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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第二章 野望編
67/133

毛根に根性さえあれば、いや想像力の問題でしょう その4

どうぞよろしくお願いします。

 一人と一匹は黙って、とぼとぼと歩き続ける。

 空も風景も道も、ボンヤリとしていて現実感が薄い。

 バテレンさんは、俯き加減に歩く。

 バテレンさんの背丈は、祐介の胸よりちょっと低いくらい。

 「お前、さっきからどこを見ているの?」

 祐介は咄嗟に目を逸らす。

 「・・・」

 「・・・」

 黙って歩く、一人と一匹。

 「おい、どこを見てるんだよ」

 咄嗟に目を逸らす祐介。

 「・・・」

 「・・・」

 黙って歩く一人と一匹。

 「だから、どこを見つめているんだよ。お前の視線が痛てぇんだよぉ。頭頂部がなぁ!」

 「いや、あまりにも見事な皿・・・ハゲなのでつい」

 「何がついだよ。ついじゃねぇよ」

 「それだけ立派なハゲだと、どうしても目が行くだろうが。呪うんなら、自分の毛根を呪え」

 「お前は毛根差別主義者か? 毛根弱者を笑いものにしたいのか? 人権問題だぞ。それ」

 「いや全然。俺、毛根に恨みないし」

 「何言ってやがんだよ。蔑んだ目で見やがって。お前だっていずれ、毛根が不自由になるかもしれないんだぞ」

 「いや、ここは地獄だから、もう禿げる心配はいらないだろ」

 「グッ」

 ぐうの音も出ずに黙り込むバテレンさん。

 「何でバテレンさんは、地獄に堕ちたときにフサフサを願わなかったのか?」


 バテレンさんは、遠い目をして語り始めた。

 「俺たちみたいに、畜生道から地獄に送られた者は、畜生道の記憶や習慣が強くてな。俺は亀だろ。亀に毛があるか?」

 「ケツ毛フサフサの亀がいるだろ」

 「ケケケ、もの知らずめ。あれは苔なの。ケツを不潔にしていると、苔が生えてケツ毛ファイヤーになるんだよ」

 ケツ毛ファイヤーって、確かにあのテの亀の絵は、尻に火がついるようにも見えますが・・・

 祐介はバテレンさんの尻を何とはなしに眺めてみる。

 「おっ、可愛い尻尾発見」

 「キュ、見んなよ。恥ずかしいだろ。エッチ」

 「そこに生殖器が収納されているのか。玉潰しの儀式は面倒だったろうな」

 頬を赤らめ、慌てて甲羅の隙間に尻尾を隠すバテレンさん。

 「イヤ。変な棒を突っ込まれて掻き回されたけど、大した事なかったよ」

 「え⁉︎ 玉潰しが平気って・・・あんた、勇者だな」

 祐介の眼差しが、尊敬の眼差しに変わる」

 「ま、まぁそういうわけで、地獄に送られたときに、人の姿をイメージはしたが、フサフサのイメージが掴めないうえに、亀時代の記憶と相まって、この姿だよ。一度、固定された姿は、二度と修正できないから、俺様は天国でも、ずっと、この姿だ。生まれ変わるまでな!」

 バテレンさんの目尻に涙がにじむ。

 「そうか・・・それは・・・すまん。慰める言葉も浮かばんな。ご愁傷様」

 「クソッ、なんだよ。何で俺を憐みの目で見るんだよ。俺様は伝説の咎人、バテレン様だ」

 「あっ」

 「キュ、今のは無しな。俺は河太郎だ。って、さっきからバテレンさんだの、一匹だの、人を散々バカにしてないか?」

 「え? 人なの? それは、ちょっと無理があるでしょう。どう見ても人外のモノだし、物の怪の類でしょう」

 「お前、ひでぇな。なんだよ。その血も涙もない物言いわよ」

 「それより、俺たち、どこに向かっているの?」

 「比較的安全な、俺様の隠れ家だよ」

 「なんだよ。やっぱりバテレンさんは、この辺に住んでいるんじゃないか」

 「潜伏と言ってくれよ。なんか、そっちの方が恰好良いだろ?」

 「でも、河童だしな」

 「河童じゃねぇよ、ハゲだよ、バテレン禿げ。いやタダの禿げだ・・・バテレンヘア・・・キュウゥゥゥ、それも、なんか違うぅぅ」

 ハゲ頭を抱え込むバテレンさんであった。

 「クソ、毛根に根性さえあれば」

 「いやいや、この観念世界で、毛根さんに罪はない。バテレンさんの想像力不足でしょうが」

どうもありがとうございました。

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