地獄でも倫理観は大事だと思うのです その8
どうぞよろしくお願いします。
「おいおい、種馬どんは潜虫ば飲まされたてぞ」
徹斎は、ワクワクしたように唇を舐めて、成り行きを見守っている。
「マズイな。これじゃ奪還出来ないぞ」
外道丸は難しい顔をしている。
「戦闘も激しくなって来たのでしゅ」
「ダーリン、大丈夫かしら」
「敵の下っ端は、大した事なかけんな。何人か強か奴もおるばってん問題なかど。種馬どん・・・道祖神殿には敵わんばい」
徹斎がお蝶を安心させる。
「道祖神は止めてあげて。ダーリンはあのメス豚に手篭めにされているのよ。せめて種馬か絶倫王にしておいてあげて」
それもダメでしょ! やめてあげてよ。
「牛頭馬頭らしき者も見受けられるばってん、ありゃ三味線弾いとるばい」
外道丸も頷き、続けて意見を言う。
「しばらく静観して、どちらかに大きな動きが出てから、対応を考えよう」
戦況は圧倒的に美紗子軍が優勢であった。美紗子軍は真っ黒の革鎧に身を包んでいる。
ひろみ軍の兵隊は、赤い革鎧を着ており、砦並みの別荘を攻めあぐね、打ち取られた兵隊は頑丈な縄で拘束され、祐介の働きもあり、次々と制圧されて行く。
お蝶たちも事前に情報を収集していたので、全員が赤い革鎧を着込んでいた。
「頭ぁ〜。もう保ちませんぜ。退却しましょう」
「ばぁか言ってんじゃないよぉ。僕はこのまま引き下がれないじゃないのぉ」
そう言って、ひろみちゃんは暴れまわる牛頭馬頭に突進して行った。
絵本に出るような、見事な金棒を振り回すひろみちゃんの周りだけは、広々と空間が空いている。流石に亡者上がりの兵隊程度では、鬼神のひろみちゃんには敵わないようだ。
「牛頭ぅ、馬面ぁ。相手しろやぁ」
ひろみちゃんが大声で怒鳴る。大気が震え、その気勢だけで周りの鬼どもの動きが鈍る。
「しようがねえなぁ。馬面、あっちへ誘い込め」
牛頭が指示を出す。
「おう」
「そのまま右へ走って、ひろみちゃんを引きつけろ。俺たちゃ虫を飲んでるから、ひろみちゃんが御用と言うだけで動けなくなるからな。無理すんなよ」
牛頭と馬面が息もぴったりに、ひろみちゃんを誘導する。
「よし今だ。逃げろ馬面」
牛頭と馬面は、俺の後ろに回り込んで遠ざかって行く。
「種馬殿、後はよろしくなぁ」
牛頭が笑いながら、俺に手を振った。
良い笑顔じゃねえか。こんな場面じゃなきゃ、輝いて見えたかもな。
「ひろみちゃん。種馬の奴、休みなく良い仕事してまっせ〜。もうティッシュが一ダースはなくなったんじゃないかな〜。おかげで奥方は、すっかりツヤツヤですよ〜」
「やめろ〜!」
馬面。ぜってぇ〜殺してやる。
目の前には憤怒の形相のひろみちゃんがいる。
「うぬがぁ!!!」
俺は力任せに振り回す金棒を難なく躱す。しばらく防戦していた俺だが、潜虫の仕業か、ついつい反撃を入れ始めてしまった。
華麗に攻撃を躱し、反撃を入れる俺。無様に殴られ続けるひろみちゃん。
しかし、しばらくしてひろみちゃんの動きが変わる。
「いかん。ひろみちゃん、本気になったばい」
両軍の動きが激しくなり、どさくさに紛れて、近くまで来ていた徹斎たちに緊張が走る。
「ダーリンは潜虫を飲まされているらしいから、きっと本気で戦いに行ってしまうわ。精神まで破壊されないと良いのだけど」
ひろみちゃんの手から金棒が離れ、自然なスタンスで優雅に身構える。まるでタイ式ボクシングでもやっているような立ち姿である。
俺も危機感を感じて間合いを開く。本当は戦いたくないのだが、闘志が勝手に沸き上り、体が動いてしまう。
俺は思い切ってある事を聞こうと思った。その瞬間、俺の全身を味わった事がないような激痛が走った。
「う、うがぁ」
それでも、何とか気力を振り絞る。
「潜虫の駆除、・・・俺は・・・にげ・・、奥方を・・解放・せ・・・る」
俺は必死で、そこまで言って気を失った。気を失う一瞬前に、お蝶の気配を身近に感じた気がした。
外道丸に橋姫、おコンもいたようだ。そしてもう一人、徹斎かな?
俺は、ひょっとして助かるの?
目が覚めると見慣れた寝室の天井が見える。
「はぁ〜、いつものエッチ部屋かぁ」
俺は激しく落胆した。
しかし、こんな大騒動してまで俺とエッチをしたいのだろうか。俺に死ぬほど惚れたというのなら分からんでもないが、最初から俺の体が目的だったように思える。
何かが引っかかる。俺の心に何かが引っかかる。
牛頭も気になる事を言っていた。その前にも、何か気になる事を聞いていたような気がする。
点と点が繋がりそうで繋がらない。もどかしさに頭を掻き毟る。
「禿げるわよ」
「禿げねえよ!」
気付かなかったが、美紗子はずっと俺の横に添い寝をしてくれていたようだ。
「美紗子、そんなに俺が心配だったのか?」
「そりゃそうよ。私、早くあなたと子作りしたくて」
何て下品な。俺は、お蝶との愛を守る。
「ふっ。しばらく、その気になれそうもないな」
美紗子は黙って俺の股間に顔を埋めた。
“ごめん。出来ない。俺には無理だ”
俺は呆気なく復活し、またまた三日三晩、子作り三昧の日を送ることとなった。
どうもありがとうございました。




