乙女ゲーム】のヒロインだからという理由で実家の手伝いもせず自分の可愛さばかりに磨きをかけていく幼馴染をずっと見続けてきたので、後々厄介になりそうだと思った私は自分も【前世】の記憶があるなんてことは言わないで同じ村で暮らしていた。
幼馴染いわく【私】は【ヒロイン】の【サポートキャラ】だから自分の手助けをしないといけないと言って、面倒な手伝いはすべて私に押し付けていかにも自分がやったように周りに見せている。
だけど、見る人が見ればきちんと気付けるというもの。
「また、コモモが何か言ってお前に押し付けたのか」
同じく幼馴染のザクロが仕事を押し付けられた私に声を掛けてくる。
「カリンも何でコモモの言うことを素直に聞いているんだ?」
ザクロの問い掛けに、そんな素直に聞いているわけではないのだけどと思いつつそっと肩をすくめて、
「あの子の頼みを断ったらあの子に鼻の下を伸ばしている輩に絡まれるのよ。うちの家族だって、あの子の嘘泣きに騙されているから」
スンスンと泣いて父や兄に私が悪いと嘘を教え、最後にそんなことをさせてしまった自分が悪いのよと同情を誘う様にすんなり騙されてこっちを叱りつけてくる家族にはもう期待するのを諦めた。
「魔法学園に入ったらそのまま家に帰らず職を探すわ」
「ああ。それはいい。――コモモの言うとおりになるけど」
魔法学園に入って、運命の相手と出会って恋をしていく。そんなコモモの話が現実味を帯びてくるのが癪だが、魔法学園を卒業すると就職に便利だ。なので縁を切りたいが我慢して魔法学園に入学するのだが――。
「どういうことなのよ~~~!!」
正門の真ん前でコモモが叫ぶ。
「なんでよっ!! どうして……」
何か喚いている幼馴染に巻き込まれるのは面倒だからと遠巻きにして過ぎ去ろうとしたが、あっちからは逃げようとしていた私の姿がしっかり見えていたようで気が付くと目の前に現れてガシッと肩を掴まれた。
「ねえ、なんで【悪役令嬢】が二人いるの……? サポートキャラなら分かるわよね……」
血走った目で告げてくる様はかなりのホラーだ。
コモモの言っている意味が分からない。コモモの肩越しに周りを見ると確かに双子なのだろうかそっくりなご令嬢が並んでこちらを見ていて、一人はどこか怯えたように青ざめている。
たぶん、コモモの知りたい秘密を知っているとしたらあの青ざめているご令嬢だが、コモモは全く気付いていないし、それを教えるつもりもないし、コモモのことだこっちの話を聞こうともしないだろう。
それにしても目立ちたくないのに目立ってしまっているからどうしたらいいのかと助けを求めようと視線を向けると、
「カリンから離れろ」
騒ぎに気付いたのだろう学生寮から慌ててこちらに向かって走ってきて、すぐさまザクロが助けだしてくれる。
「ザクロ……」
「ザクロっ⁉ なんであんたがここに居るのよっ!! 魔法学園には【ヒロイン】である私と【サポートキャラ】しか同じ村出身はいないから、互いに助け合っていくという設定なのに……」
コモモが不愉快そうにザクロを指差す。
「うっせ~。魔法学園は魔力持ちなら誰でも入学資格があるし、学費諸々必要経費は補助してもらえるんだから入った方が便利だろう」
だから入ったに決まっていると告げるとそれ以上コモモに構う気が無いとばかりに私の肩に手を回して、
「カリン。行こう」
と連れ去ってくれる。
「早速やらかしたな。……あいつと二人きりで魔法学園に入ったら、何かやらかすたびにカリンがどれだけ迷惑被るんだよ」
ザクロの独り言のような呟きで、もしかして私を心配して入ってくれたのかと嬉しく思えた。
「ザクロ」
肩に回している手が気になって、つい名前を呼ぶと、迷惑だったのかと慌ててザクロは肩の手を外してしまう。
「ありがとうね」
そんな外した手を追いかけるようにそっと手を繋ぐとザクロの顔がみるみる赤らんでいく。
それにつられて同じ様に顔が赤くなっていく。
「学園生活よろしくね」
照れながら伝えると、
「ああ……」
困ったように相槌を打ってくれる。
同じ村出身の二人で助け合っている間にも、コモモはあちこちの【攻略キャラ】に迫っているようで、何か問題があるたびに、
「サポートキャラなんだから助けてよ」
とそんな時ばかり会いに来る。
「知るか」
迷惑をこうむる前にザクロが追い払ってくれていたので然程被害にあわないうちに、貴族の名誉を傷つけたと怒らせたコモモが罰を受け、無理やり修道院に送られていったと風の噂で聞いた。
話によるとあの双子のご令嬢に向かって、
「バグなんでしょう!! さっさと消えなさいよ!!」
とナイフを向けたとか。
とんでもないやらかしに巻き込まれなくてよかったとホッと胸を撫で下ろした。
「あいつが居なくなって清々した」
「うん……そうだね……」
二人で並んで座る椅子。いつコモモがやって来るか分からない状態だったので常に警戒していたが、やっと解放された。
そう。
「もう、いいよな」
返事を待たずに口付けされる。コモモがいるからとそれらしい雰囲気になっても関係が進まなかったのだが、これでやっと進められる。
コモモを庇っていた家族とも無事縁を切って、これから二人で暮らしていこうと未来の話をしていくつもりだ。
「それにしてもコモモのあの話ってさ……」
「前世とか言っていたけど、実際は妄想か。それともあいつの知っている世界はこの世界と別物だっただけだろうな」
たぶん、そうなんだろうね。
そう。
(妹の知っている乙女ゲームの設定集では、悪役令嬢には双子の妹がいたけど出産時に亡くなっていて、その件もあって傍にいる人に固執するようになったってあったからね)
きっと片割れが死ななかった世界なんだろうな……。
裏設定
カリンは乙女ゲームはしていなかったが妹が設定集まで買うほどのファン。だった。
青ざめていた方の令嬢が本当は死ぬはずのキャラだったが、死んだら片割れが苦しむと察して(実はループしている)根性で死ななかった。
コモモは設定集まで読んでいないから知らなかった。
ザクロはコモモがまともなら村で生活して卒業後カリンと結婚するという設定だけのキャラだった。