徳を積み己を高めます その3
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇しそうなので、今後の更新は間が空いたり一日一回だったりするかもです。
どうぞよろしくお願いします。
“善行、善行、善行”
狩をして、飯を食い。干し肉を作り・・・そう言えば、牛頭馬頭はどうなった?
「親分、この獣人ども、どうするの?」
祐介とバテレンさんは、彼らの様子を見に行く。
哀れな格好で、吊るされたままの牛頭と馬頭。
「うーん、縛りのレパートリーも尽きちゃったし、なんかもう飽きちゃった」
あれから、何度か形を変えて結び直し、散々楽しんだ挙句の、この発言である。
「放すと、また襲撃されるかも知れないし、狭間に捨てるか?」
「おいおい、そりゃ酷いね。あんな所に捨てたら、こいつら何処の異世界に飛ばされるか、分かったもんじゃないぞ」
「ほうほう。それはそれで、異世界で面白おかしく冒険者をエンジョイできるんじゃね? 都合よく美女に囲まれ、鈍感系を装いながら、ラッキースケベを楽しめるという。こいつらが、そんな世界に行けると思ったら、なんか腹立って来た。俺が狭間に飛び込むか」
「んな事あるわけないでしょうが。オドロオドロしい化け物ばかりの、トンデモ世界かもだし、物理法則が異なり、エネルギーの質まで違って、お互い激しく反応しあって、消滅してしまうとか」
「なんだよ、ソレ。全然楽しくないじゃん。行くのやーめた」
「取り敢えず、ソロソロ下ろしてやる?」
吊るした当初に比べると、最近は大人しくなったようで、時折、訴えかけて来るような、哀れな眼差しを、こちらに向けて来る。
「あ! 一つ試してない吊るし方があった。バテレン、手伝え」
ウキウキと牛頭馬頭を下ろし始める祐介であった。どうせロクな考えではないでしょうけど。
「下ろしたらだな、このようにSM結びではなく普通に結んで・・・」
「フンフン、それで?」
「このように縄で輪っかを作って・・・」
「フンフン、それで?」
「こう、枝にかけ・・・」
「・・・フンフン、それで?」
「こう、枝の下に置いた椅子の上に立たせたら・・・」
「おいおい、それは」
「輪っかを首に掛け・・・」
「おいおいおいおい、それはダメって」
「首に掛けたら、椅子を思い切り蹴飛ばせば・・・」
牛頭がゲフッ、馬頭はゴハッ、と一声だけ呻き声を漏らす。
「ネックハングかよ。首吊りじゃねぇか。マジで吊るしてどうするよ。おいおい、下ろしてやれよ、痙攣しちゃってるだろ?」
バテレンさんは、牛頭の体に飛びついて体をよじ登り、枝に掛かった縄を包丁で切ってやった。
次に、馬頭に飛びついて・・・幾ら背が低くて椅子に乗っても、手が届かないとはいえ、首吊りの足を引っ張るような行為も、ちょっと・・・。
「ぎゃははは」
それを見ながら、善行で行くと宣言した祐介が笑い転げている。
「あんたさぁ、ついさっきも善行を積むって言ってなかったっけ?」
「だから積んでるだろう?」
「何処が?」
「仮にも俺は獄卒同様、一度は潜虫を飲まされた身だ。それに、ここは地獄。脱走獄卒に地獄の責め苦を与える事は善行だ。こいつらは獄卒を脱走したから、今は亡者だろ。だったら優しく接する方が、悪行にならないか?」
「理屈は通ってそうだけど、親分の理屈は、いちいち歪んでるよな」
それ以前に、美紗子から逃げ出した祐介も、れっきとした亡者ではなかろうか?
「細けぇこたぁいいんだよ。要は俺の行為が地獄にとって、有益かどうかが大事なんだ。俺の肛門に宿るナル・ア・ナル神は地獄の神様だ。俺は地獄王になる!」
「それって、もう居るよ。閻魔大王だろ」
「あ」
なんとも情けない限りである。
どうもありがとうございました。




