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14.どうしてこんなところに!?

 翌朝――


 朝食を終えると、金髪碧眼の青年と一緒に執務室に三つ目の机を用意した。


 レオナルドは驚いた顔だ。


「それにしても、昨日の今日でもう人材を見つけてきたのかいリリア?」

「ええ、そろそろ来る頃じゃないかしら」

「誰でもいいという訳では無いのだよ? まずは試用期間を設けて、仕事ぶりを見せてもらう」


 探してこいって言ったのもレオナルドなのに、見つけたら見つけたでこれか。


 と、思ったところで扉がノックされた。


「失礼します! おはようございます先輩ッ!!」


 メガネの青年――アルヴィンが入ってくるなり一礼する。


 レオナルドの目が点になった。


「ずいぶん若いな。本当に大丈夫なのか」


 碧眼とレンズ越しの灰色の瞳が交わった。


「あれ? な、なんであなたのような方がこんなところにいるんですか!?」

「おや、君は私を知っているようだが……すまない。失礼ながら、どこかで一度会っただろうか」

「ぼくですよ! メルカート家の四男のアルヴィン・メルカートです! グロワールリュンヌ学園では、いくつかの学校行事をお手伝いさせていただきましたよね! あー懐かしいなぁ! それに嬉しいです! またレオナルド先輩にお会いできるなんて」


 アルヴィンの方から駆け寄って、青年の手を両手でぎゅうっと握ると上下にぶんぶんさせた。


 私と同じ反応になってる。レオナルドってば。


「アルヴィンというと……あのちびっ子アルヴィンなのか!?」

「背が伸びましたから」

「まだ私の方が大きいようだが」

「これからもっと伸びて、レオナルド先輩と肩を並べるかもしれませんよ?」


 二人とも知り合いだったみたい。ということは、アルヴィン君の実務能力は改めて伝えるまでもないってことかしら。


 手を握られっぱなしで、レオナルドが首だけ私に向き直る。


「君、やはりなにかやっていないか? 優秀な人材には間違い無いが……あまりにも都合が良すぎる」

「先日、市場に買い物に行った際に偶然再会したんです」


 レオナルドの手を解放すると、メガネの青年は胸を張る。


「偶然は半分だけっていうか……実は研修先にシルバーベルク支店を選んだのも、リリア先輩の故郷だったからなんです。お会いできるとまでは思っていませんでしたけど。先輩が見て、触れて、暮らしてきた景色を自分もまぶたの裏に焼き付けようと思って」


 そうだったんだ。てっきり好景気だからかと。


「ところでレオナルド先輩はどうしてここに?」

「い、いてはまずいだろうか」


 外面モードのレオナルドが、人なつっこいアルヴィンに少し気圧されていた。


 マーサさんやお父様の前での彼の立ち居振る舞いを見て知ってたけど、うまく相手と距離をつめて、いつの間にかふところに入ってしまう黒獅子様が、逆に突撃されて焦るなんて。


 ちょっとかわいい。


 メガネの青年はブンブンと首を左右に振る。


「とんでもない! あの、もしかしてレオナルド先輩もリリア先輩に買われたんですか?」

「買われた……とは? ええと、リリア。どういうことかな?」


 優しく微笑む黒獅子様。目の奥が笑ってない。


「ちょ、ちょっとアルヴィン君! その言い方だと誤解を生むでしょ!」

「事実じゃないですか。何を焦ってるんですリリア先輩?」

「人材を増やす発案者はそもそもレオナルド様なの! 私はええと……」


 レオナルド、表情筋を一切動かさないまま腕組みしつつ。


「私に責任転嫁しないでほしいな」

「し、してませんから! 買ったというか、口説き落としたんです……はうっ! ええと……その、じゃなくて……スカウト! スカウトのやり方をちょっとだけ、格好良くしようとして……商人なら売買かなって思って」


 どんどん声がしぼんでいった。

 アルヴィンのメガネが朝日を反射して白む。


「で、ぼくが買われたっていうわけです。レオナルド先輩も同じなのかなって思って」

「私は領地運営の勉強のために来たんだよ」

「すごいですレオナルド先輩! 高貴な方というと、どうしても自分に見える高い場所からの素晴らしい景色に満足してしまうイメージがありますけど、殻を打ち破るなんて! それを受け入れるリリア先輩も立派です! ぼく、感動しました!」


 急にこっちに矛先向いた!? 「あ、うん」と気のない返事をしてしまう。油断してたかも。


 レオナルドも「わかった。ともかく一旦落ち着こう」と、言い聞かせるように告げた。


 メガネをかけ直してアルヴィンは私をじっと見つめる。


「はい! では、さっそく取りかかりましょう。リリア先輩! 仕事のやり方を教えてください」


 と、仔犬が新しい遊び相手にじゃれつくみたいにアルヴィンがこっちに向かってくる。その間に金髪碧眼の美男子が割り込んだ。


「私が教えようアルヴィン」

「え? レオナルド先輩が……ですか?」

「おや、不服かな」

「いえ、そんなことはないんですけど。あっ!」


 アルヴィンが何かに気づいたみたいに声を上げると。


「もしかして、お二人ってそういうご関係なんですか?」

「そういうとはなんだい?」

「で、ですから……お付き合いなされているのかと」


 ど、どどどどどうしてそうなっちゃうのよアルヴィンってば!

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