地獄がこれで本当に良いのか? その6
どうぞよろしくお願いします。
結局、味方で死んだのは俺だけかよ。
「しかし優勝出来たし、よしとするかぁ」
俺たちは観客の大声援に両手を振って応えた。
試合後、相手も交えて和気藹々として試合内容を確認すると、外道丸も橋姫も幾つか大きな傷を受け、危うい勝利だったようだ。
肥後の人斬りなどは「幕吏も野菜も同じ様なもんだけん、どんどん斬るべし」などと物騒な事を力説していた。もう幕末は終わってるんですがね。
それにしても準々決勝の〈新選組〉対〈幕末の英雄〉戦も、罵り合いもあって、とても見応えのある試合であったらしい。
個人戦の方は準々決勝で、お蝶とおコンが対戦した。
「〈俊速のアイドルおコン嬢〉対するに〈種馬の調教師、寝技のお蝶〉」
〈待ってました〉
〈美女と美少女の対戦〉
〈おコンちゃ〜ん〉
〈お蝶さ〜ん〉
野郎どもの声援が飛び交い、対戦は否応なく盛り上がる。でも種馬の調教師はちょっと・・・。
先手を取ったのは、スピードに勝るおコンであった。
地を這うような低い構えから、お蝶の正面へ飛び込み、短刀を突き出し、お蝶がそれを紙一重で躱して斬り込もうとするが、おコンは既に横へ飛んで斬り込む間合いの内には居なかった。
距離を取ったおコンは、体を右に左に振りながら獣のように、お蝶に襲いかかる。
お蝶の目の前まで飛び込んで左に跳ね、右に跳ね、短刀が届く距離へ突っ込んで来る。しかし、お蝶は紙一重で攻撃を躱し、おコンは距離を取り激しく動き回る。
その後も似たような展開が続くが均衡は、お蝶の忍者の技によって崩された。
おコンが突っ込んで来ようとする所へ、お蝶が苦無を打ち込む。
おコンはモーションを見て、仕方なく横へ飛んで躱すが行く手を阻まれ、飛び込むスピードを殺されて、短刀では間合いに入れず、攻撃する事が出来ない。
更に迷いが出たところに二撃、三撃の苦無を受けて斬り込まれてしまった。こうなると、流石に短刀と小太刀では勝負にならず、お蝶に胴を斬られ敗北を喫する。
ビビったおコンの負けである。おコンが苦無を受けつつ懐へ飛び込んでいたら、どちらが勝っていたか分からなかったであろう。
「悔しの。とっても悔しいのでしゅ」
地面にペタンと座り、尻尾を抱いて悔しがるおコンも可愛らしいです。
お次は準決勝。俺より先に、まず外道丸とお蝶が戦う。
お蝶は正面から行くと見せかけ、横に飛んで斬りかかるが、外道丸の下段からの一撃で撃破された。流石に腕前の違いは誤魔化しようがない。
俺は名も知らぬ剣豪、岡山太郎との一戦。歴史には名を残していないがレベル16では達人太郎の名で有名らしい。
相手の力量は準々決勝を見て、ある程度分かっていたので、油断無く二刀を持って対峙する。
相手に敬意を払って、先に斬り込むつもりだったが先手を取られ、上段からの面打ちを脇差で横に流して、左の刀を振り下ろし袈裟斬りを見舞うが、紙一重で躱され、横薙ぎに胴を斬られるが僅かに浅く、俺は体当たりで脇差を突き刺し、辛うじて勝利を得た。しかし、二刀をもってしても薄氷の勝利であった。
さて、いよいよ個人決勝戦。
「今度こそ、文句なしの勝利を捥ぎ取ってやる」
俺は試合前から息巻いていた。
今度こそ本気の外道丸に勝ちたい。俺は、ずっとそう思っていたのだ。
「こっちこそ、二度も首を預けるわけには行かないよ」
外道丸からフツフツと闘志が伝わって来る。
開始早々、俺は左の刀で右籠手を取りに行く。やはり軽く躱されるが、外道丸は反撃して来ない。
今度は正眼に構える外道丸の刃筋の前に、脇差をかざして、左の刀をやや横に寝かし、下段に構え様子を伺う。
急に心が透き通って来る。
自分の目で外道丸を見ているはずなのに、まるで無心にテレビでも見ているような感じだ。
そのまま体が自然に前に出て、脇差が太刀に触れそうになる。
間合いが近い。
刹那、夢想のうちに俺は左の刀を斬り上げていた。
外道丸はヒョイと軽く下がり、俺の斬り込みに合わせて俺を豪快に斬り下げた。
「畜生、完敗じゃねぇかよ。仰々しい解説まで付いて、普通は勝つだろうがよぉ」
復活して地面を叩く俺。
「生前も死後も入れて、二番目に見事な刀捌きだったよ。太刀と腕の長さで勝てたようなものだ」
「私も、あなたの勝ちを確信して思わず拳を握ってしまったわ」
「勝負は一瞬だったけど見応えある、達人同士の立ち合だったわね。祐介も強くなったけど、外道丸も腕を上げているのよ」
橋姫が珍しく俺を祐介と呼んでくれた。
「こんな名勝負は滅多に見られないのでしゅ」
みんなが俺を励ましてくれる。
ありがとう、みんな。それでも悔しいよぉ。
「残念なのは奴が参加していない事だな」
「そうねぇ。外道丸か種馬殿か、どちらと対戦するにしても、今回のような名勝負になっていたはずよ。やはり日本語が通じなかったのかしら」
外道丸と橋姫が心待ちにしていた外国の御仁は、この大会に参加していなかったらしい。二人は、それをとても残念がっていた。
「嫌な野郎だけど、きっと仲間になってくれたはずなんだが」
どうもありがとうございました。




