表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
40/133

出獄の味は大人の味なのでした その1

どうぞよろしくお願いします。

 大会も終わり、少しノンビリしている俺と次郎丸。次郎丸は立場上、人前に出られず大会の観戦は出来なかったので、大会期間中は一人悶々と約二ヶ月半近くも、ここに引きこもっていたのだった。

 俺と次郎丸以外のメンバーはというと。

 「あなた少しの辛抱よ。先に行って準備をしておくからね」

 そう言って、お蝶が抱きついて来る。

 この至福の感触とも、しばらくのお別れ。俺はとても寂しいぞぉ。

 「寂しいよぉ〜。俺、こんなおっさんと二人きりなんて嫌だよぉ〜」

 俺の横で次郎丸が溜息を吐き、お蝶に甘える俺を見て呆れた顔をしている。

 「次郎丸、ダーリンに手を出したら一万回、殺すわよ。最大の苦痛を味あわせてね」

 「しねぇ〜よ。俺は外道丸じゃねぇし」

 「だから違うって」

 そうなのだ。いよいよ、これから俺と次郎丸を除くみんなは、試験官に挑戦し外へ出る予定なのである。

 「おにぃたん、気をつけて」

 「おコンこそ、気をつけろよ」

 おコンが俺のほっぺたにチュッとキスをして、お約束の様に、お蝶は俺の後頭部をパチンと引っ叩く。

 「戦闘中、岩塩と鉄片を無くさないようになぁ。お前ら、いや、みなさま宜しくお願いします」

 次郎丸がみんなに注意を促し、拝むように懇願した。

 岩塩は山中に豊富に存在している。鉄片は刃物を鏨で砕いて用意した。念出させた武器が破損すると自然消滅するが、それにはしばらく時間がかかるらしい。

 俺も一応岩塩と鉄片と角を持たされている。

 「では出陣だ」

 先発隊のリーダーは外道丸である。

 リーダーの掛け声で、みんながアジトから消えて行った。

 予定では、四日後に俺を助けに来てくれる筈なのだが、何だか今生の別れみたいで辛いです。

 そう。俺と次郎丸の猶予は小地獄の体感時間で後四日間。ここの外では九時間くらいか。

 「祐介、二人っきりになっちまったな。よろしく頼むよ」

 俺は慌ててケツの穴を両手で隠した。

 「しねぇ〜よ!」

 そう言いながら近づいて来る次郎丸から、ジリジリと距離を取る俺。その時、誰かが訪れる気配がした。

 「頼もう。頼もう。お取り込み中? 申し訳ないが、外道丸と手合わせを願いたい。・・・ほんに申し訳ないのう。出直そうか?」

 俺たちの様子を見て、何を誤解したのか来訪者が遠慮がちに来意を伝えて来る。

 「申し訳ないが手合わせは無理だ」

 俺は、にべもなく断った。

 「されば一刻ほどして、そちらのナニが終わってからでも」

 「だから違うって。外道丸は居ないの。試験官を殺りに行ったんだよ」

 「何てや。噂は、ほんなこつだったとや」

 来訪者は何か一人で納得しているようである。

 「ぜひ、おるも仲間に入れてもらおて思うたばってん、おらんならしようがなかねぇ。今かる行っても、どぎゃんもいかんどな。なぁ、ぬしたちゃどぎゃん思うや?」

 「おっさん、何語話してんの?」

 「何者だ?」

 俺と次郎丸が同時に質問した。

 男は、すっかり気落ちしていて、口調まで変わってしまって何語を話しているのかも理解出来ない。

 「これは失礼した。拙者は丸目(まるめ)蔵人(くらんど)(のすけ)長恵(ながよし)。徹斎と呼んでくれ」

 「丸目蔵人? ひょっとしたら剣の達人?」

 「まぁ、それほどでもなかばってん、かなり強かて思うばい」

 頭を掻いて照れながらも、どうやら自慢しているような口ぶりの丸目蔵人佐。

 「俺は吉田祐介、元サラリーマン」

 「ぬしゃ、ひでぇ服着とんねぇ。そっちの紅白鬼よりかはマシばってんが」

 指差された次郎丸の頬がピクピクと引きつっている。

 「で徹斎は、何しに来たの?」

 「ぬしゃ気安かな」

 「お前もな」

 「まあ良かたい。俺も仲間に混ぜてもらおて思てね。修行に夢中になっとったら、噂が耳に入らず出遅れてしもた。最強決定戦も出たかったたい。俺が居らんけん、お前らが難なく一番になったとだろう?」

 どうやら仲間になりたいらしい事は伝わって来た。

 「また何で仲間になりたいんだよ」

 「獄卒に就職した柳生ん親子ば、斬り殺したくてな。あん親子はクズ野郎たい」

 徹斎は苦々しい顔で吐き捨てる。

 「あ奴ぁ、弱かくせに他流派の悪口ば将軍どんに、随分言ってくれちゃったけんね。俺は許さんとたい」

 何があったのか良く分からんが、きっと俺には、どうでも良い事なのだろう。しかし一応アドバイスをしておく事にする。

 「それなら明日にでも、試験官を倒すと良いよ。そして地獄に忠誠を誓わされる直前に、これを口に含むと良い」

 俺は自分用に持っていた岩塩と鉄片、それと根元に釘のついた角を徹斎に渡して、こちらの作戦を包み隠さず教えてやった。

 「なるほど、ならば明日まで世話んなるばい」

 そう言うと室内にズカズカと入り込む。

 「おいおい、そんなに簡単に信じて良いのかよ」

 次郎丸の疑問も当然だろう。

 「あぁ、実は仲間を集めてた時に外道丸と、お蝶から徹斎の噂は聞いていたんだ。この人は外国人で言葉が通じないんだって。ついでに凄い使い手なんだって」

 「ついでにて、どぎゃんこつか。(ぬし)どま、きゃぁ打たるっぞ」

 確かに日本語が不自由のようだ。きっと日本語の勉強中なのだろう。

 「顔立ちからして、南方の知られざる山奥にあるギャンバッテン王国の王子様だったが、日本でお忍びの修行中に亡くなられたんだよ。腕前は外道丸が戦った時に、もう一度やったら負けるかもと感じたらしいよ。お蝶はぼろ負けしたって言ってたな。この王子様は、お忍びで修行中だけに、忍者の技にも長じているそうだ」

 「でも奴が本物の徹斎かは、俺たちじゃ分からんぞ? ってこんな冴えない顔立ちのおっさんが王子様なのか?」

 「あぅ、しまった!」

 確かに、よく見れば王子様の気品が備わっていない。

 「しまったじゃねぇよ。毎回毎回、ほんっと祐介って良い加減だよな」

 俺たちは不審者の目の前で、小突き合いを始めてしまう。

 「外道丸とは二度戦こうたばい。一度目は真剣で勝負して俺の負けたい。二度目は外道丸の要望で、木剣で勝負して俺の勝ち。あ奴ぁ二度目は自分が負けそうて思て、木剣にしたたい。外道丸は強すぎて、死に慣れとらんけんねぇ。まぁ俺もばってんな」

 徹斎は、言い終わるとゴロリと横になった。

 何言ってるか、所々よく分からねぇなぁ。

どうもありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ