獄卒も所詮亡者だな その6
どうぞよろしくお願いします。
お蝶は小太刀を腰に佩き、ブレスに念を込めて苦無を装備出来るだけ装備している。
おコンは、二本の短刀だけのようだ。
外道丸に橋姫も、いつもの装備で、徹斎は・・・徹斎は怪しげな道具をたんまりと念出している。そんなに、どこに隠せるのか疑問なのだが。
「はぁ、まるで武芸者とは思えませんよ。本職の忍者も真っ青だわ。目潰しの鉄粉に、手裏剣、撒菱、礫、他に何を持っているんですか?」
徹斎の装束は動きやすいように、作務衣に似た法被と野袴に変わっている。他のみんなは、革鎧ではなく等活地獄を出た時の身軽な服装に戻っていた。
「我が流派の意義は戦いに勝つ事でな。卑怯者呼ばわりは負け犬の遠吠え。真の戦を知らぬ者の綺麗事さ。生き残るに手段は選ばん。何でもありさ。さすれば我が流派を恐れて争いもなくなる。力こそ平和だ。現に生前、俺が挑戦者を募ったところ、我が威を恐れて一人も挑戦者が現れなんだ。我が師もそれをいたく喜ばれて、これこそ活人剣だなどと、こそばゆいお言葉も頂いたもんさ。ぬわはははは」
つまり勝つためには手段を選ばない。それこそ相手に恐怖を与え、抑止力になると言いたいらしい。自慢にしか聞こえないが。ってかこういう時は、日本語で話すのな。
「さぁ、行きますよ」
お蝶がブレスを構えて、美紗子の別荘を目的地として念を送る。
「作戦通り、一点突破たい。何が出ても、俺の指示なしには戦力を分くんなよ」
徹斎が転移早々、指示を出す。
「しっかし、厄介な別荘たい。こら砦ばい」
「まったくだ。ひろみちゃんが攻めあぐねる筈だよ」
敷地内は転移禁止エリアになっており、移動は自分の足で行わなければならない。
敷地への進入は簡単に行えたが、本丸まではかなり遠い。敷地のあちこちに小さいが櫓があり、ワラワラと守備兵も群がって来る。
徹斎と外道丸が先頭になって守備兵を薙ぎ払い、お蝶とおコンが、散らばった敵を素早く始末して行く。が相手も不死身の獄卒たちである。まるでゾンビ映画のように、生き返っては戦線に復帰しやがる。しかし刃に念を込めて斬り込む事で再生や傷の治りを、少しだけ遅らせる事が出来るが、しかし、それでも戦力に圧倒的な差がある。一点突破。一気に駆け抜けるしか方法は無い。
奴らにも話は付いている。この勢いで行けばなんとかなる筈だ。
石垣を登り、塀を乗り越え、池を渡って本丸を目指す。
「ってどこまで広かとか。まるで城じゃなかか」
徹斎も流石に文句を言い出した。
「もう少しだ、辛抱しろよ」
外道丸が厳しく注意する。
最後の扉をぶち破り、屋敷の前庭へ躍り出た俺たちは、思わず足を止めた。
「なんで居るとか」
「おほほほほ、あんたたちが嗅ぎ回っていたことも、次郎丸から良からぬ情報を得ていることも知っているわ」
美紗子は右手には長巻を持ち、左手を腰に当てて玄関に立ち、得意げにみんなを見下ろしている。
その周りに二人の護衛が刀を持って立っており、少し離れて牛頭と馬頭が野太刀を持って立っていた。
「そして、ここを政府の施設に認定してもらったの。今までは私闘という事で牛頭馬頭も手抜きしてたけど、今からは違うわよ」
牛頭馬頭は、俺たちを見て肩をすくめた。
「それに私の種馬ちゃんは私の言いなり。さぁ、曲者を打ち取っておしまい」
俺は抗いようもなく、玄関の奥から姿を表す。
「愛しのお蝶。寂しかったよぉ〜」
どうやら、恋愛感情は不忠に当たらないようだ。みんなへの仲間意識も大丈夫らしい。
「あなた、もう少しの辛抱よ」
お蝶が、素早く苦無を美紗子に打ち込む。
俺は咄嗟にそれを叩き落とした。しかし、牛頭馬頭は全く動こうとしない。
「おかしいわね。重要施設の筈なのに」
「ははは、こら良かばい。俺たちゃ施設に損害を与えるつもりはなか。確かに侵入者だけん、戦闘は避けられんだろばってん、あんたへの敵意に対しては個人的感情だけん、牛頭馬頭にとっては不忠に当たらんとたい」
徹斎が面白そうに笑っている。
「自分自身を政府要人に指定してもらうべきだったな」
外道丸もそう言いながら、太刀を構えてジリジリと位置取りをしている。
「牛頭馬頭、不法侵入者を排除しなさい」
「ここは公共の重要施設である。謹慎中ながら、警備部所属の我らが指揮に任せてもらおう」
牛頭が意外な事を言い出して、美紗子の顔色が変わった。
「公共施設の警備は、我ら警備部が行う故に、私兵は撤収していただこう。もし、指示に従えないのであれば、有象無象も我らが刃の露といたそう」
今の馬面はやけに格好良いです。
「・・・しようも無い。でもこの者たちは私の護衛。今、私は危険にさらされています。高官の女房として護衛の同行は許してもらえるわね」
キッと眉根を寄せる美紗子。怒った美紗子だが、美しさは些かも失われない。
「可也」
牛頭が頷く。
「ん」
どうもありがとうございました。




