徳を積み己を高めます その7
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇して来ましたので、投稿のペースが落ちちゃいました。
これに懲りず、どうぞよろしくお願いします。
あ、内容の出来にも懲りずに、どうかよろしくお願いします。
撤斎は、小屋に背を向けて、山を駆け下りて行った。
外道丸たちとは、何度か連絡を取り合っていたので、大体の位置は把握している。
まるで狼のように樹間を抜け、岩場を飛び渡り、駆け抜けて行く。
口さえきかなければ、なかなか格好いいと思うんですが・・・。
撤斎は、山を降りると征伐隊を迂回して、その後方へ回り込む。
「外道丸、外道丸」
「おう、撤斎か」
用心深く、こちらを伺う外道丸に、手を振りながら近づいて行く。
「種馬どん、居ったばい。面白げな連中と一緒だったばい」
窪んだ地形に身を潜めていた外道丸たちの真ん中に腰を下ろした。
「その変な連中とは?」
外道丸が聞き返す。
「牛頭馬頭と河童の獣人トリオたい。おコンも入れたら、獣人カルテッグエッ!」
最後は言葉にならずに、首を掛かれた撤斎。バカなことを言うもんだから。
「ふぅ、冗談も通じんとか。まったく」
のそのそと復活した撤斎は、報告を始めた。
「近くに寄っても無線は通じらん。祐介に接触するなら、直に合うしかなか」
「獣人どもは、どんな風だ?」
「うん。なんか変な儀式ばしよった」
「儀式?」
撤斎は外道丸を立たせて実演して見せた。
立った外道丸の股間に向かって正座し、両手を合わせて深々と三回お辞儀をし、一回柏手を打って、もう一回お辞儀をする。
三礼、一拍手、一礼。それを二回繰り返す。
「なんだそれ?」
「俺に聞くな。よう分からんたい」
「と言う事は、少なくともダーリンと敵対する者じゃないわよね」
「どっちかと言うと、崇められとるごとあったな」
「お兄たんを崇めるとは、邪教臭がプンプンなのでしゅ」
「きっとダーリンの何とか神を崇めてるんじゃないかしら?」
「宗教の自由だけん、そら、どぎゃんでん良かばってん、どぎゃんするや?」
いやいや、宗教的価値観が一致するから、あんた達も、和風地獄に送られたんじゃないの?
ん? 死後の世界観さえ一致してれば良いのか? でもその死後の世界で、新興宗教を布教するって、死後の世界そのものを直に弄る事にならないか?
「みんなで出向く。征伐隊より先に接触した方が良いだろう」
愚か者どもは些細な問題など気付く素振りも無く、外道丸が即決する。
みんなも異論はない。
早速、撤斎が先頭に立って案内する。
撤斎の移動速度に難なくついて行く皆も、流石、歴戦の強者と言うべきだろう。
岩場を抜け、樹幹を縫い、皆無言で風のように走る。
やがて、こんもりとした山が見えて来た。
「俺ば睨んでも仕方なかぞ」
麓で足を止めて小屋の方角を指差す撤斎に、険しい眼差しを向けるお蝶であった。こんな回りくどい事をせずに、さっさと連れ出して来なかったことを怒っているらしい。
そこから先は、ひろみちゃんたちを避けながら、ややスピードを落として進んで行く。
「移動は、しとらんて思うばってん、用心に越したことはなか」
小屋に近づく頃には、敵に勘付かれないように、更に慎重に行動する。
気配を殺す事に長けた、おコンが先頭に変わって様子を伺い、小屋と皆んなの中間地点まで戻って手招きする。
小屋は静まっている。
皆は持ち場を手で示しあって、小屋を取り囲むように散って行く。
撤斎が正面に残って、祐介との接触役となる。
のそりと森から出て、やや広く切り開かれた庭を歩いて小屋に近づいて行く。
何気ない足取りだが油断の無い、武芸者の足取りだ。いつ戦闘になっても良いように、視線を走らせ、地形と足場を頭に入れる。
踵から、ゆっくりと足裏全体で地面を感じながら入口へ向かう。
後、数メートルで玄関と言う所で、小屋の中から声がかけられた。
「お、撤斎か!」
声と共に祐介が勢い良く飛び出して来た。
「ぬしゃ、なんばしよったつか。心配させちから」
「わり、わり。お蝶の拷問が怖くて、つい逃げちまった。で、お蝶たちは?」
「ほれ、ぬしが後ろで、苦無ば構えとろが」
「うおぉ」
振り返った祐介は思わず、のけぞった。
「ダーリン、寂しかったわ」
苦無を構えたまま、祐介に走り寄る。
「お、お蝶、俺もだ。寂しかったよ・・・ちょ、ちょっと待って。止まれ。スピードを落とせ!」
「ダーリン!」
お蝶は、祐介に苦無ごと体をぶつける。逃げられないように撤斎と、おコンまでもが祐介を抑え込んでいる。
心臓一突きで息絶える祐介。
「お蝶、勘弁してくれ。俺もあれから反省したんだ」
復活した祐介は素直に頭を下げて、逃げ出したことを詫びる。
「美紗子との事は潜虫のせいであって、俺の本意では無い事は信じてくれるよな。潜虫さえ飲んでいなかったら、美紗子の色香に騙されたりはせん」
「うん。まるっきり信用できない」
「絶対、自主的にハメてた筈でしゅ」
「い、いや、そんなことはない。潜虫を飲まさせれていたことは事実なんだから、仮定の話をしても仕方がないだろう」
お蝶と、おコンを必死でなだめる。
「まあ良いわ。でも私を置いて逃げ出した罪は重いわよ」
「はい、覚悟しています」
外道丸も橋姫も来ており、久しぶりの全員集合である。
「立ち話もなんだけん、小屋に入れちもらおうか」
「おう、上がれ上がれ、みすぼらしくて生臭いボロ小屋だけど」
みんなを招き入れる祐介であった。
どうもありがとうございました。




