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最強のアーティファクト使い、ヘタレ王子に転生す。  作者: サイトウ純蒼
第二章「ヘタレ王子、隣国を制する!」
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27.変態じゃないぞ、巨乳美女が好きなんだ!

「はあはあ……」


 セフィア王国の猛将ゼルキドを倒し、捕らわれた獣人族の家族達の救出、そしてセフィア王城自体に攻め入ることになったリュード達。王城まではまだ数日要し、毎晩野営をしながら行軍している。

 闇夜。汗を拭うリュードに後ろから声が掛けられた。



「戻ったニャ。リュード~」


 それはネコ耳獣人族のレーニャ。野営用の小さなテントの前に立つリュードがそれに答える。


「おかえり。さすが早いね」


「大したことないニャ」


 そう言いながらも嬉しそうな表情のレーニャ。汗だくのリュードを見て尋ねる。


「どうしたんだニャ? 汗びっしょりニャ」


 リュードが額を流れる汗をタオルで拭きながら答える。


「ちょっと鍛えているんだ。この体じゃまともに戦えないから。ふう~」


 そう言ってテントの前の石に腰を下ろすリュード。ここ最近、少しでもサックスに近付こうと密かに毎晩鍛錬を始めている。レーニャがその向かいに座り報告をする。



「そうか、リュードも大変ニャ。それじゃあ早速報告するニャ。ベルベット様もセフィア王城に向かっているニャ。すごく強くてびっくりしちゃったんだけど、もっと強いのが現れたニャ」


「もっと強いの?」


 リュードがレーニャを見て尋ねる。


「そうニャ。魔法使い。エルフの魔法使いで、ええっと確か『()()の雷帝』とか言うニャ」


「苗木? 植樹でもするのか??」


 レーニャが首を振って答える。


「知らないニャ。でもすっごく強いニャ。ベルベット様がまるで敵わなかったニャ!!」


「ふ~ん、そんな訳の分からない奴がいるんだ……、それで長兄はどうなった?」


 レーニャも流れ落ちる汗を拭きながら答える。



「捕まったニャ。部下と一緒に」


「だろうな」


 頷くリュードにレーニャが不安そうな顔で尋ねる。



「リュード、あれはちょっと相手にしない方がいいニャ。何というか、強さがおかしなレベルニャ……」


 数々の裏社会の強者を見て来たレーニャの言葉。その強さは間違いはない。リュードが答える。


「とは言っても、あいつらの家族を見捨てる訳にはいかないんだよな」


「……そうだニャ」


 同じ獣人族。その家族が捕らわれているならレーニャにとっても他人事ではない。



「まあ、でも正直エルフと事を構えるのは避けたいのも事実……」


 リュードの脳裏に金髪ツインテールのエルフの少女の顔が浮かぶ。レーニャが言う。


「そうだニャ。エルフは魔法のエリート。考えただけでも恐ろしいニャ~」


 この時代、魔法全盛期に暮らす彼らにとって、ある意味エルフと言うだけで畏敬の対象にすらなる。リュードが尋ねる。


「それで王城の方はどうだった?」


「ああ、手薄ニャ。きちんと警備ができないほどお城はいい加減だったニャ」


「ほお」


 頷くリュードにレーニャが言う。



「国王はよぼよぼで何も考えられないニャ。大臣が牛耳っている様子だニャ」


「良くあることだな。他に強そうな奴はいたか?」


「う~ん、多分いないニャ。でも……」


 レーニャが何か思い出しながら言う。



「国王の息子が部屋に閉じ込められていたニャ」


「国王の息子が?」


「そうニャ。よく分からんけど、部屋の前にいつも兵士が立って見張っていたニャ」


「兵士が? 幽閉でもされているのか……?」


 考え込むリュード。レーニャが再び尋ねる。



「本当に勝てるのか? あのエルフは本当に強いニャ、リュード」


 リュードが懐から青い石を取り出し、カップを持って言う。


「まあ、何とかなるでしょ。でも、できれば戦いたくないから獣人族の家族だけでも返して欲しいなあ。あと停戦も。あ、長兄も」


 レーニャが笑って言う。


「じゃあ、いっぱいお願いするニャ。レーニャはリュードを信じてるニャ!」



「ありがとう。ああ、そう言えば大切な事を聞き忘れていた」


 真剣な顔のリュード。レーニャも真面目な顔になって答える。


「何だニャ?」


「そのエルフは女か?」


「女ニャ」



「うむ。では彼女は、巨乳美女か?」


「……」


 沈黙。呆れた顔のレーニャが冷たく言う。


「リュードはいい奴なんだが、オスとしてはやっぱダメニャ」


「いや、答えになってないだろう。どうなんだ? 巨乳美女なのか?」


 正直どうでも良くなったレーニャが適当に答える。


「可愛らしい女の子だったと思うニャ。胸は……」


 リュードが身を乗り出し目を見開いて聞く。



「胸はミャーと同じニャ」


「……ちっ」


 レーニャと同じ。つまり『まな板』である。レーニャがむっとして言う。


「今、舌打ちしたニャ!? そんなもん大きくても仕方ないニャ。リュードは変態ニャ!」


 リュードがなだめるように言う。


「まあ、そう気にしなくていいよ。レーニャは可愛いしね。あ、そうだ。のど乾いたでしょ? ほら、飲んで」


 そう言って手にしていた青い石から湧き出す水をカップに注ぎ、レーニャに差し出す。喉が渇いていたレーニャが、不満ながらもそれを受け取り尋ねる。


「それもアーティファクトなのか?」


「そうだよ。旅行中の飲料水や食事の時に使うんだ」


 水を飲んだレーニャが言う。


「美味いニャ。ただの水なのか?」


「ただの水。ただ純度はめっちゃ高いけどね」


「リュードは凄いニャ。やっぱり便利だニャ」


 そう言って水を飲み干すレーニャ。



「うん。でも戦闘用のアーティファクトはもう無くてね。さて、どうしようかな~??」


 そう言いながらもどこか余裕すら感じるリュード。どんなアーティファクトでも戦いに用いる。それが『稀代の天才』と呼ばれた男の矜持。

 楽しそうなリュード。そんな彼をレーニャは話しながらずっと見続けていた。

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