出獄の味は大人の味なのでした その7
どうぞよろしくお願いします。
四人の顔に焦りが浮かぶ。
角を刺した傷はもう癒えている。しかし、流れた血を綺麗にすることを忘れていたので、四人とも乾いた血が頭から顔にかけて、こびり付いていた。って普通に気付くだろう。しかも外道丸の右側の角は、後ろ向きについているし。
「急に角が生えたんで頭蓋骨が割れて皮膚が裂け、血が噴き出したんだ。橋姫なんて、脳漿まで漏れちゃって」
外道丸は焦りながら早口で捲し立て、橋姫の角に手をかける。
「イテテ。やめてやめて、脳味噌を掻き回さないで、あぁ本当ヤバい。あっ、子供の頃の記憶が少し消えちゃった。オシッコ漏れそう」
橋姫は外道丸に、角をグリグリと揺すられ、何か危ない事を口走っている。
「このように、もうすっかり頭に馴染んでますから大丈夫です」
「あ、あっ、両親の面影が消えて行く。ほんと、もうヤバイ・・・あっ、ウンコも漏れそう」
「外道丸くぅん、も、もう分かったから、止めてあげて。何だか可哀想な事を口走ってるから、もう止めてあげて。オッちゃん、この通り頭下げるから」
何故か、局長が涙目になって外道丸に懇願している。
「あなたぁ、その子に気があるの?」
「無いよぉ」
「口説かれたわよ」
局長の否定を、橋姫が即座に否定する。
「千年前に、この部屋で妾にならないかって、そうよねぇ外道丸」
「うん確かに。俺が、こいつは男だと言うと、それはそれで萌え萌えだよぉ、って嬉しそうに言ってたな」
「そして私の手を握って、僕チンの事はひろみちゃんと呼んでって。そしたら彼が妬いちゃってさぁ、イキナリひろみちゃんを殴り飛ばしちゃって、それから乱闘になってさぁ。私のために争わないでって、言っちゃった。てへへ」
嬉しそうに当時の出来事を話す橋姫。
「違う。妬いてないし、角の釘で記憶がシェイクされたんじゃないのか」
「そうそう僕チンも、そんな事言ってないしぃ。角の釘で脳味噌がグジュグジュゥ・・・って、角の釘って何ぃ?」
外道丸たちが即座に固まる。
「妾にぃ? しかも男をぉ? もう我慢出来ません。ひろみちゃんとは離婚です。特来を受け取りに、また後で来ます」
お姉様はスタスタと、足早に部屋の外に出て行った。
「み〜ちゃん待ってよぉ〜。ちょっ、ちょっとぉ・・・これって、マズイんじゃねぇ?」
局長の眼の前で激しく閉められるドア。局長は慌てて外道丸達を振り向いて、そう聞いて来る。
「非常にマズイですね」
「ひろみちゃん。早乙女家の危機よ」
「これは自宅のテーブルに置手紙があるパターンだわ」
「そして実家の父親に泣きつき、陰湿な嫌がらせが、ひろみちゃんを襲うのでしゅ」
外道丸に続き橋姫、お蝶、おコンが局長を煽る。
「家では、借りてきた猫のようなマSUオさん状態の僕チン、非常にマズイなぁ」
「それはとてもマズイのでしゅ。針の筵、そう針山地獄並みに居た堪れないのでしゅ」
「ひろみちゃん。すぐに後を追うんだ。まだ間に合う。頑張れ、ひろみちゃん!」
「そうです。今すぐ行くのです!」
「ひろみちゃん、ファイッ!」
「プレゼントも用意しておくと良いのでしゅ」
局長がアタフタと慌て出す。
「あっそうそう。配属は第一軍、第一歩兵連隊だよぉ。詳しくは軍で聞いてね。資料はディスクの上にあるから」
局長は、こっちを振り返り言い残すと足早に出て行った。
「僕チン、ちょっと外出ね」
ドアを開けて、外で番をしている二人の鬼にそう告げる。
部屋には誰も残っていない。
いくら潜虫を飲んでると思われているとはいえ、油断しすぎだろう。お蝶と、おコンが素早く部屋を物色し始めた。
「お前ら何やってる?」
「部屋掃除です」
しばらくして入って来た秘書鬼に、お蝶は何食わぬ顔で答える。
「私は潔癖性なもので、気になるとつい手が出てしまうんですよ」
「嘘つけ。掃除するのに引き出しまで開ける必要はないだろう」
「本当ですよ。私たちに不忠な事が出来ないのは、ご存知でしょう?」
「お前達は入隊者だったよな。そう言われるとそうだが・・・まぁ良いか」
それから四人分の入獄資格変更に多少時間が掛かったが無事に変更され、外道丸達は追い出されるように部屋を追われた。
それから四人は入隊者用のパンフレットを持って部屋の外で待っていた試験官の案内で、軍隊の基地へと向かう事になる。
しっかりしているようで、天然な外道丸をリーダーに、この凸凹四人組は大丈夫なのだろうか。
どうもありがとうございました。




