獄卒も所詮亡者だな その3
どうぞよろしくお願いします。
パンツ一丁で呼び出された徳右衛門は、一斉に手足を抑えられ、小太刀を手にしたお蝶に迫られて、わけも分からずに冷や汗を流している。
「ん」
短い気合いもろとも、見事に徳右衛門の首が宙に飛ぶ。
落ちて来る首を拾い、首筋に指を突っ込むお蝶。
「ちょっとグロいな」
「グログロなのでしゅ」
外道丸とおコンが目を逸らす。
「こっちじゃなかったみたいね」
お蝶は「チッ」と舌打ちをして、首を地面に叩きつけた。無残に転がる徳右衛門の首。
今度は胴体の首へ指を突っ込むお蝶。
「流石、首刈りお蝶たい。情け容赦無かなぁ」
徹斎も呆れ顔である。
「有ったわ。有ったわよ。ひろみちゃんの言う通りだわ」
首から抜いた手に、丸いクルミのような物を掴んでいる。
それをみんなに見せて観察する。
「じゃ、再生する前に潰すわね」
彼女はクルミのようなものを床に落として、躊躇無く素足で踏み潰す。
「ゲェ、気色悪いのでしゅ」
おコンは徹斎の陰に隠れた。
でも、おコンちゃんって生で新鮮なモツを頂いちゃう強者ですよね。
「そろそろ再生するわよ」
みんながワクワクしながら、徳右衛門を観察していると、首と体が一旦消失して元通りの体が再生された。
「お前ら、いきなり何しやがる。ビックリするじゃねぇか。まぁ斬り方が上手かったんで、痛みはなかったから良いけどよぉ」
良いんですか? 獄卒が亡者に殺されたんですよぉ。本当に良いんですか?
「な、何だよ。みんなして何ジロジロ見てんの? 止めてよ。そんな目で見ないで」
「等レ16の出入り口へ転移する呪文は?」
「地獄の沙汰は運次第。あっ!」
慌てて口を押さえる徳右衛門。
「あれ? 苦しく無い」
と首を傾げる。
「地獄の沙汰も運次第が呪文です。これはトップシークレットで、喋ろうとしたら、それだけで気を失うし、情報を漏らしたら一週間以内に潜虫がオーナーに密告するので、必ず罰を受けます」
聞きもしないことを、ペラペラと喋る徳右衛門。
「一週間以内に密告? なら私たちが潜虫の秘密を聞き出そうとしたことも、とっくにバレているはずなのに変ですねぇ」
「ハッタリばい」
徹斎は橋姫の疑問にハッタリだと言い放つ。
「営業の鈴木さんも、時にはハッタリも武器になるて言いよらしたたい」
「まぁ小さい事はどうでも良いが、潜虫の駆除の仕方は本当だったみたいだな」
あまりに安易なので、今まで半信半疑だった外道丸が感心してそう言い、踏み潰されたモノをシゲシゲと眺めている。
「おい、聞いての通りたい。ぬしゃ潜虫から解放されたとたい。これからは自由たい」
徹斎が徳右衛門に告げた。
「マジかよ。ありがとよ。本当に感謝するぜ」
徳右衛門は本気でみんなに感謝しているようだ。
他の獄卒と同じように振る舞うよう、巧妙に偽装された美佐子の潜虫を駆除されて、使い捨ての道具にされた一人が解放された。
「で、これからどうすっとか?」
「どうもしねぇよ。これまで通りだ」
「折角潜虫が居なくなったとばい、良かとか?」
「ああ。これで嫌な上司の虐めも怖く無いし、陰愚痴も言い放題だ」
徳右衛門の話では、意地悪な上司や先輩は、部下や後輩に無理やり不忠な事をさせて、苦しむ様を見て楽しんだりしているらしい。
「これからは苦しんでいるフリだけで良いし、その後、うまくすれば体調不良で有給が使える。給料はないけどな。本当にありがとうな。俺の知ってることは全部教えてやるよ」
徳右衛門は感謝の印に、楽しそうに機密事項を話してくれた。
「いや〜、喋りたくてウズウズしてたんだ。秘密を暴露するって、本当に楽しいよなぁ。生前は、それが好きでパパラッチ専門の瓦版を作ってたくらいだからなぁ」
“クズだな” 外道丸の感想
“クズですね” 橋姫の感想
“クズだわ” お蝶の感想
“クズなのでしゅ” おコンの感想
“読みたかぁ” 徹斎の感想
何はさておき、これで祐介を元に戻す事が可能になったわけだ。
「あっそうそう。潜虫の肉体に及ぼす拘束は消えたばってん、これまでに起こった肉体的変化までは戻らんてたい」
「かえって好都合じゃねぇか。いきなり角が取れたりしたら、バレちまうかも知れねぇからなぁ」
「じゃ、こっちも情報ありがとうなぁ。礼を言うよ」
「てやんでぇ。良いってことよ。もう怖いもんなしだ。困った時は、また呼んでくれ」
「でも何で美紗子はダーリンに執着するのかしら。性欲だけが目的なら、もっと沢山の燕を侍らせていても良いはずよね」
お蝶の疑問に、転移しようとしていた徳右衛門が動きを止めた。
どうもありがとうございました。




