徳を積み己を高めます その1
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇しそうなので、今後の更新は間が空いたり一日一回だったりするかもです。
どうぞよろしくお願いします。
ザッザッザッザッ。
駆け足は続く。いつまでも続く。
ザッザッザッザッ。
もう掛け声すら出て来ない。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
多くの兵隊が顎を上げ、口で息をしている。
我らが徹斎だけは、鍛え上げられた武道家らしく・・・。
「もう、駆け足は飽きたばい。いつまで走らすっとや、ええ加減にしとけよ」
息こそ上がっていないが、さっきから悪態をついている。
「はっつぁんは愚痴が多いなぁ。黙って走ったらいいよぉ」
「そら、大将は馬ん上だけん、楽で良かろうもん」
「それが、そうでもないんだよねぇ。もう、さっきから尻が痛くて痛くて」
馬上で身を捩る。
「久正くーん、休憩しようかぁ」
「チッ、足手纏いが」
ヒゲ隊長が、横を向いて露骨に顔を顰めた。
「ん? なんか言ったぁ?」
「いえ別に。まあいいでしょう。兵も休ませないと、使えないですしね」
全隊に停止を命じて、休息を取らせる。
「よっしゃ、今のうち」
徹斎がコソコソと隊を離れる。
「もしもーし、聞こえるや? 俺たい。オレオレ」
ブレスで念話を送り、返信を待つ。
「聞こえんとや。オレたい、オレオレ」
『どちら様でしょうか。オレじゃ分かりませんでしゅ』
「いや、オレだよ。今、ちょっと困っててさぁ。仕事で失敗しちゃって」
『名前を言ってくださいなのでしゅ。うちには息子は居ないのでしゅ』
「って、面白かばってんが、オレオレ詐欺ゴッコはいらんたい」
『徹斎、ダーリンの居場所は分かったの? いったい、どこまで行くつもりなのよ。駆けっぱなしじゃない』
「おう、お蝶や。種馬どんは狭間とやらに居るてたい。まだ、時間のかかるごたるけん、黙っち付いて来にゃんたい」
『狭間? 何それ、まだ遠いの?』
「よう分からんばってん、あと三日は走らにゃん、て言いよらしたばい」
『そんなに掛かるの? 嫌になるわね。決められたエリア以外で飛んだら、別次元に飛ばされるとか、どれだけ不便なのよ。こんな事なら小地獄から出なきゃよかったわよ。まったくもう。・・・ねぇ、聞いてる? ちゃんと聞いてるの?』
「はいはい。聞いてるよ。ちゃんと聞いてるから。もう少しの辛抱だから、お蝶も我慢しなくちゃ」
『やーだー。私我慢できなーい。ダーリンに早く会いたいぃ』
「もう、お蝶は我儘なんだから。お馬鹿さん」
『気持ち悪いので、小芝居は止めてくださいなのでしゅ』
『本当にお前らは、緊張感がなさすぎだ』
『なんで徹斎は、こういう時だけ日本語で話すの?』
おコン、外道丸が徹斎とお蝶を窘め、橋姫は疑問を口にする。
『つい、イライラして切れちゃった。ごめんなさい。では、まだ駆け足が続くのね」
「まぁ、そういう事たい」
『分かったわ。ちょっと離れてついて行くから、しばらくは連絡しないで、何かあった時だけ連絡してください。では通信終了』
「はいよ。んならば」
“種馬どんが動かんと、よかばってんな”
どうもありがとうございました。




