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最強のアーティファクト使い、ヘタレ王子に転生す。  作者: サイトウ純蒼
第二章「ヘタレ王子、隣国を制する!」
34/74

34.え、無血開城だって!?

「ふふふっ。待ってろ、セフィアの巨乳美女達」


 王都セフィアの前に並ぶ王国兵。それに対峙しながらリュードは全く別のことを考えていた。それを聞いていたサーラがやや呆れた顔で言う。


「リュード様、変なことを仰らないでください。リュード様は第三王子で……」



「俺は世界の平和を望む。それが例え巨乳美女だろうが誰だろうともだ」


「はあ……」


 早く平和になって世界中の巨乳美女を口説きたい、そんなことは目の前の巨乳美女にはこれ以上あまり言わない方が良いだろう。反対側に居たリーゼロッテがむっとした表情で言う。


「サー様はまだそんなことを言っておるのか? それよりどうじゃ? 500年ぶりに会ったわらわは??」


 そう言ってリーゼロッテが金色のツインテールを軽く手でかき上げる。魔王を討伐した頃よりは確かに乙女っぽくなった。美女と言うか可愛らしさもアップしている。だが、リュードの視線がリーゼロッテの()()()に向けられる。


「ぎゃっ!? サ、サー様はまだ女子おなごの価値をそのようなものに見出しておるのか!?」


 まな板を両手で隠しながらリーゼロッテが言う。


「い、いや、そんな訳じゃ……」


 そう言いながらも明らかに落胆の色が隠せない。リーゼロッテがサーラの大きな胸を指さし言う。



「こんなものは大きくても意味がないんじゃ! スマートに淑やかに、殿方の傍に添うようなわらわのが最高なんじゃ! こんな大きなウシのようなもん、品性の欠片もないわ!!」


 完全に巻き添いを食った形となったサーラが泣きそうな声で言う。


「そんなぁ、酷いですぅ……」


「おいおい、リーゼ……」


 リュードが手を頭にやり困った表情を浮かべる。





 一方、それに対峙する兵士や大臣達は皆が真っ青な顔になってその状況を見つめていた。


「ほ、本当に族長が敵にいる……」


 大臣のひとりが改めてその事実を知り愕然とする。周りの兵士からも不安の声が溢れ出す。



「じゅ、獣人族があんなに……」

「『嘆きの雷帝』が敵にいるんだろ? どうやって戦うんだよ……」


 数でこそ勝っているセフィア王国軍。だが軍の要である猛将ゼルキドが討ち取られ、その配下の獣人族も敵になり、そして切り札であったエルフの族長も今や敵。


「何があったか分からぬが、族長に勝った奴があの中にいるのだろう??」


 落胆の声色で大臣が皆が口にしない事実を述べる。権力闘争に明け暮れ、国益を害してきたツケが今こうしてセフィア王国に圧し掛かる。



「数で、数で押し切れば負けやしない!!!」


 だが恰幅の良いひとりの大臣が皆を鼓舞するように言う。顔つやの良いまだ比較的若き大臣。お通夜のような陣営を見てひとり声を上げる。


「我らは誇り高きセフィアの民。サイラスごとき弱小国に負けるものか!!」


 血気盛んな若き大臣。だがその熱意も冷め切ってしまったセフィア王国軍を熱くすることはもうできなかった。





「やっぱりやっぱりサー様は、乳のデカい女子おなごが好きなんじゃ。わらわはわらわは……」


 涙目になりながら自分の胸を押さえるリーゼロッテ。リュードが困った顔で言う。


「リーゼ、ちょっと落ち着いてだな……」


「そ、そうだニャ。ちょっと落ち着くニャ……」


 見かねたレーニャも一緒になって声を掛ける。リーゼロッテが右手を上げ大きな声で言う。



「うるさい!! もう知らぬ、もう知らぬのじゃ!!!」



 ドオオオオオオオオン!!!!


「うわっ!?」

「ぎゃっ!!」


 同時に天より落とされる巨大な落雷。セフィア王国軍とリュード軍のちょうど中間に落とされた怒りの雷撃は、幸い負傷者は出さなかったものの地面に巨大な穴をぽっかりと開けた。

 リュードがリーゼロッテの頭を軽く叩いて怒り気味に言う。



「落ち着け、リーゼ。それ以上ぐずるなら俺も本気で怒るぞ」


「サ、サー様……」


 リュードの顔を見て脱力するリーゼロッテ。泣きそうな顔で俯き涙声で言う。


「ううっ、ごめんなさい。リーゼはサー様に見て欲しくて、リーゼは……」


 そんなリーゼロッテをリュードは優しく抱きしめ言う。


「分かってる。だが癇癪はダメだよ。いい?」


 リーゼロッテが顔を上げ頷きながら答える。


「はい、サー様……、ごめんなさい……」


 もはや何度も見せつけられている『嘆きの雷帝』のただの乙女化。これまでの彼女とのあまりのギャップの大きさに部下のエルフ達は改めて自分の目を疑う。



「あ、あの……」


 そこへひとりの兵士が慌てて報告にやって来る。リュードが申し訳なさそうに答える。


「あ、ちょっと待ってて。もう少しで終わるから……」


 まだ情緒不安定なリーゼロッテの頭を撫でながらリュードが答えると、兵士が首を振って伝える。


「そ、それが大変なんです」


「どうしましたか?」


 隣にいたサーラが尋ねる。兵士が答える。


「はっ、セフィア王国軍より使者が参りまして……」


 皆の注目が兵士に集まる。



「和平協議を行いたいと、申しております」



「へ?」


 無血開城。それはリュードが最も望んでいた展開。そしてこの先セフィアは、強国サイラス復活に向けその一翼を担うこととなる。

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