地獄でも倫理観は大事だと思うのです その7
どうぞよろしくお願いします。
お蝶たちがつまらないことで盛り上がっている頃、俺たちは面倒ごとに巻き込まれていた。いや、俺は当事者そのものか。
「ひろみ軍が攻めて来たわ。さあ防衛軍の出動よ」
何故か分からないが、等レ16を出てからなのか、潜虫を飲んだ後からなのか、俺の体力も精力も一段とパワーアップしていた。
俺は、この別荘へ来て休みなく、コッテリと三日三晩、美紗子の相手をさせられているが、未だに衰えを見せない。
「美紗子、行くのか?」
そう、ひろみちゃんの奥様は早乙女美紗子。ちなみに、ひろみちゃんは婿養子らしい。
美紗子はベッドから身を起こして、ガウンを羽織ると寝室を出て行った。残された俺も、Tシャツにジーンズをはいて部屋を出る。
「ジロ、お前は部屋掃除な。この間は使用済みティッシュが落ちてたから、念入りにやれよ。もし不手際があれば飯抜きな」
ドアの外で床に座る次郎丸に掃除を言いつけて、俺は美紗子の後を追った。
「ご主人様、畏まりました」
光を失った瞳で土下座する次郎丸。なんとも哀れを誘う姿ではある。
美紗子は司令室に改造されている、リビングのソファーに陣取っていた。
リビングには俺たち以外、誰も居ない。
俺は美紗子の足元に座り、ガウンからはみ出た太ももを両手で撫でさすり、舌を這わせる。
「うふふ、さすが種馬。まだ食べ足りないの?」
美紗子は俺の頭を優しく撫でる。
「あぅん」
すっかり潤んだ美紗子を、俺の指がねっとりと撫で上げる。
「美紗子、大丈夫か?」
「ちょっとマズイわね。牛頭馬頭が出動しているけど動きが悪いわ。あなたも出てくれる?」
「えっ、俺も?」
「大丈夫。ひろみちゃんは牛頭馬頭に任せておけば良いの。あなたは下っ端を殺って頂戴」
俺は仕方なくガウンから手を抜いて部屋を後にする。
なんてこった。潜虫を飲んでから俺は、すっかり美紗子の奴隷じゃないか。
俺はトボトボと外へ出る。
「おいおい、牛頭、馬面。お前達が働かないから、俺様まで駆り出されちまったじゃねぇか」
俺は長い野太刀を肩に担いだ牛頭と馬頭に声をかけた。
「よく言うぜ。元はと言えば、お前らが持ち込んだ問題じゃねえか」
牛頭が答える。
「あっ、そうそう聞き忘れてたけど、お前らを数えるときは、一匹二匹で間違えないよな。なんせ頭部が牛と馬だから、アイデンティティの元締めである脳味噌が家畜なんだ、グェ!」
ドカバキ。はい、確実に一回殺されました。
二人から聞いた話では、牛頭も馬頭も、おコンと同じように、死んですぐに畜生道へ堕とされたそうだ。
「おい種馬。馬鹿なこと言ってないで、お前も軍隊に入れるだけの実力はあるんだろう? 下っ端の相手くらい出来るんだろうな」
馬面が疑い深そうに聞いてくる。
「さぁな。徹斎に言わせれば、まだまだヒヨッコだそうだ」
確かに精力の噂が表に立つ俺の、戦闘での実力は等レ16以外では知る者も居ない。
「まぁ何でも良いが、俺たちは適当に時間を潰す。こんな夫婦喧嘩にワザワザ本気で付き合う義理はないからな」
「そうそう馬面の言う通りだ。本気で戦って、ひろみちゃんの恨みを買うのも馬鹿げているからな。匿われている手前、多少は働くがな」
「馬面言うなぁ!」
「確かに馬面の言う通りだな。美紗子に虫を飲まされた俺は、本気で行かないと仕方ないが、お前らはとんだ災難だな」
「だから馬面言うなぁ!」
「俺たちが飲まされたのは、地獄に忠誠を誓う虫だから、こんな私闘は関係ない。しかし、お前だって毎日休みなく変態女に迫られて、ご苦労なことだぜ。早く赤児をこさえてやる事だな」
「地獄で子供なんて出来るのか?」
「何だ。お前知らなかったのか? お前は」
「無視すんなよ。弄るのは良いけど、無視は止めてくれよう」
俺と牛頭に無視されて、馬面が涙ながらに、俺と牛頭の肩を揺すり訴えて来る。
「ユニコーンの出来損ないみたいな芋角を額に生やしてまで、笑いを取りに来た奴が何を今さら」
「ぎゃははは、芋角とはよく言ったもんだ」
牛頭は涙を流して大笑いする。
「バカ野郎、好きでこんな芋角生やしてんじゃねぇや」
涙目の馬頭。
「しかし、牛頭は徳だよな。もともと牛の角があるから、違和感ねぇし、それどころか、四本角とか迫力あるなぁ」
「褒めんなよ、照れるじゃねぇか」
牛頭が白々しく、恥ずかし気な仕草をする。
「おっと、ひろみ軍が大分近くなったな。仕方ない、そろそろ動くか、種馬の」
「よっしゃ。おふざけはこれくらいにして、行くとしよう」
「子宝祈願の道祖神、無理はすんなよ。戦闘後の一戦に響いちまうぞ」
牛頭が握りこぶしを作り、親指を人差し指と中指の間から出して、俺の方に突き出した。
「ぎゃははは、下品な奴め。牛頭も適当なところで引いちゃって良いよ。所詮夫婦喧嘩だからな」
「おまえら、おふざけとか言いやがって、俺を除け者にすんなよぉ」
俺と牛頭は、親指を卑猥に出した拳をぶつけ合い、敵に向って行った。
どうもありがとうございました。




