ここにも、そこにもバカがいる その5
どうぞよろしくお願いします。
「お前の隠れ家は、まだなのか?」
「・・・もう少しだ」
「後どのくらい?」
「・・・カップラーメンが出来るくらい。か、ご飯が炊けるくらい。か、風呂が沸くくらい。か」
「ちょっと待て。まさか、お決まりの迷子じゃなかろうな」
「・・・そんな決まりは知らん」
「おい!」
「何だよ。怪しいやつに付けられていないか、確認するためにだな。遠回りを」
「嘘つけ。目が泳いでるだろう」
「本当だ。不気味な妖怪が出没してるから・・・」
バテレンさんは、辺りをキョロキョロしている。何かを確認するような不安気な顔で。
「確か、こっちから来たから、箸を持つ方に行けば・・・。いや、来る時に箸を持つ方に曲がったから、お椀を持つ方に曲がれば良いのかな?」
水掻きのある、自分の両手を見比べながら首を傾げてしまった。
「おいおい、マジかよ。自分のアジトもわからんのか」
祐介は呆れた顔で項垂れた。
「ん? この石の印は見覚えがあるなぁ」
地面に置かれた石が、矢印状に並べられている。
「あっそうか。迷ったときのために、あちこちに矢印を置いたんだっけ。忘れてたよ」
照れ隠しなのか、ペチペチとハゲ頭を叩く。
「テヘペロみたいな顔しても、全然、可愛く無いぞ。方向音痴め」
祐介はバテレンさんの前に出て、矢印が示す方に歩き出した。
空は闇に覆われ、辺りもぼんやりと薄暗い。
しばらく歩くと、小高い丘らしい影が見えて来た。
丘を覆う森の中、矢印を頼りに進んで行く。
「お、ここは覚えてる。懐かしの我が家の近所だ」
「案内、ご苦労」
『グモォォォォォォン』
『ブヒィィィィィィン』
「キャッ」
取ってつけたような、如何にもな咆哮にバテレンさんは慌てて屈み込む。
「えっ? なになに?」
祐介もバテレンさんに習って身を屈める。
「例の?」
「うん。例の」
バテレンさんは、ガタガタと震えている。
祐介は腰の刀に手をやり身構える。
「やっぱり、隠れ家はバレてたのかな?」
「はぁ?」
「なんか隠れ家の周りで、化け物の気配がするから・・・」
「逃げてきたのか?」
「うん」
「じゃ、なんで戻った?」
「生活習慣病・・・かな?」
「メタボみたいに言うな。まったく・・・まったく爬虫類の脳ミソときたら・・・。しようがない。やるぞ」
「えっ⁉︎」
祐介は、咆哮が聞こえた方へ歩き出す。
“まだ距離はあるはずだ。追われる身としては、不安要素を、これ以上増やせない。排除してくれる”
祐介は、覚悟を決めた。
『グモッ、グモッ』
躊躇する事もなくサクサクと近づいて行く。
流石に等レ16で修羅場を潜って来ただけの事はある。
「お、おい。俺は頭脳派だから、この辺で待機な? な? それで良いだろ?」
「うん。足手纏いだし、この辺で捨てるか」
「キュ? 捨てるって俺の事? ダメだよ? 最後まで飼わないとダメだよ? 責任持って寿命を全うするまで、飼ってあげないと可哀想でしょ?」
「おい。お前は俺のペットか。まぁ良い。化け物退治が終わったら、ちゃんと拾いに戻って来てやるよ。餌は胡瓜か?」
「朝採りの新鮮なヤツね」
祐介は小走りに闇に消えた。
どうもありがとうございました。




