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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第二章 野望編
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ここにも、そこにもバカがいる その3

どうぞよろしくお願いします。

 大して整然とせず、ゾロゾロと進軍を開始する皆の衆であった。

 「モダンな軍服だねぇ」

 ひろみちゃんが、呑気に斎藤衆の軍服に感心している。

 「陸自を参考にしてますから」

 「うーん、動きやすそうだけど、胴とか直垂とか要らないのかなぁ。危なくない?」

 それに比べて、鈴木衆の格好ときたら、てんでバラバラに有り合わせの具足を寄せ集めたようにしか見えない。というか寄せ集めたのだろう。

 「敵は少数で動きも機敏と聞きます。防御よりも機動性重視です」

 「ふーん? そうなんだねぇ。で、久正。どこへ行くの?」

 「目星は付けてあります。ブレスの微弱な信号もキャッチしておりますから」

 「で、どこなのぉ」

 「狭間ですよ」

 「ああ、なるほど。特来の奴、知らずに移動しちゃったんだぁ。まだ、地獄に存在していれば良いなぁ」

 「信号は最近確認したから、多分消えてはいないでしょう」

 久正は鼻の下の髭を軽く撫でた。


 「なんか大事になっとるばい」

 「不味いな」

 物陰から出陣の様子を伺う、怪しい人影。一体誰であろうか?

 「でも、あの人の行方は把握しているようね」

 「流石のお蝶と私でも、捜索は難しいので、ひろみちゃん達の跡をつけるのでしゅ」

 「ばってん、バレんごて尾行するとは、難しいかろ」

 「しかし、やるしかないだろう」

 「そうよ。それとも徹斎に良い考えでもあるの?」

 岩陰に潜む怪しげな人影は、ひょっとして徹斎や外道丸達ではなかろうか?

 「まあ、無かこつもなか」

 「中骨モナカ? 茶菓子でしゅか?」

 「地獄らしゅして、良か名前の最中ばい。ってなんば言いよっとか。こん馬鹿タレが」

 「徹斎は『良い考えが無いこともない』と言っているのよ」

 「流石、通訳のお蝶でしゅ」

 「そんな事はどうでも良い。意見があるなら聞こうじゃないか」

 イライラと外道丸が先を促す。

 「ちょっと俺が潜入してみるばい」

 「おいおい、その格好じゃ無理だろう」

 「それに言葉でもバレるでしょうに」

 外道丸と橋姫が反対するが、撤斎はどこ吹く風である。

 「よかよか、(こま)んかこつは気にすんな」

 「細んかお骨? お兄たんの大きな骨を拾うでしゅか?」

 「『細かい事は気にするな』です。細かくないですよ。そんな格好では無理です」

 「大きな問題なのでしゅ。普通のバカなら気付くレベルです」

 勿論、お蝶も、おコンも反対である。っていうか、普通バレるでしょう。

 「あたどんな、黙って見ときなっせ」

 「あっ」

 「ちょ・・・馬鹿か」

 徹斎は気にせず、立ち上がり、素早く物陰から出ると、堂々と早足に隊列に参加する。

 しかも着流しのまま。

 更に、ひろみちゃんのすぐ側に。

 「みんな逃げる用意・・・、っておい、ひろみちゃんと話をしてるし」


 「おい君はぁ、斎藤家の者なのかなぁ。なんか、いきなり現れなかったぁ?」

 ひろみちゃんが、怪訝な顔で着流しのおっさんに声を掛ける。

 「ばかんこつば言いなすな。人ば幽霊んごつ言うてかる」

 「鈴木衆か? 言葉も通じんし、怪しすぎて判断に苦しむんですが」

 ヒゲ隊長は、当然と言えば当然であるが、不審を露わにしている。

 「僕には覚えがないんだよねぇ。君は誰なのかなぁ?」

 「俺ば忘れたとか? ぬしゃ薄情かねぇ」

 「うーん、その話し方、その風貌、なんか覚えがあるんだけどねぇ」

 「その馬鹿げた風体は鈴木衆でしょうな」

 「ほれ、あたの叔父さんの兄弟の息子の知り合いの、ほれ、なんちゅうたか、徳兵衛、いや、助平、違う違う、はち」

 「八兵衛」

 「そうそう八兵衛、八兵衛の息子で」

 「違った。弥七だった。えっ⁉︎」

 「えっ!? 弥七たい。その弥七」

 「八兵衛って言わなかったぁ?」

 「そうそう、弥七の子分の八兵衛たい」

 「八兵衛・・・ねぇ。覚えがないなぁ」

 ひろみちゃんは、どうにも思い出せなさそうに腕を組んで考え込んだ。

 「ひろみさん、怪しすぎますよ。一味の一人に似たような特徴の奴が」

 「おいおい、俺がこつば忘るっとは酷かなぁ。あの馬鹿タレの弥七の子分だろが。ほらいつまで経っても、風車で遊んでばっかりおる弥七たい」

 「確かに弥七は馬鹿もんだけど、その子分ねぇ」

 浮かぬ顔で思い出そうとするが、やっぱり思い出せない。そりゃそうだ、徹斎だし。

 「ほら去年も宴会で、一緒になって女子(おなご)ば追いかけたろが」

 「ああ、曾祖父さんの昇天祝いの乱痴気騒ぎでコンパニオンを押し倒そうと。・・・僕チン一人だったような?」

 「それそれ、そん時に手足ば抑えて加勢してやったろが」

 「おお、人志・・・違った同志よ。気付かなかったけど、加勢してくれてたのかぁ」

 「あんたら何してるの? 鈴木家は馬鹿ばっか?」

 「なんば言いよっとか。余興たい」

 「そうそう、そうなのよぉ。僕チン女性に無理強いはしないよぉ。オネェちゃんにも、前もって官給品渡しておいたし、余興の演出だよぉ」

 「まったく、あんたら神聖な昇天の宴で何やってんだよ。こんな事だから、官給品格下げされるんだよ」

 ヒゲ隊長は呆れて、吐き捨てたように言う。

 「しかし、はっつぁんは訛りがひどいねぇ。やっぱ誰?」

 「いやいやいや、大分前に西洋のヘルとやらに留学させちもろたろがい。そん時の訛りたい」

 「ああ、そんな事もあった・・・かな?」

 「やっと思い出したや? 宴会の人志だろが」

 「うんうん、同志だね。そうだね。ごめんねぇ」

 「こん、アンポンタンが」

 「ん? 僕ちん外国語苦手だから早口で言われても分からないなぁ。ゆっくり言ってくれる?」

 徹斎はゆっくり、はっきりと言葉を区切って発音する。

 「こ ん ア ン ポ ン タ ン が」

 「コン ア ンポン タンガー?」

 「そうそう、こ ん ア ン ポ ン タ ン が」

 「コン ア ンポン タンガー」

 「ぬしゃ、上手かねぇ。海外旅行も心配なかばい。語学の天才だろ」

 徹斎は真面目な顔である。

 「で、意味は?」

 「で、敵の潜伏場所はどこや?」

 「意味わぁ?」

 「地獄の狭間だ」

 訝しんだ表情のままのヒゲ隊長が答える。

 ひろみちゃんは兎も角、ヒゲ隊長も、こんなに怪しい奴を受け入れるつもりなのか。徹斎の面の皮も凄いが、ヒゲ隊長も、それはそれで凄いな。

 「地獄の狭間か。そら厄介ばい。で、そこは、どぎゃん場所?」

 「意味は・・・まぁ、いいかぁ」

どうもありがとうございました。

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