表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
62/133

獄卒も所詮亡者だな その8

どうぞよろしくお願いします。

 「ふははは。面白い、面白いよ。いやはや面白いね」

 その光景を黙って見ていた美紗子が、突然狂ったように笑い出す。

 「この私が、まさかねぇ。まさかこんな種馬に気を惹かれるなんてねぇ。お陰で、この体たらくだ。もう良いわ。もう飽き飽き。鬼神だの大王家だの跡取りだの、もう飽き飽きよ」

 美紗子は、お蝶たちが牛頭馬頭の潜虫を駆除している間に、周りを囲まれ難い玄関横の引っ込んだ(かど)に身を移していた。

 「それにしても、甘く見られたもんだねぇ。さっきは惚れた男が刻まれるショック? で、気分が悪くなっちまったけど〈亡者千人狩り〉の、この私に戦いを挑むなんてねぇ」

 「えっ?」

 思わず声を上げるお蝶。お蝶だけではなく、その場の全員が驚愕の表情を見せている。

 「愛しの種馬君は知らないだろうねぇ。私は昔、志願して兵隊をやっていたのさ。反乱した亡者を狩りまくってねぇ。千人の亡者のうち半分は消滅、半分を廃人にしたところで、伯父様から、大王のことね、魂を消滅させてはいかん、と待ったが掛かって兵隊を首になっちまったけど、過去も現在も最強の兵士は私だよ。どっからでも掛かっておいで」

 そう言うと、俺を左肩に担いだまま、長巻を腰に当てるように右手に持ち、剣先をやや下げて構えた。

 「こいつは誰にも渡さない。私だけのもんさ」

 お蝶が前に出ようとするが、それを制して徹斎がスルスルと前に出る。

 間合いが詰まって来ると、美紗子も右手を腰から離して徹斎の剣先に合わせるように、長巻を前に出して来た。

 「リャーァッ!!」

 徹斎が珍しく、鋭い気合を発して刀を右斜め、やや高めの八相に構え猛然と斬り掛かる。

 美紗子は咄嗟(とっさ)に左腕を斬られる事を嫌い、体を右に捻る。

 「ちょっと待てやぁ。それだと俺まで」

 ザクリと斬り込まれる俺。しかし刀勢は衰えず、そのまま美紗子の左肩を深く斬り下げる。

 驚くことに美紗子は斬りつけられながらも、右手一本で長巻を横に薙いで、徹斎の胴を腕ごと斬って殺してしまった。

 俺の体は四分の三くらい切断され、ダラリと垂れ下がる。

 それからの戦いは壮絶としか、表現出来ない有様であった。

 美紗子は信じられないことに、俺を肩に担いだまま、五人を相手に戦い抜いたのである。

 徹斎さえも、美紗子の兇刃に幾度か殺されて外道丸や橋姫、お蝶、おコンなどは、徹斎以上に殺されまくった。

 美紗子は巧みに俺の体を盾に使って、一度たりとも死ぬことがなかったのである。

 「美紗子さん、いや美紗子様、どうか下ろしてください。メチャクチャ痛いです。痛いですって!」

 「離すもんか。死んでも離さないよ」

 美紗子は覚悟を決めているようだ。手練れ五人を相手に長い時間、戦えない事を最強の戦士は知っている。

 更に見かねた牛頭馬頭が戦列に参加するが、一人相手に人数が多すぎて思うように働けない。

 それでも美紗子にとっては絶望的な戦いである。

 「渡すもんか」

 美紗子は歯を食いしばり、長巻を片手で巧みに扱い、激しく場所を変えながら戦っている。その動きは、同時に複数を相手にしないように、障害物の位置までも計算されたもののように見えた。

 「渡すもんか!」

 時には片足を斬られ、時には長巻を持つ手を斬られたが、その度に、俺の体を盾にして、打ち込まれた刃を左手で掴み、指が斬り飛ばされようとも気にも留めずに、態勢を入れ替え、自分の体を斬らせつつ回復を図り、驚異的な肉体の強さも相まって、死ぬことを知らなかった。

 「死んでも離さない」

 美紗子の目には、涙が浮かんでいる様だ。

 それでも一対七の戦いである。段々、追い詰められて行く美紗子。

 「初めてなんだ。初めて惚れたんだ」

 無残にも角のすぐ脇、額を割られ脳漿を滲ませる美紗子。

 それでも果敢に飛び回り、傷の回復を待つ。

 「二度と離すもんか」

 涙ながらに喚き散らす美紗子。

 「ええい、野郎ども。鬼神は短時間で何度も死ぬことは出来ん。奴らには寿命がある。鬼神は不死じゃなか。同士討ちでもよかけん、捨て身で斬り掛かれ」

 徹斎の叱責(しっせき)が飛び、ようやく戦況が動き始めた。

 最初に徹斎が目潰しを投げつけて、言葉通りに体ごと刀をぶつけるように、美紗子へ突進し、命と引き換えに右肩から胸にかけて深手を負わせ、外道丸が同じように腹を斬り裂き臓物を垂れさせ、橋姫が背中を深々と割って背骨を露出させ、お蝶と、おコンが左右の脇から斜め上に体を貫いた。

 流石の美紗子も、短時間で三、四回は死んだであろう深手を受けて、前のめりに崩れ落ちた。

どうもありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ