獄卒も所詮亡者だな その5
どうぞよろしくお願いします。
話を戻すと徳右衛門の話では、鬼神と亡者は、鬼神同士のエッチより子供が出来易く、もし美紗子に赤ちゃんが出来れば、大王家の跡取り問題も、地獄を分裂させて血を見る抗争に発展しかねず、それ以上に禁忌を犯した事そのものが、地獄界始まって以来の大スキャンダルとなり、祐介本人もその関係者にも、どの様な災難が降りかかるか分からない。
更には亡者同士の子作りなどは、鬼神との子作りよりも犯してはならない、最大の禁忌らしい。
その詳細は徳右衛門みたいな下っ端には、教えられていないとの事である。
・・・えーっと、でも、次郎丸は気づいてたんじゃないの? しばらく行動も共にしていたくらいだし。バカだから思い至らなかった?
「何にしても、奥方様が思いを遂げる前に、祐介を確保する事だな」
そう言い残して、徳右衛門はどこかへ転移して行った。
なるほど。ひろみちゃんが慌てふためいて裕介の解放に協力するわけだ。
「とんでもない事になったな」
「お蝶にゃショックだろばってん、祐介に子供が出来たら、そん子は大王家の跡取りになるかも知れんたい。そしたら、いずれは祐介どんは、大王の実父。更に王制反対を掲げる共和制の改革派の動きも合わせて、情勢がどぎゃん動くか予測のつかんたい」
「つまり、徳右衛門の言うように、早くダーリンを確保しろ、という事ね」
「そぎゃんたい」
徹斎は、パンと柏手を打って、その場に充満している重たい空気を打ち払った。
「さぁ、考えなっせ」
「お蝶の暗号解読能力も発現した事だし、後は、どうやって祐介殿を取り戻すかだな」
徹斎と外道丸が、みんなの思考を前向きに促した。
「私に案があるのでしゅ」
おコンに何か考えがあるらしい。
「おコン、その案ば言うてみなっせ」
おコンが気をとり直して作戦案を説明する。みんなも、おコンの案に意見を出し合い、細かい修正を加えながら作戦が立てられて行った。
「よし、ならば牛頭馬頭に接触するとは俺の役目たい」
「うん。徹斎が牛頭馬頭に餌をやって手なずけた後に、別荘へ攻め込んで祐介殿が出てきたところを、俺たちが寄ってたかって首を刈り、潜虫を引きずり出せば良いんだな」
「徹斎と外道丸がいれば、間違えなくダーリンを討ち取れますね」
そう言うお蝶の顔は、とても暗くて哀しそうであった。
子作りの合間、食事のひと時。今日は戦闘話に飽きた美紗子が席を立ち、俺と牛頭馬頭の三人だけで語らっている。
「牛頭馬面、なんで俺を庇ってくれた?」
「ひろみちゃんとの戦闘の事か? 種馬が持ちかけた取引が、俺たちの耳にも入ってな」
「そうそう残念ながら、あの時は、ひろみちゃんの回答は聞けなかったが、お前の仲間が聞いている知れない。もう馬面で良いよ」
実はこの時すでに牛頭馬頭は徹斎と接触を果たしていたが、美紗子の下僕である裕介には、それを伏せていたのである。
牛頭馬頭たちは獄卒としての潜虫を飲まされているので、今回の件に関して、拘束は緩いのである。まあ不出来なシステムのお陰でもあるのだが。
「あの時、倒れるお前の近くに五人の人影が湧いた。うまく立ち回っていたので、みんなは、ひろみ軍の兵士だと思ったことだろうよ」
なんてこった。やっぱり、みんな来てくれていたのか。俺は思わず目頭が熱くなった。
「俺が思うに、祐介の仲間は間違えなく、その秘密を聞き出したはずだ。そして必ず俺たち仲間全員を助けに来る。俺たち全員をだ」
「いたのかジロ。ご飯は人間様が終わるまでお預けね」
横から口を挟む次郎丸に、俺は躾を施す。
「ちょっと待てやぁ〜。最近俺の扱いが酷くねぇかぁ」
立ち上がって抗議する次郎丸に俺は冷たく命令する。
「はいはい、ジロお座り」
次郎丸は大人しくお座りをする。
「しかし、なんであの時、ひろみちゃんは俺を助けなかったんだろう。さっさと駆除方法を教えて助けてくれてもよかったのに」
「それは俺たちや他の獄卒にバレるかもしれんだろ。トップレベルの機密事項だろうから、流石のひろみちゃんでも躊躇したのさ」
そう言われれば確かにその通りだろう。しかし、よくお蝶が我慢出来たもんだ。
「だから、お前の仲間たちも前回は無理をせずに手を引いた。お前の仲間の一人が、ひろみちゃんに近づいて何か話していたから、きっとあの後で交渉を再開しているはずだ」
「俺と牛頭も、その情報が欲しい。それでお前とも事前に話を通しておこうって訳さ」
「つまり俺たち、みんながグルになって、ここから逃げ出そうってことで良いんだよなぁ。俺たち仲間だよなぁ」
また次郎丸が話に割り込んで来る。
「俺たちと、お前たちの仲間が接触できたら、その時は・・・」
「みんな一緒に逃げるんだよなぁ。なぁ、誰も置いていったりしないよなぁ」
次郎丸が俺の足にすがりつくが、俺は邪険に振り払う。
「冷てぇぞぉ。祐介、最近冷てぇぞぉ」
「お前、美紗子と俺のを覗いてコイてただろう。発射も出来ないくせに」
その場の空気が、ピンと張り詰める。
これは気不味い。とても気不味い。まるで母親に見られた時と同じくらいに。
「・・・だって、凄いんだもん。奥方様も祐介も・・・悪かったよ。そんな目でみんなよぉ。俺をそんな目で見ないでぇ」
虐めるのも、これくらいにしておいてやるか。しかし、なぜか虐められるたびに、嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
どうもありがとうございました。




