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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
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地獄でも倫理観は大事だと思うのです その1

どうぞよろしくお願いします。

 徹斎は、しばらく俺たちと一緒にいたが、ついさっきレベル16を出るために試験官を()りに行った。

 「面白い奴だったな」

 次郎丸が話しかけて来る。

 「そうだな」

 「しかし暇だな」

 二人はやる事もなく部屋でゴロゴロしている。

 「次郎丸よう。これってヒキニートの大罪じゃねぇ」

 「そんな事どうでもいいよ」

 次郎丸が面倒臭そうに応じる。

 「それよりお前ら、大量に集めたクリはどうすんの」

 「少しは持って行くが、ここに隠して置いて行くよ。地獄全体に貨幣経済が広がったら、それを元手に銀行でもやるつもりだ」

 「おい! 無茶すんなよ。流石に、そこまでやったら革命派に政治犯として拉致監禁されちまうぞ」

 「ふーん、地獄でも政争か。やだねぇ」

 レベル16も貨幣経済が広まってから、すっかり戦闘も少なくなり、俺は暇を持て余していた。

 余りにも、やる事がないので小さな手裏剣を召喚して、次郎丸と的当てをしたり、獣を狩ったりして暇を潰す。

 「後三十時間くらいかな?」

 そう言う次郎丸は空を見上げたり、辺りの様子を落ち着きなく伺っている。屁たれの次郎丸は緊張でもして来たのだろうか。

 「地獄に長く居るとな。周りの風景の僅かな変化で、なんとなく時間の経過がわかるようになるんだ。空の僅かな明暗やら(かすみ)具合やら、肌に感じる雰囲気とかもだな」

 そういうものなのだろうか。

 まあ確かに空が薄暗くなってきたと感じたら、自然と眠くなるような気がして寝ていたが、裕介は地獄に堕ちてから、明確に時間を意識した事はなかった。

 それから俺たちは、面白くもない会話を続ける。

 俺も次郎丸も、作戦が上手く行くか半信半疑であった。もし、失敗したら地獄でも禁止になるほど無慈悲な無間地獄が待っている。

 俺は、こういう時に仲間を信じて、どっしり構えられるほど大物ではない。生きている時も、ただの臆病者で殴り合い一つした事がなかった。

 そんな俺が地獄で、こんな状況に(おちい)っているなんて。

 俺は普通の平凡な亡者が良かった。

 「生きている時の人生は不幸で辛いだけだったのに・・・それは自業自得だけど。どうして死んでからは、こんなにも波乱万丈なんだよ」

 「バッカだなぁ。現世は現世での修行がある。地獄は地獄での修行がある。つまり、どっちも波乱万丈の方が、修行が進むということさ。修行が進めば魂の格が上がるから、天界に近づく事になるんだぞ」

 「天界? 興味ないよ。どこに住んで幸せを感じるかなんて、人それぞれだろう? 変な価値観を植え付けないでほしいね。俺は神に近づく気もないしな。ナル・ア・ナル神様だって居なかったし、バカな迷信は信じないね。もしナル・ア・ナル神様が居たとしても、俺の願いだけ聞いてくれてれば良いんだよ」

 「お前、恐ろしいことを言うなぁ。俺も〈ナル・ア・ナル〉なんて神様は知らないが、普通に神様は恐れ敬っているぞ。何せ天国、地獄、鬼神、閻魔、全部実在していたからなぁ。神様だって実在しているし」

 「ナル・ア・ナル神様すみません。心を入れ替えます。地獄での修行、しっかり精を出しますので、吉田祐介をよろしくお願いいたします」

 そういえば、おコンも神社の賽銭を盗んで(ばち)が当たったんだっけ。

 (てのひら)を返すように態度を変える俺に、次郎丸は呆れかえる。

 「まぁ、神様は基本的には静観者と言われていて、世界のあらゆる営みに干渉しないらしいがな」

 「前言取り消し、修行なんて糞食らえ、波乱万丈なんて真っ平御免だ」

 「しかし、法則というものを、お作りになられたから、人の精神、思考、日常の心構えや、悪事も善行も最終的に全て自分に返ってくる。修行を怠けた者は悲惨な輪廻に組み込まれる。どんなに現世で美味い思いをしても、結局死後も含めれば、真摯な心で人に優しく、人の役に立ち、真面目に真剣に生きたもの勝ちになるように仕組まれているんだ。人が人の生きる目的に気づけば怠けたり、悪事を働くなんてできない事なんだけどな」

 「ナル・ア・ナル神様、さっきのは冗談です。今すぐにでも試練を与えてください。俺、人一倍修行します」

 「お前ってクズな」

 「・・・」

 返す言葉もない俺。

 《吉田祐介、吉田祐介、聞こえるか?》

 「聞こえますよ」

 話し込んでいると、ブレスレットから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 状況を察した次郎丸が、俺のブレスに手を添える。

 《入獄管理局からの呼び出しです。迎えの者が行きますので、動き回らずに待っていてください》

 “はいはい。分かりました。待ってますよ”

 通信は呆気なく終了する。

 「よし、俺が先にここを出る。出来るか分からんが、一緒に登庁出来るようタイミングを合わせて見るよ」

 そう言うと、次郎丸は訳のわからない言葉を残して、瞬間移動で何処かに消えて行った。

 〈地獄の沙汰も運次第〉って何?

 「まぁ何でも良いや」

 何かの呪文かとも思って、真似してみようかとも思ったが、次郎丸の真似をするのも嫌だし、面倒なのでやめておいた。

 俺は意味もなく床をゴロゴロと転がってみた。

 「ふぅ、いよいよか」

 内と外では時間の進み方が違うから、連行されるまでは時間があるが、やはり緊張してしまう。

 作戦が失敗すれば、どれ程の期間、無間地獄へ堕とされるか分かったものではないのだ。

どうもありがとうございました。

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