ここにも、そこにもバカがいる その6
どうぞよろしくお願いします。
少し走っては足を止めて様子を伺う。どうやら化け物は動いていないらしい。
相手は河童一匹と侮っているのだろうか。
前方に、木立の合間からボロい小屋が見えて来た。
「グモッ」
「ブフォ」
不気味な鳴き声が聞こえて来る。やはり二匹のようだ。
どこから突っ込むか。
狭い小屋の中なら、一撃で一匹を仕留めて、そいつが復活するまでに、もう一匹も仕留める自信がある。
三匹以上いたら?
確認が必要だな。それと頑丈な縄を・・・。
ブレスに念を込めて、細いが丈夫な縄を出し、ジーパンのベルトの隙間に捩じ込んだ。
気配を抑えて小屋に近づいて行く。
裸足に地面を感じながら、腰を落とし股を割って、踵からゆっくりとベタ足で音を立てないように、壁に身を寄せるが、体は壁に付けない。壁もボロそうで隙間だらけ。身を付けただけで音がしそうだ。
「ブモッ、ブモッフ」
「ブブル、ヒヒフン」
妖怪語で、会話でもしているのか?
壁の隙間から、中を覗いてみる。
夕闇のように薄暗く、明かりも灯っていない。
よく見えないが、怪しい影は二つ。二匹で間違えない。
入り口に近い方の化け物を刺し殺して、すかさず壁際に寝転ぶ化け物を殺せば、一匹くらいは縄で縛り上げる時間は稼げるかな?
ダメならダメな時、成るように成る。やるだけやってみるさ。
失敗したら飛べば良いしね。
俺は入り口の方へ壁沿いに回り込む。
中腰に扉を押し開け、ススっと侵入して、こちらに顔を向けた一匹の胸に、無造作に刀を差し込む。
「ブモッ」
一声唸ると生き絶える。
刀を抜いて、身を起こそうとしている、もう一匹へ。
「ブモォォォォ!」
「うっそー?」
嘘だろ。もう復活しやがった!
俺は慌てて、ボロい壁に体当たりして、外に躍り出た。
片膝を地面について息を殺す。
「ブヒヒーーーーン」
もう一匹の化け物も、壁を踏み倒すように蹴り破って、飛び出して来た。
「モォーーーン」
もう一匹の牛のような化け物は、ゆっくりと様子を伺いながら出て来る。
「あれぇ。牛頭に馬面?」
見覚えのあるシルエット。
「お前ら牛頭に馬頭だろ? 俺だ、祐介だ。って、ちょっと待てぇ」
ガズ、と地面に打ち込まれる馬頭の野太刀。
「祐介だよ」
俺の事が分からないのか、容赦なく踏み込んでくる。
これ以上、先手を取らせては不味い。
でも、なんだか動きは鈍いな。
素早く後退し、距離を取ってから一気に飛び込んで、左右の籠手を切り落とす。その勢いのまま、牛頭の脛にも、一撃見舞う。
低いうなり声と共に、再び突っ込んで来る。
流石、瞬生の牛頭馬頭。ならば・・・。
俺は小屋を取り囲む木立に向かって走った。斬られたらまずい。再生する間も与えず斬り捲られて、捕縛されたら手も足も出ない。
“手槍”
俺はブレスに強く念じる。
すぐに左手に手槍が現れる。
「くっ」
背後からの切り込みを、間一髪で躱して迎え撃つ。
ジリジリと位置を変えながら、有利な立ち位置を取る。
なぜだか知らないが、奴らは裸に近い。強固な鎧も着ていないから、やりようはある。
“よっしゃ。楽に行けそうだ”
牛頭を正面に捉えて、右手に馬頭を迎え撃つ。
動きが大きく雑で、連携も取れていない。これなら圧倒的に不利な二対一でも、なんとか捌けそうだ。
「えい!」
牛頭の袈裟懸けに合わせて、懐に飛び込むように、思い切り手槍を繰り出す。体をぶつけるように、全体重を乗せて、槍を一気に押し込む。
強かな手応えがあり、牛頭の心臓を貫いた穂先が、その背後の巨木の幹にまで突き刺さっている。
俺は手槍を手放し、右から鋭く突っ込んできた馬頭の野太刀を右肩で受けつつ、左手の刀を心臓に突き刺した。
「ふぅ。想像以上にチョロかったな」
刀を抜かずに、額の汗を拭う。
どうもありがとうございました。




