表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
9/133

ああ勘違い その3

どうぞよろしくお願いします。

 「()け」

 「ひぃやぇ?」

 俺の口から思わずヘンテコな声が漏れた。

 この状況はひょっとして、刑務所で新入りが受ける伝説の洗練・・・。

 鬼のごつい手が俺のベルトを器用に手早く外し、ジーンズとパンツが膝下まで一気に引き下げられた。

 「いや〜ん、やみて〜。見ないでぇ〜」

 掘られるのか? 俺、初めて掘られちゃうのか? 初体験なのに。もっとムーディーなら良かったのに。

 って良くねぇよ。

 パニクって心の中で一人漫才をしてしまう俺。

 「おいおい、にーちゃん。可愛いケツを、もじもじ揺するんじゃねぇーよ」

 命令を出していたイケメン鬼が、スーツの右ポケットから、何やら銀色に輝く、金属製のケースらしきものを取り出す。

 ケースの中からは、でかい針のついた注射器が。

 ちょっと待て、(ヤク)か? 薬なのか? 薬漬けにされて犯されるのか?

 でかい注射針が俺のケツに向けられる。

 「それにしてもデカすぎだろ。何だよ、そのでかい針わよぉ」

 直径5ミリはありそうだ。

 この後にもっとでかい注射針が、何本も俺を貫くんだ。きっとそうだ。行きずりの男たちが、獣になって私の上を通り過ぎて行くのよ。

 「すぐ済むからじっとしてろや。いい子だからよぉ」

 情け容赦なくブスリと俺のケツに突き刺さる注射針。

 「いって〜〜」

 絶叫する俺。次はいよいよ・・・。

 絶望の闇が俺を包み込む。

 「はいIDチップの注入終わり」

 どうやらでかい注射針から、管理用のIDチップが注入され、俺のケツの皮下に埋め込まれたらしい。

 「はぁ〜? IDチップだとぉ〜? ビビらせてんじゃねぇ〜よぉ、クソ鬼がぁ。変な想像して覚悟決めちまったじゃねぇか」

 「おぉ。スゲー威勢の良い兄ちゃんだな。ボス、こいつ鬼にしちゃいましょうぜ」

 「うわははは。愉快な奴だなぁ、君はぁ」

 極道鬼が豪快に笑った。笑い声で部屋が震えているようである。

 「気に入った。次に来た時には飯でも喰わせてやろう。たらふく喰って、たらふく飲もうじゃぁないかぁ。活きが良いのが、あちこちにウヨウヨ居るし、新鮮な肉が選び放題だよぉ」

 ゾクリっと俺の背中に悪寒が走る。

 何の肉だよ。嫌だよ、二度と会いたくない。

 俺は心底そう思った。


 俺たちは、ようやく極道鬼から解放され一階へ戻り、外の空気を吸って、ようやく気持ちが落ち着いて来た。

 「何なんだよ。あの極道モンわよぉ。メチャクチャ怖かったよぉ」

 「入獄管理局の局長様だよ」

 「獄卒のお偉いさんか?」

 「バカ、俺ら獄卒と一緒にするんじゃねぇ。あのお方は鬼神様だ」

 確かに本人も局長って挨拶してたけど、極道モンが高級官僚で良いのかよ。しかも鬼神って偉そうじゃないか。

 俺たちは、足早に入獄管理局の建物から遠ざかる。

「これで、お前も立派な亡者の仲間入りだな。どれカルテを見せてみろよ」

 亡者が立派とは思えないのだが。

 「勝手に見るなよぉ」

 俺のピンクのカルテには、表には小地獄への大雑把な道案内と、そこで受けるべき責め苦と期間が記載され、その責め苦に対する罪状が裏面にまで細かい文字で、びっしりと記載されている。

 この表裏に記載されている内容は、この責め苦が終われば、次の責め苦の内容に書き変わるらしい。

 俺は必死でカルテを取り戻そうとするが、次郎丸に軽くあしらわれてしまう。

 「ピンクだから色欲の清算かぁ。あははは、この小悪党」

 俺のカルテを見て大笑いする次郎丸。俺は何も言い返すことが出来ないじゃないか。

 「お前も大概だなぁ。エロ本パクった以外にも色々やってるな。これなんてそんな傑作だぞ」

 勘弁してほしい。俺の黒歴史の数々が公にされるなんて。

 真面目に生きてりゃ良かった。俺は地獄に来て初めて、心底後悔した。

 「タイトルが〈視姦と悪癖〉か。電車で対面の娘のパンツをガン見。それだけなら大した事はないが、家に帰ってノートに写生、ついでに射精ってかぁ。ぎゃはははは二十歳で、この体たらくかよ」

 「漫画を描きたくて、絵の勉強してたんだよぉ」

 それから散々、俺の罪状で楽しむ次郎丸。顔を隠して、しゃがみ込んでいる俺。

 地獄、いやだぁぁぁ。お家うちに帰してぇぇぇ。

 「はぁはぁはぁ、まずは等活地獄からだな」

 笑いすぎで荒い息を吐く次郎丸を殴りたい。

 「もう良いよ。俺、真面目に罪を清算するよ。だから等活地獄って、どんな所なんだよ」

 俺は、恥ずかしさと悔しさで泣きながら聞いた。

 「泣くなよ、みっともねぇなぁ。笑って悪かったよ」

 俺は手の甲で涙を拭う。

どうもありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ