地獄がこれで本当に良いのか? その1
どうぞよろしくお願いします。
それからのレベル16は活気に満ち溢れていた。
「極上の石で作った焼肉用のプレートだよぉ。この石で焼けば遠赤外線で、どんな肉でも美味しく焼けるよぉ。他にも、お鍋もあるよぉ。こちらも極上の石で出来てるよぉ」
それは鏨と金槌を使って、石を削って作られた調理用品を売る男の声。
「お箸に、お椀は如何っすかぁ〜。使いやすいよ〜」
食器売りの女性の声。
「アクセサリーは如何ですかぁ、贈り物にも最適ですよ」
鹿角やイノシシの牙、綺麗な石などをアクセサリーに加工して売るチャラい感じの男の声。
それらを加工する道具は、武器としてブレスから召喚されたものである。
召喚された武器は破損するか意図的に消すか、長らく手元から離れるかしないと消すことができないので、昔から道具として利用されてきたのであるが、貨幣経済と相まって工業製品の流通も活発になってきた。
俺たちはトーナメント会場の隣に、それらの商品を売るための市場を作り、上納クリを納めさせて荒稼ぎ・・・これぞイノベーション、経済活動に貢献しているというわけだ。ついでに賭博の胴元もやっている。
「仲間集めは難しいわね。みんな警戒しちゃって」
出来たての市場を満足げに見回す俺に、お蝶が報告する。
「それに、ここが楽しくなったので、敢えて地獄に逆らうリスクを冒したくないって、こっちの話に乗って来ないのでしゅ」
おコンもショボンとしている。
「そうかぁ、まぁ仕方ない。集まらなくても良いさ。俺たちだけで、ここを出れば良いんだよ」
賭け勝負自体も、大昔から行われていたし、クリスタルや装飾品とか自分の体などを賭けたりして楽しんでいたが、殺しては寝て、食っては殺しの単調な生活の中での慎ましやかな範囲内の事であった。しかし、今では多額の賭け金が動き、手工業が盛んになり、貨幣経済が成長し始めている。
どうせ、こんな状況がいつまでも続くはずが無い。もうそろそろバレて、やがて獄卒が、なだれ込んで来て大騒ぎになるのではないだろうか。そして、その頃には俺たちは、とっととドロン。ここを脱出しているのだ。
「おコンも、そろそろバレる頃なんじゃないかと思うのでしゅ」
「おコンもそう思うか。みんな戦闘そっちのけでクリ儲けに躍起になっているからな。しかし哀れなのは次郎丸だな」
俺は、ほんの僅かの付き合いだが次郎丸に同情・・・同情を・・・? あまりしていないようだ。
どうせ鬼だし。鬼って、大概の物語でも悪役だし、俺って冷たくないよね。
「流石は巷で評判のブラッククリスタル、あまり同情していないようですね」
「お蝶、ちょっと待て」
「おにぃたま、性欲の魔獣ブラッククリスタルともあろう者が、何を取り乱しているのでしゅ?」
「橋姫か? 橋姫だな? あいつ最近、トーナメント参加者たちと、よく俺の話をしていると聞いたぞ。俺の事を性欲の魔獣だの、ブラッククリスタルだのと言いふらしているんだな?」
あんのアマァ〜、今度ぶちのめしてやる。
アマじゃなく野郎なんですが。
どうもありがとうございました。




