獄卒も所詮亡者だな その4
どうぞよろしくお願いします。
「美紗子って奥方様か?」
お蝶が頷く。
「噂には、とても子供を欲しがっているそうだが、局長は有名な女好きだ・・・女だけじゃ無いけど」
徳右衛門の話に橋姫が苦い顔をする。
「いつも遊び回っていて、奥方様とは随分とご無沙汰らしいぜ。その欲求不満のせいか、やたらと俺や次郎丸に面倒な事を言って来るんだよなぁ。今回の祐介の事にしてもそうだし。業務の間に私用で抜け出すのも面倒なんだよ。地獄の業務をサボったりしたら潜虫の制裁に合うし」
話しぶりからして、徳右衛門は美紗子が自分の潜虫のオーナーだとは気付いていないようだ。
「そぎゃん言うても、亡者は去勢されとるけん。種馬どんに何万年、交尾させても赤子は出来んたい」
「えっ、ダーリンは果てしなく発射してたわよ」
「それは誠か!」
徹斎が立ち上がり、叫ぶように言った。その表情が尋常ではない。
みんなの間に徹斎の緊張が広がる。
「いっぱいいっぱい発射してたの。だからおにぃたんは、他の亡者と違う、栗の花のような匂いや、イカ臭い本物の男の匂いがするのでしゅ」
徹斎は、ドスンと尻餅をついて座り込んだ。
「大変・・・」
徹斎がボソリと呟く。
「大変、羨ましか。おらぁ、まっごつ羨ましかばい!」
「はいはい。良かったね」
みんなに軽くあしらわれる徹斎。このおっさんと来た日にゃ。祐介以上のバカ者である。
「いやいや、それは、本当にマジで大変な事だぞ。お前ら、それを知っていたのか?」
巻き込まれただけの、第三者であるはずの徳右衛門の方が慌てている。
「おコンは、ずっと見て来たの〈漆黒に光り輝くその逸物、暴れん坊将軍こと絶倫丸は鬼神のそれを上回り、精を放つこと止むところを知らず、当たるを幸いヤリ尽くす、絶倫王 吉田祐介〉なのでしゅ」
やはり、おコン。お前が噂を広めた元凶だったんだな。
「まさにマイダーリンは〈精を放つこと止むところを知らず〉だったわ。まさに壊れた蛇口ね。一日に何回、洗浄した事かしら」
お蝶がポッと頬を赤らめた。
「等レ16では、一般常識だな」
「うん。知らないと恥をかくレベルね」
童子組までもが事も無げに言う。
「本当に祐介が有精者だとしたら、えらい事なんだぞ、良いかよく聞け」
徳右衛門が説明を始める。
「マジや、そらヤビャァねぇ。ほんなこつやばかばい。そぎゃんこつんなってみ、そらこん地獄もしみゃたい。そん前に我どんで、どぎゃんかせんば、おっどんも、どぎゃんもこぎゃんもいかんばい」
徳右衛門の話を聞いて、今度は本当に衝撃を受けた徹斎が何かの呪文を喚く。
「よし徹斎、今の呪文の意味を教えてくれ。最強の聖剣でも召喚するのか?」
外道丸が期待の目で徹斎を見る。
そんな訳の分からない皆の中で、理解できた者が一人だけ・・・
「〈それはヤバイです。とてもヤバイです。そんな事になったら、この地獄も終わりです。その前に我らでどうにかせねば、俺たちも、どうにもこうにもいけない〉と徹斎は言っているのよ」
「すっげぇ〜、お蝶マジすげぇ。今の呪文が解読出来るのか?」
お蝶の特殊能力に、外道丸が自分のキャラ設定を忘れるくらい驚いてしまっていた。
「特殊能力じゃないわよ。私は信長公亡き後、秀吉公に仕え、更に清正公に仕えて肥後熊本へついて行ったの。実は徹斎は古代語や異世界語を話していたのではなく、熊本弁を話していたのよ」
って、おいおい、徹斎は地元の方言で話していただけだし、幾ら何でも全員それくらいは気づいていたでしょう。
「ウソだろ? ギャンバッテン国の拠ん所無い方ではなかったのか?」
「徹斎が日本語の一種を話していたなんて」
「驚愕の事実なのでしゅ」
「ぬしたちゃ。肥後熊本、ギャンバッテン国ばバカにしとっど? 国際問題ぞ?」
お蝶は不本意ながら、今後、徹斎の通訳として重宝がられる事となった。
どうもありがとうございました。




