出獄の味は大人の味なのでした その6
どうぞよろしくお願いします。
外道丸たちは門に近付くとカルテの受け取り窓口へ向かう。
「オラオラ亡者どもは道を開けろ」
試験官が亡者の列の先頭に割り込む。
「新米兵士様たちのカルテを、早く持って来いってんだ」
試験官は受付の事務方に、大声で怒鳴り散らす。
試験官、あんたは、まるでチンピラですね。
「何だか、凄く恥ずかしいのでしゅ」
おコンだけではなく外道丸たちみんなが、試験官の後ろで恥ずかしそうにしている。
「待たせるんじゃねぇよ。オラぁそこぉ、喋ってねぇで仕事をしやがれ」
事務方の鬼っ娘たちは、四人分のカルテを探し出すのに時間が掛かっているようだ。
「レベル16の亡者は、いきなり出獄されるのでカルテを探すのが大変なんですよ」
カウンターの鬼っ娘が申し訳なさそうに言い訳をするが、試験官はイライラしている様子でカウンターの天板を指でコンコンコンコン叩いている。
「なんか態度悪いな」
「ムカつきますね」
「殺りたくなってきたわ」
「殺って良いの?」
外道丸、橋姫、お蝶、おコンが試験官の態度にムカつき、ヒソヒソと話しだす。
「お前らコソコソ話してないで文句の一つでも言ってやれ。良いストレス発散になるぞ」
カウンターの内側では、鬼っ娘たちが涙目で走り回っている。試験官はカウンターをコンコンコンコンと指で叩く。
コンコンコンコンと指で叩く。
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
おコンが突然、手を狐のように動かし歌い出した。おコン、可愛らしいなぁ。
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
どうしたことか、更に外道丸が手を狐のように・・・可愛くねぇなぁ、おい。
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
続いて橋姫も手を狐のように・・・これまた可愛らしく、とても美しい歌声です。
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
お蝶までもが手を狐のように・・・色っぽいです。とろけそうに色っぽいです。
「うるせぇ。うるせぇ。コンコンコンコン輪唱してんじゃねえよ」
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
試験官を無視して、輪唱の波は亡者たちの列の後ろへと、次々に広がって行く。
「狐憑きの技なのでしゅ。先輩は歌でも聞いて落ち着いてくださいなのでしゅ」
先輩様は明らかに苛立ってますけど、わざとですか。
それよりも、このケダモノときたら、こんなくだらないことに技を使ってしまって・・・
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
「子狐コンコン山の中ぁ・・・」
結局、一時間ほど待たされてカルテを受け取った外道丸たちは、歌に送られるようにして等活地獄の門を出た。
「やっと囚人服ともオサラバよ」
橋姫が嬉しそうに言った。その服装は・・・なんで女性自衛官の格好なんだろう。
「これ、一回着てみたかったのよねぇ」
「お前はミーハーだなぁ」
そう言う外道丸は純白の学生服?
「あら、みんな面白い格好ですね」
「本当、みんなちょっと変なのでしゅ」
お蝶はR15の映画に出て来そうな、くノ一の格好で、おコンは丈の短い巫女さん姿で。
「お前らコスプレで遊んでんじゃねぇよ。今から役所に行くんだぞ? もっとフォーマルな格好をだなぁ」
「俺はフォーマルだろうが」
試験官が文句を言うが、外道丸が途中で遮る。
「確かに自衛官と学生服はフォーマルに違い無いが・・・良いよ、みんな好きにしろよ。意外とあの局長は喜ぶ?」
と小首を傾げながら気になる一言を言って、役所の方へと歩き出す。
役所の地下五階の部屋、ドアの左右には二人の鬼が立っていた。
「ご苦労様です。入隊者を連れて参りました」
「よし。お前らは入れ。お前はここで待っていろ」
「えぇ?」
試験官だけが外に止められ、外道丸たち四人だけが中へ通される。
「いらっしゃ〜い」
中から野太い声が聞こえて来た。試験官と二人の鬼は中へは入らずに、すぐさまドアが閉められる。
「諸君、僕が局長の早乙女ひろみだぁ」
局長は、いつものようにソファーに偉そうに座っていた。秘書達の姿は見えない。
「げっ、ひろみちゃん」
橋姫が、すごく嫌そうな表情で呟く。
「これはこれは、橋姫ちゃ〜ん。僕の事を覚えていてくれたのねぇ。それにしても学生服以外は、みんなキャ〜ワイィ格好だねぇ」
外道丸には見向きもしない。
「まだ、ここの局長をやってたんだ。出世してないのね」
「まぁ、色々トラブルがあってねぇ」
「何がトラブルですか。獄卒の鬼っ娘や好みの亡者に、ちょっかいばかり出すから千年も出世しないのでしょう。私の実家の権力で出世の機会を何回もあげたのに。この穀潰し」
局長の横に座る和服姿の、ものすごく綺麗で妖艶な女性が話に割り込んで来たが、その発言を局長が慌てて嗜める。
「お、お前ぇ〜。みんなの前で言わないでくれるかなぁ」
この女性はどうやら奥さんのようだ。しかも良いとこのお嬢様?
「特来の子は、まだ出て来てないんだぁ。つまんなぁい」
「特来は、まだ何時間か後なのよぉ。それに、あいつは無間地獄に堕とすんだって」
「やぁだぁ、そんなのつまんなぁい」
「特来の子って、吉田祐介のこと?」
お蝶が恐る恐る口を挟んだ。
「そうよぉ、あなたは誰? 特来とどんな関係なのぉ」
「私はお蝶、祐介の仲間です」
「ふ〜ん、仲間ねぇ? エッチ仲間?」
「な、な、何を言ってるんですか」
「あらそう? 嫉妬してるように感じたんだけど、まぁ良いわぁ」
お姉様は局長にもたれ掛かり、局長の胸元に手を添え、妖しく撫で回す。
人払いの原因は、どうやらこの女性のようだ。
「あなたぁ、お願いよぉ。特来を私の下僕にしたいのぉ。私にちょぉだ〜い」
体が溶けそうなほどの、甘い声音でとんでも無いことをおねだりしている。
「マイハニィ〜、その話は仕事が終わってからだよぉ」
今にも溶けてしまいそうな、デレ顔の局長が答える。
「それより君たち、何で頭に大量の血痕がこびり付いているのかなぁ?」
しまったぁ! 洗浄するのを忘れてた。
どうもありがとうございました。




